病害耐性

えそ斑点病に強い台木の台木品種一覧 全9種類

えそ斑点病とは えそ斑点病は、Melon necrotic spot virus(メロン壊疽斑点ウイルス、略称: MNSV)によって引き起こされるウイルス病です。メロンを主要な感染作物とし、感染すると葉に黄褐色〜褐色の壊疽(えそ)斑点が生じ

えそ斑点病に強い台木について

えそ斑点病とは

えそ斑点病は、Melon necrotic spot virus(メロン壊疽斑点ウイルス、略称: MNSV)によって引き起こされるウイルス病です。メロンを主要な感染作物とし、感染すると葉に黄褐色〜褐色の壊疽(えそ)斑点が生じ、被害が進むと葉が枯れ上がり、果実の肥大が阻害されます。果実にも感染することがあり、果皮・果肉に褐変病斑が生じて商品価値が失われます。

このウイルスの最大の特徴は、土壌中のカビの一種であるオルピジウム菌(Olpidium bornovanus)によって媒介されることです。オルピジウム菌は遊走子の形で土壌水分中を移動し、植物の根に侵入する際にウイルスを同時に植物体内に取り込ませます。水の動きと共にウイルスが拡散するため、灌水や降雨で圃場内に広がります。

感染した植物は、定植後しばらくして発病する場合が多く、ハウス内での発生は斑状(パッチ状)に広がる特徴があります。発生しやすい条件は土壌水分が多く、pH が高めの土壌です。施設栽培(ハウス)での発生が多く、特にメロンの高設栽培・土耕栽培で問題になります。

国内では、主にメロン産地(茨城県・静岡県・熊本県・北海道など)での被害が報告されており、一部地域では連作により発生が常態化している圃場があります。

耐病性の区分

えそ斑点病に対する耐病性(または抵抗性)は、メロン台木品種のカタログで確認できます。

よく見られる表記は次のようなものです。

  • 「えそ斑点病抵抗性(MNSV抵抗性)」: ウイルスの感染・増殖を高度に抑制する遺伝的抵抗性を持つ。発病が大きく抑制される
  • 「えそ斑点病耐病性(MNSV耐病性)」: 感受性品種と比較して発病が軽減されるが、抵抗性より効果は低い場合がある
  • 「壊疽斑点病(えそ斑点病)耐病性強・中」: 耐病性のレベルを「強」「中」などで区分している場合もある

品種カタログで「えそ斑点病」「壊疽斑点病」「MNSV」などの表記を確認してください。えそ斑点病が問題になっている産地では、この耐病性の有無が台木選びの決め手になります。

台木の耐病性が効果を発揮するメカニズムとして、台木自体がMNSVに感染しにくいため、根から吸い上げる水の中にウイルスが侵入しにくくなることが挙げられます。穂木(収穫品種)を守るという台木本来の役割が、ウイルス病防除においても重要な意味を持ちます。

歴史と豆知識

メロンのえそ斑点病は、1970〜80年代から国内のメロン産地で問題化してきた病害です。施設メロン栽培の普及拡大に伴い、連作による土壌へのウイルス・媒介菌の蓄積が進み、被害が深刻化しました。

えそ斑点病の防除で特筆されるのは、一般的な農薬(殺菌剤・殺ウイルス剤)ではウイルス病そのものを直接防除できないことです。また、媒介するオルピジウム菌は土壌中の一般的な殺菌剤が効きにくい特性を持つため、薬剤による防除効果が極めて限定的です。そのため、台木による防除が最も現実的な選択肢として重要な位置を占めてきました。

意外と知られていないのですが、えそ斑点病ウイルス(MNSV)は非常に安定したウイルスで、土壌中で長期間感染力を保ちます。汚染された圃場の土壌が靴や農機具に付いて移動することで、圃場間に広がることも確認されています。新圃場への持ち込みを防ぐための農機具・資材の管理も重要な衛生措置です。

また、えそ斑点病への耐病性は「つる割病耐病性」とセットで持つ台木品種が多く、メロン産地では複合耐病性台木の普及が病害対策に大きく貢献しています。複数の種苗メーカーが複合耐病性台木を開発・販売しており、品種カタログで確認できます。

耐病性の限界と注意点

えそ斑点病に強い台木を選んでも、以下の点を理解して利用することが重要です。

台木の耐病性はウイルス感染を完全に遮断するものではありません。 台木自体がMNSVに感染しにくいことで穂木への感染リスクを下げますが、媒介菌のオルピジウム菌が多い圃場では、台木を通じず葉面などから穂木に直接感染するリスクも残ります。台木の効果は主に土壌からの感染経路に対して発揮されます。

媒介菌(オルピジウム菌)そのものは防除できません。 台木によってウイルスの植物体内への侵入を抑えることはできますが、土壌中のオルピジウム菌を根絶することはできません。土壌消毒でも駆除が難しいため、台木利用と衛生管理を組み合わせた継続的な対策が必要です。

えそ斑点病の診断は専門家に相談することが安心です。 えそ斑点病の症状は他の病害(うどんこ病、ウイルス病の別の種類など)と混同されることがあります。症状が出た場合は、都道府県の農業試験場や病害虫防除所に相談して正確な診断を受けることが対策の第一歩です。

発生地域かどうかの事前確認が重要です。 えそ斑点病の分布は産地によって偏りがあります。発生実績のない地域では、過度に耐病性にこだわるよりも、草勢・着果性・果実品質などの他の特性を重視した台木選びで問題ない場合もあります。

防除のポイント

えそ斑点病の防除は、台木の耐病性利用と耕種的防除の組み合わせが基本となります。薬剤による効果的な防除手段が限られているため、物理的・耕種的な手段が特に重要です。

圃場の衛生管理: 汚染圃場からの土の持ち込みを防ぐため、農機具・資材は圃場間で共用しないか、使用前後に洗浄・消毒します。作業者の靴底も土の持ち込み源になるため、圃場入口での消毒マットの設置が有効です。

灌水管理: 媒介菌のオルピジウム菌は過湿条件で活発に動くため、灌水量の適正管理が重要です。点滴灌水を使用して根域に直接水を供給し、余分な水の移動を抑えることが有効です。

排水改善: 圃場の排水性を高めることで、土壌の過湿状態を改善し、媒介菌の活動を抑制します。特に粘土質の土壌では排水改善が発生リスク低減に直結します。

土壌消毒の実施: クロルピクリンやダゾメット剤などの土壌消毒を行います。ただし、オルピジウム菌への直接の殺菌効果は他の病原菌と比較して限定的なため、効果を過信せずに他の防除手段と組み合わせることが重要です。

罹病植物残渣の適切な処分: 収穫後の植物残渣に感染したウイルスが残存するため、残渣は圃場外に持ち出して適切に処分します。圃場でのすき込みはウイルスを土壌に残すリスクがあります。

※農薬の使用にあたっては、必ず最新の農薬登録情報を確認し、ラベルの記載内容に従ってください。

現場の声・実態

茨城・静岡・熊本などのメロン産地では、えそ斑点病対策として複合耐病性台木の利用が進んでいます。「台木を換えてからえそ斑点病の被害が目に見えて減った」という声は多くの産地で聞かれます。

ここからが実際の栽培で差がつくところです。えそ斑点病は発生してしまうと有効な薬剤防除手段がほとんどないため、発生前から台木選びと圃場管理で予防することが唯一の現実的な対策です。発病してから対策を考えても手遅れになるケースが多く、「予防が防除」という意識が現場では定着しています。

産地によっては、えそ斑点病よりもつる割病の方が問題になる場合もあります。両病害に対応した複合耐病性台木を選ぶことで、一石二鳥の防除効果が期待できる点が、現場での選定基準として重要視されています。

一方で、えそ斑点病への耐病性が強い台木でも、着果性や果実品質が穂木に影響する場合があるため、産地での実際の使用実績を確認してから導入するのが安心です。初めて使う台木は必ず試作から始めることを多くの生産者が実践しています。

まとめ

えそ斑点病(MNSV)は、土壌中の媒介菌によって広がるメロン・ウリ科の重要ウイルス病です。有効な薬剤防除手段が限られているため、耐病性台木の利用と耕種的防除の組み合わせが最も現実的な防除戦略となります。

品種選びのポイントを整理します。

  • えそ斑点病(MNSV)への「抵抗性」か「耐病性」か、そのレベルをカタログで確認する
  • 発生地域かどうかを事前に確認し、発生実績のある産地では耐病性台木を優先する
  • つる割病との複合耐病性を持つ台木がメロン産地では一般的
  • 台木の効果は土壌からの感染経路に対して発揮される(葉面感染は別途対策が必要)
  • 圃場の衛生管理(農機具・資材の消毒)も防除の重要な柱

発生前の予防が最も重要な対策です。台木の品種一覧は台木の品種ページからご確認いただけます。

9品種 表示中
ワンツージャンプ

ワンツージャンプ

朝日アグリア株式会社

つる割病・えそ斑点病をシャットアウト! 【特 徴】 ◆つる割病レース0・1・2、及び1,2y・1,2w、えそ斑点病に耐病性を持つ。 ◆胚軸太く接ぎ易い。 ◆草勢はワンツーシャットより強め。 ◆強草勢台木であるが、糖度の上りなど良く自根に近い品質となる。 ◇栽培の注意点◇ 厳寒期には低温伸張性のあるワンツーシャットがおすすめ。 高温時期向けには、後半根張りの良いワンツージャンプがおすすめ

ワンツーシャット

ワンツーシャット

朝日アグリア株式会社

つる割病・えそ斑点病をシャットアウト! 【特 徴】 ◆低温伸長性高くロングセラーのレギュラー品種。

ワンツーダブル

ワンツーダブル

朝日アグリア株式会社

つる割病・えそ斑点病をシャットアウト! 【特 徴】 ◆低温伸長性があり、つる割れ病レース1,2y・1,2wに強い耐病性を持つ台木。

ワンツージャック

ワンツージャック

朝日アグリア株式会社

つる割病・えそ斑点病をシャットアウト! 【特 徴】 ◆草勢がやや大人しく自根の感覚で栽培でき、抑制栽培にも最適。

デュアルアタック

デュアルアタック

株式会社サカタのタネ

栽培後半でもしおれにくく草勢を維持。メロンつる割病・メロンえそ斑点病複合耐病性台木メロン ■特性 1.メロンつる割病レース0、1、2抵抗性、レース1,2y、1,2wに強い耐病性、メロンえそ斑点病抵抗性、メロンうどんこ病抵抗性(ただしレースによっては発病する)。 2.胚軸が太いので、接木作業が容易。穂木との親和性に優れ、活着率も高い。 3.自根に比べると根張りがよく、草勢はやや強い。低温期の栽培で草勢が弱い場合や栽培後半につるがしおれやすい作型に向く。 4.着果性への影響は少なく、果形が乱れにくいため、使い勝手がよい。 5.肉質・糖度などの果実品質は安定し、発酵果や青臭み果の発生が少ない。 ■要点 ・草勢は開花期から栽培後半にかけて特に旺盛となり、多肥栽培では雌花の着生、着果、果実品質に影響を及ぼす恐れがあるので、自根栽培よりやや少なめの施肥設計を心がける。 ・メロンつる割病レース1,2y、1,2wには強い耐病性があるが、完全な抵抗性ではないので、激発圃場では太陽熱消毒、土壌消毒などを併用して総合的防除に努める。

MK-M181

MK-M181

ヴィルモランみかど株式会社

壊疽斑点病に耐病性強で、つる割病に強いメロン台木 ■品種の特性 1. メロン壊疽斑点病耐病性強、つる割病(レース0,1,2)に耐病性強、レース1.-2y,1.-2wに耐病性中程度。 2. 生育初期から収穫期に至るまで草勢が強く保たれ、幅広く品種との親和性が高い。 3. 胚軸は太く、共台木としては接木作業性は高い。

メロンの恋人

メロンの恋人

トヨタネ株式会社

草勢が非常に強い共台木 品種特性 ■特長 ・つる割れ病レース0,1,2抵抗性、レース1,2y耐病性。えそ斑点病抵抗性、うどんこ病耐病性。 ・種子の大きさが大きく、胚軸が太く且つ伸び過ぎない為接木作業がしやすい。 ・生育前半の草姿は中程度、交配前から旺盛になり生育後半の草勢は強い。 ・草勢は強いが南瓜台木ほど乱れず、食味も向上する。メロン共台の他品種と比べ、低温の耐性がある。 ■栽培のポイント ・穂木より早めに播種する。

EM1016

EM1016

公益財団法人園芸植物育種研究所

共台(メロン)で、各種害抵抗性をもち、胚軸が太く接ぎ木しやすい台木 ・メロン共台なので接ぎ木親和性は完全である。 ・胚軸はやや太く、適度に硬く、 接ぎ木作業が容易。 ・草勢は中位(タカミ、アムス程度)。 ・果実品質は自根栽培と同等。 ・メロンつる割病0・1・2に抵抗性、1,2y・1,2wに耐病性、うどんこ病にも強い。 栽培上の注意点 メロン黒点根腐病、ホモプシス根腐病、紅色根腐病等の土壌病害には抵抗性がないので発生圃場では対策が必要になる。 台木品種抵抗性・耐病性一覧 品種 つる割病 えそ斑点病 抵抗性 耐病性 抵抗性MNSV 0 1 2 1, 2y 1, 2w 台木二号 ◎ × ◎ × × × 台木3号 ◎ ◎ ◎ × × × EM1016 ◎ ◎ ◎ ◯ ◯ ◎ ◎:抵抗性 ◯:耐病性 ×:罹病性

スウィング

スウィング

株式会社むさしのタネ

作りやすい複合耐病性 メロン共台木 ■特性 胚軸が太く、接木作業が容易。草勢はやや強く、根量が多いため、生育後半までスタミナを維持できる。 メロン共台木のため、穂木との親和性が高く、果実品質に低下が少ない。ノーネット系からネット品種まで幅広い穂木に適応する。 えそ斑点病、つる割れ病(R0、R1、R2)に抵抗性、つる割れ病(R1、2y)に耐病性を示す。

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