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ナス用台木の台木品種一覧 全4種類

ナス用台木とは 接木栽培とは、収穫を目的とする「穂木」を、土壌病害への耐性と強い根張りを持つ「台木」に接ぎ合わせる技術です。ナス用台木は、ナス栽培で最も深刻な土壌病害である青枯病・半枯病・半身萎凋病などから根系を守りながら、収量と品質を長期

ナス用台木について

ナス用台木とは

接木栽培とは、収穫を目的とする「穂木」を、土壌病害への耐性と強い根張りを持つ「台木」に接ぎ合わせる技術です。ナス用台木は、ナス栽培で最も深刻な土壌病害である青枯病・半枯病・半身萎凋病などから根系を守りながら、収量と品質を長期間安定させるために使われます。

ナスは長期間にわたる栽培が基本で、ハウス促成栽培では定植から収穫終了まで1年近くに及ぶこともあります。こうした長期栽培において連作を繰り返すと、青枯病や各種の土壌病害が圃場に蓄積し、やがて安定した生産が困難になります。この問題への根本的な対処として、病害耐性を持つ台木品種への接木が普及してきました。

現在、日本の施設ナス栽培の主産地では接木栽培が標準化されており、台木品種はナス生産の安定化に欠かせない資材として位置づけられています。台木の選択が安定生産・高収量の第一歩となるため、品種特性の理解が重要です。

ナス用台木が対応する主な病害

ナス用台木が耐病性を持つ主な病害を整理します。これらの土壌病害はいずれも薬剤防除だけでは制御が難しく、台木の耐病性と組み合わせた対策が必要です。

青枯病Ralstonia solanacearum)は、高温多湿条件で急速に進行する細菌性の萎凋病です。感染した株は青々としたまま急に萎れ、そのまま枯死します。一度発生した圃場には菌が長期間残存するため、毎作の発生リスクがあります。ナス青枯病には菌の群(biovar/レース)があり、Ⅲ群・Ⅳ群など地域によって異なるレースが問題になる場合があります。台木品種の中には特定のレース・群に対して高い耐病性を示すものがあります。

半枯病・半身萎凋病Verticillium dahliae および V. albo-atrum)は、糸状菌による根部・茎部からの感染で、株の片側だけが萎れたり、地際部の維管束が褐変したりする症状が特徴です。土壌中で長期間生存する菌であり、連作圃場での被害が深刻です。台木品種には半枯病・半身萎凋病に対する強い抵抗性を持つものがあり、連作圃場での対策として有効です。

ネコブセンチュウも見落とせない問題です。根にこぶが形成されることで根の機能が低下し、養水分吸収が阻害されます。連作によって土壌中のセンチュウ密度が増え、被害が拡大します。センチュウに対する抵抗性を持つ台木品種を使うことで、センチュウによる根の障害を軽減できます。

褐色腐敗病は根部の腐敗を引き起こす病害で、台木品種の中には耐病性を有するものがあります。

ナス用台木を選ぶメリット

ナスで台木を利用する実際的なメリットを整理します。

まず、複合耐病性による安定生産が最大のメリットです。青枯病・半枯病・ネコブセンチュウなど複数の土壌病害に対して複合的な耐病性を持つ台木品種が開発されており、これまで連作障害で収量が不安定だった圃場でも安定生産が可能になった事例が多くあります。

次に、長期間にわたる草勢維持と多収です。台木の強い根系が吸水・吸肥力を高め、生育後半まで安定した草勢を維持します。高温乾燥条件下でも根が傷まないため、成り疲れが少なく長期多収が期待できます。渡辺採種場の台木品種は「高温乾燥下でも長期の多収が可能」という特性が明記されており、こうした草勢維持への需要は産地に広く共有されています。

また、農研機構が育成した台木品種(台三郎、台太郎など)は、国の試験研究による裏付けのある耐病性データが示されており、特に連作障害が深刻な産地での導入実績があります。

ここからが実際の栽培で差がつくところです。ナスは長期栽培で草勢が衰えると後半の収量が大きく落ち込みます。台木による根系強化は、こうした「後半の収量ダレ」を防ぐうえで大きな役割を担います。

適した作型と産地

ナス用台木の利用は、作型や産地の土壌病害の状況によって特性への要求が異なります。

促成・長期栽培(冬〜翌夏)では、後半まで草勢を維持する根張りの強さが最も重要です。収穫期間が長いほど、台木の根張りの強さが収量と秀品率に直結します。高温期に入っても根が傷まず水分・養分を安定して吸収できる耐暑性のある台木が適しています。

夏秋栽培では、高温多湿条件での青枯病・疫病リスクが高まる時期の栽培です。青枯病に対して高度な耐病性を持つ台木品種を選ぶことが、夏の高温期の安定栽培に直結します。

連作圃場では、土壌病害の複合的な発生に対応できる複合耐病性台木が特に有効です。青枯病・半枯病・ネコブセンチュウすべてに対応した品種を選ぶことで、連作リスクを大幅に軽減できます。

産地によって事情が異なるので一概には言えませんが、青枯病が激発している圃場では、台木の耐病性の「程度」を事前に試験で確認することが複数のメーカー・研究機関から推奨されています。菌の群(レース)によっては発病することもあるため、一概に「台木を使えば安心」とは言えません。

栽培のポイント

ナス用台木の接木栽培を成功させるための管理ポイントを整理します。

播種タイミングについては、品種によって台木と穂木(ナス品種)の播種間隔が異なります。農研機構育成系統など初期生育が遅めの台木は、穂木より20〜25日前の播種が基準となる場合があります(発芽促進処理種子使用の場合で5〜7日早まる)。品種ごとの推奨日数に従い、接木適期を逃さない管理が重要です。

接木後の管理では、活着率を高めるための温湿度管理が基本です。ナスの接木は他の作物に比べて難易度が高い傾向があり、特に活着期の温度管理(23〜28℃程度)と高湿度維持が重要です。

土壌消毒との併用は、台木の導入でも引き続き重要です。高菌密度の圃場では耐病性台木であっても発病リスクがあるため、土壌消毒を組み合わせることで圃場全体の病原菌密度を下げることが安定栽培の基本です。

トゲのある台木の取り扱いについては、一部の台木品種(トルバム・ビガー系統)は茎葉にトゲがあり接木作業が困難という特性があります。ナント種苗が取り扱う品種の中には「茎葉いずれにもトゲが認められず接木作業が容易」と明記された品種もあり、作業性の観点でも品種を比較することが重要です。

※農薬の使用にあたっては、必ず最新の農薬登録情報を確認し、ラベルの記載内容に従ってください。

品種選びのコツ

ナス用台木を選ぶ際のチェックポイントを整理します。

  • 産地・圃場で主要な土壌病害(青枯病/半枯病/半身萎凋病/ネコブセンチュウ)を確認する
  • 複数病害への複合耐病性の有無を確認する
  • 青枯病の菌の群(Ⅲ群・Ⅳ群など)への対応を確認する(激発産地では特に重要)
  • 草勢の強さ(後半まで維持されるスタミナ)
  • 高温乾燥耐性(長期栽培・夏秋栽培向き)
  • 接木作業性(胚軸の太さ、トゲの有無)
  • 初期生育の速さ(播種間隔の決定に影響)

市場動向とこれから

ナスの接木栽培は、主要な施設産地で標準化されており、台木はナス生産インフラの一部となっています。農研機構が育成した台木品種(台三郎・台太郎など固定種)は、F1品種が多い他の台木とは異なり固定種として扱われており、産地での安定した種子供給に貢献しています。

近年の育種トレンドとして、より多様な青枯病の菌群・レースへの対応、高温条件下での草勢維持能力の強化が継続的に進んでいます。また、接木苗の大量生産ニーズに対応するため、作業性(胚軸の形状・揃い・トゲのなさ)を重視した品種開発も続いています。

ミノリスには、神田育種農場、ナント種苗、渡辺採種場、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)などの台木品種が掲載されており、耐病性の種類と強さ・草勢・作業性の違いで比較検討できます。

まとめ

ナス用台木は、青枯病・半枯病・半身萎凋病・ネコブセンチュウなどの土壌病害に対する複合耐病性と、長期栽培での草勢維持を実現するために使われる台木品種群です。連作による土壌病害の蓄積が深刻なナス産地での安定生産に、台木の役割は大きく貢献しています。

産地の土壌病害の発生状況・作型・圃場の連作年数を踏まえ、必要な耐病性の組み合わせと草勢レベルを持つ台木品種を選ぶことが基本です。台木の耐病性に頼りすぎず、土壌消毒や輪作などの総合的な土壌管理と組み合わせることで、より安定した長期の安定生産が実現できます。

4品種 表示中
茄の命

茄の命

株式会社神田育種農場

青枯病・半枯病・半身萎凋病に耐えるタフなナス台木。

トルバム・ビガー

トルバム・ビガー

株式会社渡辺採種場

半身萎凋病・半枯病・ネコブセンチュウに抵抗性のあるナス用台木 ■特性 ・半身萎凋病、半枯病、褐色腐敗病、ネコブセンチュウに抵抗性があり、青枯病にも強いナス用台木です。 ・特に半身萎凋病には現行品種の中で、強い抵抗性を示します。 ・根張りが良く、高温乾燥下でも長期の多収が可能です。 ■栽培ポイント・注意点 ・発芽促進処理種子は播種から発芽まで5~7日位早まります。 ・穂木の播種予定日より20~25日位前の播種が基準となります ■特記事項 発芽促進処理種子

カレヘン

カレヘン

ナント種苗株式会社

【特 徴】 ● トルバム・ビガーを小型にした草型で、茎葉いずれの部位にもトゲが認められず、接木作業が容易。汚染圃場において、カレへンは枯死率20%であった。ナス青枯病のⅢ、Ⅳ群に対して耐病性。 ● 初期の収穫は少ないが、ねばり強く後半にも収量が増加するため、合計収量はヒラナスに劣らない。

台三郎

台三郎

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構

ナス栽培種の台木用固定品種'台三郎'を育成した。青枯病抵抗性は'台太郎'より強く、半枯病に対しては同等の強度抵抗性を有する。草勢は'台太郎'より強く、接ぎ木個体の収量性は'台太郎'台と同等である。 ■主要特性 1. 1992年に'南頭茄'×'LS1934'の組合せのF2世代を展開し、以後、半枯病と青枯病の複合抵抗性について選抜を繰り返した。1999年にF9世代で諸特性が実用的に固定した系統を得たので、'台三郎'の系統名で2000~2002年にわたり特性検定・系統適応性検定試験を実施した結果、台木としての優秀性が認められた。 2. '台三郎'は青枯病と半枯病に強度の複合抵抗性を有する。'台太郎'との比較では、青枯病抵抗性はより強、半枯病抵抗性は同等である。 3. 発芽の早さ・揃い及び幼苗期の生育は'台太郎'と同等であり、幼苗接ぎ、割り接ぎともに容易である。 4. 接ぎ木個体の収量は'台太郎'台のものとほぼ同等である。収穫果の果形、果色は'台太郎'台のものと変わらず、優れている。'台太郎'よりも根系が発達するので、後半の草勢は強い。 ナス栽培種の固定品種であり、採種コストが安い。

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