病害耐性

疫病に強い台木の台木品種一覧 全8種類

疫病とは 疫病は、卵菌類(水生菌)の一種であるPhytophthora capsici(フィトフソラ カプシシ)やPhytophthora infestans(フィトフソラ インフェスタンス)などによって引き起こされる病害です。一般的な糸状

疫病に強い台木について

疫病とは

疫病は、卵菌類(水生菌)の一種であるPhytophthora capsici(フィトフソラ カプシシ)やPhytophthora infestans(フィトフソラ インフェスタンス)などによって引き起こされる病害です。一般的な糸状菌(カビ)とは生物学的に異なるグループに属しますが、植物に感染して深刻な被害をもたらすという点では類似しています。

ピーマン・トウガラシの疫病は主にPhytophthora capsiciが原因菌で、国内のピーマン産地では青枯病と並ぶ重要病害として位置づけられています。症状は株の根元から茎の低位部が水浸状に腐敗し、急速に萎れて枯死します。また、果実にも感染して軟腐・腐敗を起こし、出荷できなくなることがあります。カボチャやスイカなどのウリ科作物では別種のPhytophthoraが疫病を引き起こし、つるや果実の腐敗が問題になります。

疫病が発生しやすい条件は、高温・多湿・過湿です。降雨や灌水後に地温が高くなる状況が感染リスクを高めます。特に梅雨時期や夏季の大雨後に発生が急増する傾向があり、施設栽培でも換気不足や排水不良があると発病します。

国内のピーマン産地では、疫病による被害が生産安定の大きなネックになってきました。高知県や宮崎県などの暖地ピーマン産地では、夏〜秋にかけての高温多湿期に発生が集中します。

耐病性の区分

台木の疫病耐病性は、青枯病と同様にカタログに記載されていますが、耐病性の程度を示す表記は品種によって異なります。

よく見られる表記のパターンを整理します。

  • 「疫病に強い抵抗性」または「疫病強耐病性」: 強い抵抗性を持つ。高温多湿条件の下でも発病を大きく抑制できることが期待される
  • 「疫病耐病性」: 感受性品種と比較して被害が軽減される水準の耐性
  • 「疫病に中程度の耐病性」: 発病を完全に防ぐことはできないが、被害は軽減される

ピーマン・トウガラシ用台木では、農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)が開発した品種を起源とするものが多く、「疫病と青枯病の両方に対して強い抵抗性」という複合耐病性を持つ台木が広く普及しています。

疫病菌にも系統差(レース様の変異)が存在することが知られており、産地によって流行している系統が異なる場合があります。産地の普及指導員や農業試験場に問い合わせて、地域で問題になっている系統の情報を得ることが、台木選びの精度を高めます。

歴史と豆知識

疫病は世界史的にも有名な病害で、19世紀のアイルランドでジャガイモの疫病(Phytophthora infestansによるジャガイモ疫病)が大飢饉の原因となったことが知られています。日本でも江戸時代からジャガイモ・トマトの疫病は記録されており、ピーマン産地が拡大した20世紀後半にピーマン疫病が大きな問題となりました。

ピーマン疫病への対応として、農研機構(当時の農業研究センター)が1990〜2000年代にかけて青枯病・疫病両方に耐病性を持つ台木の育成に取り組みました。この研究成果として生まれた台木品種が現在も国内産地で活用されており、ピーマン生産の安定化に貢献しています。

意外と知られていないのですが、疫病菌は土壌中に「卵胞子」という非常に耐久性の高い構造を作り、長年にわたって土壌中に生存します。一度疫病が発生した圃場では、数年経過しても菌が残存しているリスクがあるため、台木による防除と土壌管理の両方を継続的に行うことが重要です。

耐病性の限界と注意点

疫病に強い台木を使用する際は、以下の限界と注意点を理解しておくことが大切です。

高温多湿の過酷な条件では発病することがあります。 台木の耐病性は発病リスクを大きく下げますが、疫病菌の圧力が非常に高い条件下(高菌密度+高温多湿の重複)では、耐病性台木でも感染・発病することがあります。カタログの注記として「高温・多湿・高菌密度条件下では発病する可能性があるため土壌消毒などの通常防除を併用してください」と記載されていることが多く、これは実際の圃場条件に基づいた重要な情報です。

果実への疫病感染は台木では防げません。 台木の効果は主に根・茎からの感染(土壌伝染)に対して発揮されます。果実への直接感染(主に葉面から侵入した菌が果実に到達する経路)は台木では防ぐことができません。果実疫病の防除には、葉面への薬剤散布などの別の手段が必要です。

穂木のPMMoV抵抗性レベルとの整合が必要です。 ピーマン・トウガラシ用台木ではPMMoV(トウガラシ微斑ウイルス)の抵抗性レベル(L3またはL4)を台木と穂木で一致させる必要があります。この点は青枯病耐性台木と共通の注意事項です。

台木自体の草勢への影響を考慮する必要があります。 疫病・青枯病両方に高い耐病性を持つ品種の中には、接ぎ木栽培による草勢の低下や収量の若干の減少が認められる場合があります。収量性と耐病性のバランスを確認してから品種を選んでください。

防除のポイント

疫病の防除は台木の利用を中心に、以下の手段を組み合わせて行います。

排水改善と畝立て管理: 疫病菌は多湿条件で増殖し、水を介して拡散します。圃場の排水性を高めること(暗渠・明渠の整備)と、高畝栽培での地表面の多湿化防止が基本的な耕種的防除です。

マルチングの活用: ポリマルチや稲わらなどのマルチング資材を使用すると、降雨や灌水時の土の飛散を抑え、地表面の菌が茎下部に付着するリスクを下げます。病原菌の飛沫感染を防ぐ効果があります。

薬剤防除の計画的実施: 疫病に登録のある殺菌剤を発生前〜発生初期に予防的に散布します。メタラキシル系・シモキサニル系などの薬剤が使われますが、薬剤抵抗性菌の発達を防ぐため、同一系統の薬剤の連用は避け、異なる作用機序の薬剤をローテーションすることが重要です。

土壌消毒の実施: 疫病が多発している圃場では、土壌消毒剤を使用して菌密度を下げてから栽培を開始します。台木利用との組み合わせで、より安定した防除効果が期待できます。

換気の徹底(施設栽培の場合): ハウス内の多湿状態を解消するために、適切な換気を行います。特に定植直後〜梅雨時期・高温期は換気に注意してください。

※農薬の使用にあたっては、必ず最新の農薬登録情報を確認し、ラベルの記載内容に従ってください。

現場の声・実態

ピーマン産地では、疫病と青枯病への対策が台木選びの核心です。高知県・宮崎県・茨城県などの主要産地では、両病害に複合耐性を持つ台木の利用が定着しており、産地の安定生産を支えています。

栽培現場では、「台木に変えてから疫病の被害が大幅に減った」という事例が多く報告されています。一方で、「排水不良の圃場では台木を使っても疫病が出る」という声もあり、台木の効果を最大限に引き出すには圃場の基盤整備が前提条件になることが分かります。

ここからが実際の栽培で差がつくところです。疫病を防ぐための圃場管理として、排水改善・マルチング・換気の徹底を徹底した上で台木を使用した場合と、台木だけに頼った場合とでは、発病率に明確な差が出るという現場報告があります。台木の耐病性は、適切な栽培管理があってこそ最大限に発揮されます。

ウリ科(スイカ・カボチャ)の台木では、疫病耐性は青枯病ほど重視されることは少ないですが、疫病の発生実績がある産地ではカタログの耐病性情報を必ず確認することをお勧めします。

まとめ

疫病に強い台木は、ピーマン・トウガラシ産地を中心に、高温多湿条件下での安定生産を支える重要な技術です。土壌伝染・根・茎からの感染を防ぐ台木の役割は大きく、特に青枯病との複合耐性を持つ台木の普及が産地の病害対策を大きく前進させてきました。

品種選びのポイントを整理します。

  • 疫病耐性のレベル(強耐病性か耐病性か)を確認する
  • 青枯病との複合耐性を持つ台木を優先的に検討する
  • PMMoVの抵抗性レベル(L3/L4)を穂木と一致させる
  • 高菌密度圃場では土壌消毒との併用が有効
  • 果実への直接感染防止には薬剤散布など別の手段が必要

台木の耐病性は、圃場の排水管理・マルチング・換気などの耕種的防除と組み合わせることで最大の効果が発揮されます。台木の品種一覧は台木の品種ページからご確認いただけます。

8品種 表示中
タッグマッチ台木

タッグマッチ台木

横浜植木株式会社

青枯れ病・疫病・ネマに強い!ピーマン台木 ■特性 ・PMMoV-L3型専用のピーマン台木。 ・青枯れ病 ・疫病の耐病性があり、ネコブセンチュウに強い。 ・根張りが良い台木で後半まで樹バテしにくく、収量性が高い。 ■栽培のポイント ・元肥は通常より1~2割多めに施用する。 ・耐病性は高いが、青枯れ病 ・疫病のタイプにより発病することがあるので、土壌消毒を併用し土作りをしっかりと行う。

台パワー

台パワー

ナント種苗株式会社

青枯病・疫病・モザイク病(L3)に対し、 極めて強い複合抵抗性。 【特 徴】 ● 農研機構 野菜茶業研究所で育成・発表された疫病・青枯病およびモザイク病に複合抵抗性の台木用ピーマン。疫病・青枯病に対して強度の抵抗性。 ● PMMoV(P1.2)に対して抵抗性を発揮するL3遺伝子を保有。PMMoVおよびToMVの発生している地域では、穂木に同じL3遺伝子を有する品種を用いてください。 ● サツマイモネコブセンチュウに抵抗性(ただし産地によっては発病の可能性あり)。 【ポイント】 ● 高温・多湿・高菌密度条件下では、発病する可能性があるため土壌消毒などの通常防除を併用してください。 ● 接木の難易度は「ベルマサリ」と同等で、穂木との播種間隔は約10日。 ● 自根栽培に比べて初期生育はやや遅くなります。

台ちから

台ちから

福井シード株式会社

青枯病・疫病に対して強い抵抗性を持つ甘トウガラシ、トウガラシ用台木 土壌伝染性病害である青枯病・疫病に対して強い抵抗性を持つため、安定生産に大きく貢献できます。

台木用トウガラシ L4台パワー

台木用トウガラシ L4台パワー

丸種株式会社

青枯病、疫病に強耐病性のPMMoV-L4 型台木 1. ウイルス病PMMoV-L4 型台木に耐病性を持つ、ピーマン、トウガラシ用台木です。青枯病と疫病に強耐病性を持ちます。 2. 幼苗期の生育がスムースで、接木作業が容易に進められます。 3. 接木親和性を合わせるため、穂木には PMMoV-L4 型品種を使用します

台パワー

台パワー

福井シード株式会社

土壌伝染性病害に強いピーマン用台木 ピーマンの青枯病・疫病に強度抵抗性を示します。PMMoV(P1.2)に対して抵抗性を発揮するL3遺伝子を持っています。 台木として利用した場合の収量性は、既存の台木品種と同等です。初期生育が少し遅いので、穂木より7~10日前に播種すると、接ぎ木がしやすくなります。 現在、岩手県、山形県、茨城県、京都府等の産地で利用されています。

L4台パワー

L4台パワー

福井シード株式会社

青枯病・疫病抵抗性台木 土壌伝染性病害である青枯病・疫病に対して強い抵抗性を持つため、安定生産に大きく貢献できます。 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 (通称):農研機構で開発された品種です。

台木用トウガラシ 台ちから

台木用トウガラシ 台ちから

丸種株式会社

青枯病、疫病に強耐病性の台木 1. 青枯病と疫病に強耐病性を持つ、ピーマン、トウガラシ用台木です。 2. ウイルス病に対して耐病性を持たないため、穂木にもウイルス病の耐病性を持たない品種を接木します。 3. 幼苗期の生育が、がっしりとしており接木作業が容易です。 4. 穂木に、ウイルス病の耐病性を持つ品種には 適しません。

一代交配 台木用トウガラシ 台パワーZ

一代交配 台木用トウガラシ 台パワーZ

丸種株式会社

複合耐病性のPMMoV-L3 型台木 1. ウイルス病PMMoV-L3 型台木に耐病性を持つ、ピーマン、とうがらし用台木です。 2. 青枯れ病、疫病、ネコブセンチュウに強耐病性を持ちます。 3. 特に発芽が早く揃いが良いため、苗管理が容易です。

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