病害耐性

萎凋病に強いトマト台木のトマト台木品種一覧 全46種類

萎凋病に強いトマト台木 萎凋病とは 萎凋病は、土壌中に生息する糸状菌である Fusarium oxysporum f. sp. lycopersici(以下、FoL)によって引き起こされるトマトの重要病害です。感染した菌は根から植物体に侵入

萎凋病に強いトマト台木について

萎凋病に強いトマト台木

萎凋病とは

萎凋病は、土壌中に生息する糸状菌である Fusarium oxysporum f. sp. lycopersici(以下、FoL)によって引き起こされるトマトの重要病害です。感染した菌は根から植物体に侵入し、茎の維管束(道管)内で増殖して水分・養分の通道を妨げます。

発症した株では、最初は下葉の片側だけが黄変・萎れるという「片萎れ」の症状が現れます。これは茎の道管が菌の増殖によって片側から詰まっていくためで、萎凋病の早期発見のサインとなります。茎を縦に切断すると内部の維管束が褐変している様子を確認でき、これが診断の決め手になります。進行すると株全体が萎れ枯死しますが、青枯病のような急激な萎れ方はせず、数週間かけて徐々に衰弱することが多いです。

萎凋病菌は土壌中で厚膜胞子を形成して長年にわたって生存できるため、一度汚染された圃場での防除は困難です。施設栽培の連作圃場や排水の悪い圃場で特に被害が深刻になる傾向があります。

萎凋病のレース区分と台木の耐病性

ここからが実際の栽培で差がつくところです。萎凋病菌にはレース1(F1)・レース2(F2)・レース3(F3)の3つのレースが存在し、台木品種によって対応できるレースの範囲が異なります。この点が萎凋病対策において品種選びを複雑にしている最大の要因です。

レース1(F1): 最も広く分布するレースで、国内の多くの産地で問題になっています。ほぼすべての台木品種がF1に対して高度な耐病性(HR相当)を有しており、台木導入による対策が確立されています。

レース2(F2): F1よりも病原性が強く、F1耐病性品種に感染できる特性を持ちます。国内では一部の産地で確認されています。F2に対応した耐病性を持つ台木品種は存在しますが、すべての台木がF2に対応しているわけではありません。品種カタログで「F1・F2に耐病性」と明記されているかを確認することが重要です。

レース3(F3): 最も病原性が強いレースで、F1・F2耐病性品種にも感染します。国内での確認事例は限られていますが、海外(オランダなど)では問題化しており、国内産地でも注意が必要です。F3に対応している台木品種は限られており、品種カタログに「F3耐病性」の明記があるかを必ず確認してください。

メーカーのカタログでは「F1、F2、F3」または「F1〜F3」と略記されることが多く、記載がない場合はF1のみ対応と考えるのが安全です。

歴史と豆知識

萎凋病は世界各地のトマト産地で古くから問題になってきた病害です。日本では明治〜大正期から施設トマト栽培の拡大とともに被害が認識され、1950〜60年代の施設栽培普及期に連作圃場での被害が急増しました。

意外と知られていないのですが、接ぎ木台木によるトマトの萎凋病対策は、日本が世界に先駆けて確立した技術です。1960年代以降、日本の農業試験場や種苗会社が連作障害対策として台木接ぎ木を系統的に研究・普及させ、現在では世界的なスタンダードとして認められています。

F1耐病性を付与する遺伝子「I-1」(Immunity遺伝子)は早くから特定されていましたが、F2やF3耐病性を付与する「I-2」「I-3」遺伝子の導入はより高度な育種技術を必要としました。1990〜2000年代にかけて分子育種技術の進歩によりF2・F3耐病性台木の開発が加速し、現在の多様な台木ラインアップにつながっています。

耐病性の限界と注意点

萎凋病耐病性台木は有効な対策ですが、以下の点に注意が必要です。

レースの変異リスク: 特定の耐病性品種が広く使用されると、その耐病性を克服する新しいレースが出現するリスクがあります。F3はF1・F2耐病性が普及した後に問題化してきた経緯があり、今後F4相当のレースが出現する可能性もゼロではありません。産地全体で同一品種の台木に依存し過ぎることは、こうしたリスクを高めます。

高温条件での耐病性低下: 萎凋病菌は28〜32℃で最も増殖しやすく、高温条件では台木の耐病性機構が十分に機能しない場合があります。特に夏作の高温期は注意が必要です。

他のフザリウム病との混同: 同じ Fusarium oxysporum の仲間である根腐萎凋病(f. sp. radicis-lycopersici、J3)や半身萎凋病(Verticillium dahliae)との混同が現場でよく起こります。症状が類似しているため、正確な診断には病原菌の同定が必要です。萎凋病対策に特化した台木を選んだのに、実は根腐萎凋病が主因だったというケースもあります。

品種の耐病性表記だけに頼るのではなく、圃場で実際に発生している病害の種類と優勢レースを都道府県の病害虫防除所等で確認してから台木を選ぶことが、対策の精度を高めます。

防除のポイント

萎凋病の防除は、耐病性台木の利用を核に据えながら、耕種的防除を組み合わせて実施します。

クロルピクリン等による土壌消毒は、萎凋病菌の密度を物理的・化学的に低下させる効果があります。ただしクロルピクリンは揮発性が高く施用・養生に専門的な知識が必要なため、都道府県の指導に従って実施することが重要です。また土壌消毒は全層の菌密度を低下させますが、残存した菌が翌作で増殖するリスクは排除できません。

太陽熱消毒もフザリウム菌に対して一定の効果が期待できます。40℃以上の地温を2〜4週間維持することで、萎凋病菌の厚膜胞子の生存率を低下させることができます。クロルピクリン施用が難しい有機栽培や農薬削減栽培での選択肢になります。

輪作は根本的な菌密度管理手段ですが、施設栽培での実施は難しい場合が多いです。トマト以外のナス科作物も萎凋病菌の宿主になり得るため、輪作先にナス・ピーマン・ジャガイモを選ばないことが基本です。

※農薬の使用にあたっては、必ず最新の農薬登録情報を確認し、ラベルの記載内容に従ってください。

現場の声・実態

施設トマト産地では、萎凋病レース1(F1)に対する耐病性台木はすでに「当たり前」として選ばれており、F1のみ対応の台木は特殊な用途(特定の穂木品種との組み合わせ)を除いて選ばれることが少なくなってきています。

現在の産地では、F2・F3対応の台木を選ぶかどうかが品種選択の分岐点になっています。産地によって事情が異なるので一概には言えませんが、過去にF2発病の記録がある産地ではF2対応を必須条件とする生産者が多く、F3発病リスクのある地域ではさらにF3対応品種を選ぶ傾向があります。一方、F3発病の記録がない産地では、F3対応台木の草勢・着果性など他の栽培特性を優先して選択するケースもあります。

生産者からは「台木のカタログを見るとF1・F2・F3と書いてあったり、F1・F2だけだったり、よく分からない」という声を聞くことがあります。カタログ表記はメーカーによって異なるため、「F○○」の数字に何が含まれるのかを丁寧に確認することが大切です。品種担当者への問い合わせや農業試験場のデータも参考にすることが有効です。

まとめ

萎凋病は土壌病害の中でも制圧が難しい病害の一つですが、耐病性台木の導入が有効な対策として確立されています。品種選びのポイントは、どのレースに対応しているかを必ず確認することです。F1のみ対応、F1・F2対応、F1・F2・F3対応と3段階の選択肢があり、圃場の発生レースに合わせた台木を選ぶことが防除の精度を高めます。

台木の耐病性だけでなく、草勢・根域・栽培適応性などのバランスも考慮したうえで、土壌消毒・輪作などの耕種的防除と組み合わせた総合的な防除体系を組むことが大切です。萎凋病に強い台木品種の一覧は、ミノリスのタグ検索からご確認いただけます。

46品種 表示中
スーパー良縁

スーパー良縁

カネコ種苗株式会社

青枯病と萎凋病(レース2)に強いスーパー台木 ■特性 ●青枯病と萎凋病(レース2)に対して極めて強い耐病性を有します。 ●萎凋病(レース1)、半身萎凋病、根腐萎凋病(J3)、サツマイモネコブセンチュウにも安定した耐病虫性を有します。 ●高温期の土壌病害回避に最適です。やや強い草勢となりますので、中~長期の栽培も可能です。

とまトン

とまトン

株式会社むさしのタネ

家庭菜園向けトマト台木 【特性】 〇節間が短く、しっかりとした苗姿に仕上がり、接木、育苗がしやすい。 〇高温期、長期栽培など幅広い作型に適し、初期から安定した吸肥力があり、後半までしっかりと草勢を維持できる。 【病害虫抵抗性】 〇耐病性はToMV(Tm-2a)、萎凋病(F1、F2)、根腐萎凋病(J3)、半身萎凋病(V)で、特に青枯病に強い耐病性を示す。ネマ耐虫性。

スパイク-K助

スパイク-K助

愛三種苗株式会社

(Tm-2型) ■ポイント ・特に低温期に発生する褐色根腐病(K)に強い耐病性を持ち、萎ちょう病レース3にも抵抗性を有し広く使っていただける台木。 ・低温伸張性があり、夏秋、促成栽培等で高評価。 ■耐病性一覧 <10段階評価 1:弱い⇔10:強い> 萎ちょう病F(R1) ◎ 萎ちょう病F(R2) ◎ 萎ちょう病F(R3) ◎ 根腐萎ちょう病F(J3) ◎ 褐色根腐病(K) 9 半身萎ちょう病(V) ◎ 青枯病(B) 6 ネマトーダ(N) 〇 根域 深 根の太さ 中 草勢 前半5 後半8

がんばる根-カリス

がんばる根-カリス

愛三種苗株式会社

(Tm-2型) ■ポイント ・半身萎ちょう病レース2(V2)に抵抗性を持ち、他の抵抗性、耐病性を広くもつ使いやすい台木。 ・草勢強化型の台木で、深く幅広い根域。 ・着果負担に対する回復力も早い。 ■耐病性一覧 <10段階評価 1:弱い⇔10:強い> 萎ちょう病F(R1) ◎ 萎ちょう病F(R2) ◎ 萎ちょう病F(R3) ◎ 根腐萎ちょう病F(J3) ◎ 褐色根腐病(K) 5 半身萎ちょう病(V) ◎ 青枯病(B) 5 ネマトーダ(N) 〇 根域 深 根の太さ 中 草勢 前半5 後半7 ■栽培上の注意 半身萎ちょう病については種々のレースが有るようなので、栽培試験の上導入をお願いします。

がんばる根-サバンナ

がんばる根-サバンナ

愛三種苗株式会社

(Tm-2型) ■ポイント ・青枯病に対して強い耐病性、強く安定した草勢を持つ台木 ・太い根、細い根、根量も多く、また広く深く根を張る事のできる品種 ■耐病性一覧 <10段階評価 1:弱い⇔10:強い> 萎ちょう病F(R1) ◎ 萎ちょう病F(R2) ◎ 萎ちょう病F(R3) ◎ 根腐萎ちょう病F(J3) ◎ 褐色根腐病(K) 7 半身萎ちょう病(V) ◎ 青枯病(B) 9 ネマトーダ(N) 〇 根域 浅+深 根の太さ 中 草勢 前半4 後半7 現在、多くの産地で試されております。

スパイク-セブン

スパイク-セブン

愛三種苗株式会社

(Tm-2型) ■ポイント 越冬栽培で厳寒期に特性を発揮する低温伸張性の有る台木 生理障害になりにくく、品質を保ちながら栽培できる。 ■耐病性一覧 <10段階評価 1:弱い⇔10:強い> 萎ちょう病F(R1) ◎ 萎ちょう病F(R2) ◎ 萎ちょう病F(R3) ◎ 根腐萎ちょう病F(J3) ◎ 褐色根腐病(K) 8 半身萎ちょう病(V) ◎ 青枯病(B) 5 ネマトーダ(N) 〇 根域 深 根の太さ 太+細 草勢 前半6 後半9

がんばる根-サミット

がんばる根-サミット

愛三種苗株式会社

(Tm-2型) ■ポイント ・青枯病、かいよう病に対して非常に強い耐病性を持つ台木。 ・根張りが穏やかで、初期草勢が強くなりすぎない。中盤以降は強くなり、草勢の維持・着果・肥大性に優れる。 ・草勢が強めの穂木品種との組み合わせで、評価が高い。 ■耐病性一覧 <10段階評価 1:弱い⇔10:強い> 萎ちょう病F(R1) ◎ 萎ちょう病F(R2) ◎ 萎ちょう病F(R3) ◎ 根腐萎ちょう病F(J3) ◎ 褐色根腐病(K) 8 半身萎ちょう病(V) ◎ 青枯病(B) 9 ネマトーダ(N) 〇 根域 浅+深 根の太さ 中 草勢 前半4 後半8 ■栽培上の注意点 定植時期が厳寒期にあたる場合、生育が緩慢になる場合があります。 暖かくなってからの定植に適しています。

助人

助人

カネコ種苗株式会社

広範囲な耐病性、短期から長期のマルチ台木トマト ■特性 ●低温時期の重要病害である根腐萎凋病(J3)、褐色根腐病(コルキールート)に対して安定した耐病性を有します。 ●その他、青枯病、萎凋病(レース1・2)、半身萎凋病、サツマイモネコブセンチュウにも安定した耐病虫性を有します。 ●胚軸が太く、接木操作が容易です。 ●草勢はやや強く、長段どり栽培でもへこたれません。

強健

強健

カネコ種苗株式会社

青枯病、萎凋病(レース3)にも強いスタミナ台木トマト! ■特性 ●夏期の重要病害である青枯病、萎凋病(レース1~3)に極めて強い耐病性を有します。 ●その他、半身萎凋病、根腐萎凋病(J3)、サツマイモネコブセンチュウに安定した耐病虫性を有します。 ●発芽ぞろいが良く、接木操作が容易です。 ●草勢はやや強く、スタミナがあります。根の張り方は深根・浅根のバランスが良く、短~長期の幅広い作型に適します。 ※強健・根くらべ・助人・スーパー良縁については、Tm-2、Tm-2ªの台木品種です。(Tm-1型の耐病性品種やToMVに感受性の品種とは接木できません)

がんばる根-11号

がんばる根-11号

愛三種苗株式会社

(Tm-2型) ■ポイント ・根域の広さ、深さが特徴的な台木。深い根も浅い根も旺盛に発達する。 ・追肥、潅水潅水の反応が早い ・耕土の深い圃場での後半草勢強化 ■耐病性一覧 <10段階評価 1:弱い⇔10:強い> 萎ちょう病F(R1) ◎ 萎ちょう病F(R2) ◎ 萎ちょう病F(R3) - 根腐萎ちょう病F(J3) ◎ 褐色根腐病(K) 6 半身萎ちょう病(V) ◎ 青枯病(B) 7 ネマトーダ(N) 〇 根域 深 根の太さ 中 草勢 前半3 後半7 ■栽培上の注意 畝上を極端に乾燥させると浅い根の形成が見られないことがあるので、3段開花以降の少量の潅水は必要である。

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