多収性シュンギク
多収性シュンギクとは
多収性シュンギクとは、同じ栽培面積・栽培期間において、一般的な品種と比較して収穫量が多く得られる性質を持つシュンギク品種の総称です。
シュンギク(春菊、Glebionis coronaria)の収穫量は、品種の持つポテンシャルと栽培管理の組み合わせで決まります。「多収性」と呼ばれる品種は、以下のような特性のいずれか、またはその組み合わせによって高い収穫量を実現します。
一つ目は、1株あたりの葉量が多い特性です。葉が大きく展開しやすい品種や、葉枚数が多い品種は、1株からの収穫量が増えます。二つ目は、脇芽の発生が旺盛で、摘み取り型スタイルでのリレー収穫回数が多い品種特性です。一度摘み取った後の回復が早く、次の脇芽が素早く伸長することで、同じ期間内の総収穫量が増えます。三つ目は、生育スピードが速く、1作の栽培日数が短い品種です。同じ期間内に回転数を増やすことで、面積あたりの年間収穫量が増える効果があります。
産地によって事情が異なるので一概には言えませんが、「多収性」の定義は種苗メーカーや産地によって異なります。カタログで「多収」と記載されていても、その根拠となる比較試験の条件(比較品種・栽培環境・収穫方式)を確認することが、品種選定時の重要なポイントです。
多収性のメリット
多収性シュンギクの導入が経営にもたらすメリットは、収益性の向上と労働効率の改善の2つが主なものです。
経営面では、面積あたりの収穫量が増えることで売上の増加が期待できます。特に、生産コスト(農地・資材・労働力)の多くが面積比例であることを考えると、収穫量を増やすことが費用対効果の向上に直結します。市場価格が安定しているシュンギクにおいては、数量の確保が経営安定の基本です。
摘み取り型の多収品種では、長期間にわたって収穫が続くため、人件費の平準化や安定出荷にも貢献します。一括収穫の株張り型と比較すると、作業が分散されるため、収穫期の繁忙集中を緩和できるという経営メリットもあります。
また、多収性品種は生育力が旺盛な場合が多く、栽培の安定性(環境ストレスへの耐性)にも優れていることがあります。生育が旺盛な品種は、ある程度の環境変動(一時的な気温上昇・水分ストレス等)に対しても回復力が高い傾向があり、安定した品質と収量を維持しやすいことがあります。
多収性の方向性と品種の傾向
多収性シュンギクには、その多収のメカニズムによっていくつかのタイプがあります。品種選定の際には、どのメカニズムによる多収なのかを理解したうえで、自分の栽培スタイルに合ったタイプを選ぶことが重要です。
摘み取り型での多収タイプ: 脇芽の発生力が旺盛で、収穫後の再生が早い品種です。関西の大葉系摘み取り型品種に多く見られ、1株から5〜7回程度の収穫が可能な品種もあります。リレー収穫の間隔が短く、トータルの収穫量が多くなります。実在確認済みの品種としては、大葉春菊やふくすけ春菊(中原採種場株式会社)などが摘み取り多収タイプとして評価されています。
株張り型での多収タイプ: 株全体の葉量が多く、1株あたりの可食部重量が多い品種です。茎が太く充実していて株の仕上がりが重く、束重を確保しやすい特性があります。関東の中葉株張り型品種の中に、収量性が高いとされる品種が複数存在します。
生育が速い短期多収タイプ: 播種から収穫までの期間が短く(例えば一般品種の35〜40日に対し25〜30日程度)、同じ期間内の作付け回転数を増やすことで面積あたり年間収量を増やすタイプです。ハウス周年栽培との相性が良く、回転率重視の生産スタイルに向いています。
栽培のポイント
多収性品種のポテンシャルを最大限に引き出すためには、品種に合った栽培管理が前提です。
播種・定植については、多収を維持するためには安定した発芽率の確保が出発点です。播種前の土壌水分の調整と、発芽温度(15〜20℃)の管理が重要です。
施肥管理は多収性品種において特に重要です。旺盛な生育をサポートするために、窒素・リン酸・カリのバランスの取れた施肥が必要ですが、窒素の過剰施用は葉の軟弱化・病害リスクの増加・食味の低下につながります。元肥・追肥のバランスを取りながら、生育ステージに合わせた施肥が多収実現の基本です。
ここからが実際の栽培で差がつくところです。多収性品種は生育力が強いため、密植による徒長や通気不良が起きやすい側面があります。多収品種だからと欲張って栽植密度を増やしても、通気性の悪化で病害が増えたり株の仕上がりが不均一になったりと、逆効果になることがあります。品種の特性に応じた適正な栽植密度を守ることが、安定した多収の鍵です。
摘み取り型の多収品種では、収穫後の追肥タイミングが次の収穫量に直接影響します。摘み取り直後に適量の追肥を施すことで、脇芽の回復と伸長を促すことができます。
病害虫については、旺盛な生育と高い収量を維持するためにも、早期発見・早期防除が重要です。斑点病・根腐病・アブラムシ類が主な対象です。
品種選びのコツ
多収性シュンギクの品種を選ぶ際は、単に「多収」という表記だけでなく、以下の観点を確認することが大切です。
- 多収のメカニズム: 摘み取り型の多収か、株張り型の多収か、生育速度によるものかを確認し、自分の収穫スタイルと一致する品種を選ぶ
- 食味・品質との両立: 多収を優先した品種の中には、食味が通常品種より劣ることがある場合があります。カタログや試作で食味も確認する
- 病害耐性: 多収品種は旺盛な生育の分、病害への管理が重要です。産地で多発しやすい病害への耐性の有無を確認する
- 作型との適合: 夏秋作での多収を狙うなら耐暑性との組み合わせが重要。多収性と耐暑性を兼ね備えた品種の確認が必要です
- 試作期間の設定: 多収性の効果は栽培環境によって大きく変わります。本格導入前に自産地での試作を行い、実際の収量・品質を確認してから判断することが重要です
まとめ
多収性シュンギクは、同じ栽培条件でより多くの収穫量を得られる品種群であり、経営の効率化と安定出荷に貢献します。多収のメカニズムは品種によって異なり、摘み取り型での脇芽旺盛タイプ、株張り型での葉量豊富タイプ、生育速度型の短期多収タイプなど、複数の方向性があります。
品種選びでは「多収」という表記に加え、多収のメカニズムと自分の栽培スタイルとの一致を確認することが重要です。多収と食味・耐病性のバランスを総合的に判断し、試作で自産地での適性を確認してから本格導入することが、安定した多収シュンギク生産への確実なアプローチです。
ミノリスの品種ページでは、多収性シュンギクタグが付いた品種の一覧を確認できます。品種ごとの特性を比較しながら、経営スタイルに合った品種選びにご活用ください。