赤シソとは、葉が赤紫色(アントシアニンを多く含む)に着色したシソの品種群です。植物学的にはシソ(Perilla frutescens var. crispa f. purpurea)として分類されており、青シソ(アオジソ、大葉)と同じ変種(var. crispa)に属します。
葉色の赤みはアントシアニン系色素によるものです。品種によって濃赤紫色から赤紫色まで差があり、表裏ともに赤紫色のもの(両面赤)と、表面が緑色・裏面が赤紫色のもの(うら赤)の2タイプに大別されます。縮み(ちりめん状の葉面)の有無についても品種間で違いがあり、縮みが多いものは「ちりめんシソ」と呼ばれることもあります。
まず押さえておきたいのが、赤シソは青シソ(大葉)とは用途が根本的に異なるという点です。青シソが刺身の付け合わせや薬味として生食に使われるのに対し、赤シソは主として着色・香り付けの加工原料として利用されます。これは、赤シソの葉が加熱・酸処理によって鮮やかな赤色に発色する性質を持つためです。
赤シソの用途と魅力
赤シソの最も重要な用途は、梅干しの色付けです。梅を漬け込む際に赤シソを加えることで、梅干しが鮮やかな赤色に染まります。この着色作用は、アントシアニン色素が梅の有機酸(クエン酸等)と反応することで生じます。梅干しの伝統的な製法において、赤シソは欠かせない素材の一つとして長年にわたり使われてきました。
梅干し以外にも、紅しょうが・チョロギ漬け・柴漬けなどの漬物類の着色原料、しそジュース(赤しそシロップ)、しそ粉などの加工食品の原材料として広く活用されています。特に近年は、シソに含まれるロズマリン酸(ポリフェノールの一種)などの機能性成分や、ペリルアルデヒドに代表される香気成分への関心が高まっており、機能性食品・健康食品素材としての需要も生まれています。ただし、機能性成分の具体的な効果については科学的なエビデンスの蓄積段階にあります。
着色性の高い品種を選ぶことが、加工用途での品質安定につながります。アントシアニン含量が高い品種ほど、少量で濃い着色が得られます。生産者にとっては、単価の高い梅干し産地や漬物メーカーへの供給チャネルが確保できると、安定した経営につながります。
赤シソに適した品種の特徴
赤シソ品種に共通する特徴として、以下の点が挙げられます。
両面赤の品種は、アントシアニン含量が高く着色効果が強い傾向があります。ちりめん赤しそ(トーホク)、純赤ちりめんしそ(渡辺採種場)、赤ちりめんシソ(タキイ)、赤本縮緬紫蘇(アサヒ農園)、赤縮緬しそ(中原採種場)、北海ちりめん赤しそ(トーホク)などが代表的な両面赤品種です。これらは梅干しの色付けや漬物の着色原料として広く使われています。
うら赤(表面緑・裏面赤紫)の品種には、かおりうらしそ(アサヒ農園)や芳香うらしそ(中原採種場)があります。これらは表面の緑色と裏面の赤紫色のコントラストが特徴で、梅干し・紅しょうが・チョロギ漬けの着色に利用されます。着色力は両面赤品種に比べてやや弱い傾向がありますが、独特の芳香が評価されることもあります。
天神あかしそ(中原採種場)は、太宰府天満宮近在で長年にわたり栽培されてきた在来系統で、葉が濃赤紫色で縮みと光沢があり、芳香性が高い品種として知られています。漬物原料・加工用として評価されています。芳香赤しそ(中原採種場)もシソ独特の芳香が強く、着色効果と香りを両立する品種として漬物加工に活用されています。
栽培のポイント
赤シソの栽培は、基本的な管理方法は青シソと共通していますが、加工用途の品質特性を活かすための注意点があります。
赤シソはシソ科の一年生草本で、日当たりの良い場所と水はけの良い土壌を好みます。発芽適温は20〜25℃で、低温には弱いため、播種は地温が安定してから行うのが基本です。移植栽培か直播栽培かは品種・産地によって異なります。
ここからが実際の栽培で差がつくところです。梅干し用の赤シソは、梅の漬け込み時期(6〜7月)に合わせた収穫が求められます。この時期に葉が最も充実し、アントシアニン含量が高い状態になることが多いとされています。播種時期は3〜4月が一般的ですが、地域の気候条件や出荷先との契約に合わせて逆算して設定することが重要です。
施肥については、窒素肥料の過剰施用は葉が軟弱になり、着色性が低下することがあります。適正な施肥量を守ることで、葉の充実と色素含量のバランスを保つことができます。
病害については、さび病・うどんこ病・青枯病などへの注意が必要です。多湿条件ではうどんこ病の発生リスクが高くなるため、排水管理と換気確保が基本的な予防策となります。また、アブラムシ類やハスモンヨトウなどの食害にも注意が必要です。
収穫は葉が十分に展開した段階で行います。穂ジソを収穫する場合は、開花が始まった時期に収穫します。北海ちりめん赤しそ(トーホク)は出穂が比較的早く、穂じそも収穫できる品種として知られています。
品種選びのコツ
赤シソの品種を選ぶ際には、以下の観点を総合的に判断することが重要です。
まず確認したいのが着色性です。両面赤品種は着色効果が高く、梅干しや漬物の色付けを重視する用途に適しています。アントシアニン含量の高さは品種カタログに「発色が良い」「赤の発色に優れる」などの表記で示されることがあります。純赤ちりめんしそ(渡辺採種場)は「赤の発色に優れる。裏面まで赤紫色」と記されており、着色用途での評価が高い品種の一つです。
縮み(ちりめん)の有無も確認ポイントです。縮みが多い品種(ちりめん系)は葉が厚みを持ち、重量感があります。縮みが少ない品種は葉がやや薄く、加工時の取り扱いに差が出ることがあります。ちりめん系品種については、ちりめんシソの品種一覧ページもあわせてご確認ください。
香りの強さも、用途によっては重要な選定基準です。天神あかしそ(中原採種場)は「芳香性赤しそ」として知られており、香りを重視した漬物用途に向いています。芳香赤しそ(中原採種場)もシソ独特の芳香が強い品種です。
うら赤品種は、梅干し・紅しょうが用途で着色力が求められる一方、着色力が両面赤品種より弱い点を把握しておく必要があります。品種説明に「梅干・紅しょうが・チョロギ漬けの着色に」と用途が明示されているかおりうらしそ(アサヒ農園)や芳香うらしそ(中原採種場)は、こうした特定用途に適した品種です。
産地によって事情が異なるので一概には言えませんが、地域の梅干し産地や漬物メーカーの求める品質基準に合わせて品種を選定し、試作を通じて確認するプロセスが欠かせません。
市場動向とこれから
赤シソの需要は、梅干し産地の動向と密接に連動しています。和歌山県・群馬県をはじめとする梅干し産地では、毎年の梅の収穫量に応じて赤シソの需要量が変動します。大手梅干しメーカーや漬物メーカーとの安定した取引関係を持つことが、赤シソ生産の経営安定につながります。
近年は、しそジュースや機能性食品素材としての赤シソ需要が家庭・業務の両面で増えています。また、農産物直売所での新鮮な赤シソ束の販売や、家庭での梅干し・漬物作りへの需要も一定規模を保っています。食の多様化が進む中でも、梅干し文化に根ざした赤シソの需要は安定的に維持されています。
意外と知られていないのですが、近年は機能性研究の進展から、ポリフェノール・ロズマリン酸などを含む赤シソエキスが機能性素材として注目されており、健康食品・サプリメント向けの原料需要が一部で拡大しています。
まとめ
赤シソは、アントシアニン系色素を多く含む赤紫色の葉が特徴のシソ品種群で、梅干しの色付けや漬物加工を中心とした加工用途に欠かせない素材です。両面赤のちりめん系品種が着色性に優れ、うら赤品種は香りや特定用途に向いた特性を持ちます。
品種選びでは、着色性・縮みの有無・香りの強さを軸に、出荷先の求める品質基準と照らし合わせて選定することが重要です。梅の漬け込み時期に合わせた栽培計画と、適正な施肥管理が品質安定のポイントになります。
ミノリスに掲載されている赤シソ品種の詳細情報は、品種一覧ページからご確認ください。ちりめんシソ、梅干し向けシソのタグ一覧もあわせてご参照いただくと、品種選びの参考になります。