根こぶ病耐性カブ
根こぶ病とは
根こぶ病は、アブラナ科の作物に広く発生する土壌病害で、カブ栽培における最も重要な病害の一つです。病原体はPlasmodiophora brassicae(プラズモジオフォラ・ブラシカエ)という原生生物(かつては菌類に分類されていましたが、現在は別系統の原生生物として扱われています)で、休眠胞子の形で土壌中に長期間(10年以上とも言われる)生存します。
感染すると根部に大小様々な瘤(こぶ)が形成されます。これがカブの根部(かぶら)の正常な肥大を妨げ、株全体の生育が著しく阻害されます。感染初期は地上部への影響が目立ちにくく、根を掘り起こして初めて発見されることも多いため、発見が遅れやすい病害です。ひどい場合は株全体がしおれ、収穫が不能になります。
根こぶ病菌の休眠胞子は土壌中で非常に長期間(10年以上とも言われる)生存できるため、一度発病した圃場での防除は困難です。発病しやすい条件は、酸性土壌(pH6.0未満)・多湿・連作・アブラナ科の密作で、これらの条件が重なると被害が深刻化します。
カブはアブラナ科に属するため、同じくアブラナ科のハクサイ・キャベツ・ブロッコリー・コマツナなどと連作すると根こぶ病の菌密度が土壌中で蓄積されていきます。
根こぶ病耐性(CR)の仕組みと区分
種苗カタログでは「CR(Clubroot Resistance)」の接頭語で根こぶ病耐性品種が表示されます。「CRきらりの夏」「CRにしき蕪」「CR宝夏小蕪」「CRもちばな」「CRゆきばな」「CR味くらべ」「CR玉鈴中かぶ」「CR白盃」「CR雪峰」などが代表例です。根こぶ病耐性を持つが「CR」を品種名に含まない品種として、株式会社トーホクの「根こぶ病に強いかぶ 白露」や株式会社サカタのタネの「二刀」(根こぶ病・萎黄病・白さび病耐性)なども知られています。
ここからが実際の栽培で差がつくところです。根こぶ病菌にはレース(系統)が存在し、日本では主に複数のレースが報告されています。CR品種は特定のレースに対して耐性を持つものが多く、品種が対応していないレースが優勢な圃場では発病することがあります。渡辺農事株式会社の「はくほう」の品種説明にも「根こぶ病を起こす病原菌はいくつかのレースが確認されており、地域によっては発病する危険性がある」と記載されており、CR品種の過信は禁物です。
また、株式会社サカタのタネの「二刀」の品種説明では「複数の根こぶ病レースに対し幅広く耐病性がありますが、近年レース分化が進んでいると報告されているので注意が必要」と明記されており、耐性の幅が広い品種でもレース変化への対応が課題であることが示されています。
歴史と豆知識
根こぶ病の被害はアブラナ科栽培の歴史とともに古くから記録されており、江戸時代の農書にも関連する記述が見られます。品種改良による耐性付与は20世紀後半から本格化し、「CR」という概念が育種・流通の場で広まったのは1970〜80年代以降のことです。
意外と知られていないのですが、CR品種を栽培しても、根こぶ病菌を圃場に持ち込んだり増殖させたりすることはあります。CR品種は「発病しにくい」特性を持ちますが、菌自体が死滅するわけではなく、圃場の菌密度を長期的に低下させるためには輪作など他の防除策との組み合わせが必要です。
CR品種の限界と注意点
CR品種を使っていても根こぶ病が発生するケースがあります。主な原因として以下が挙げられます。
レースの変異・新レースの出現: 根こぶ病菌は遺伝的多様性が高く、品種が対応していない新レースが発生した場合、耐性が機能しません。産地での発病状況を観察し、地域農業試験場などへの相談も有効です。
高い菌密度下での耐性低下: 長年のアブラナ科連作で土壌中の菌密度が非常に高い圃場では、CR品種でも発病リスクが上昇することがあります。
土壌pH: 酸性土壌では根こぶ病の活性が高まります。CR品種でも強酸性圃場(pH5.0未満程度)では効果が出にくいことがあります。石灰施用によるpH調整は、CR品種の効果を最大限に引き出すためにも重要です。
防除のポイント
根こぶ病の防除はCR品種の利用を核としながら、以下の対策を組み合わせます。
土壌pH管理: 石灰質肥料(消石灰・苦土石灰等)を施用し、土壌pHを6.0〜7.0程度に維持します。アブラナ科の連作が多い圃場ではpH測定を定期的に行うことが重要です。
輪作: アブラナ科以外の作物(イネ科・マメ科など)との輪作を取り入れることで、土壌中の菌密度の蓄積を防ぎます。輪作年限は3〜5年以上が目安とされています。
排水改善: 多湿条件は根こぶ病菌の胞子の移動・感染を助長します。圃場の排水性向上(暗渠・明渠整備・高畝栽培)が有効です。
罹病根の持ち出し: 発病株は土ごと圃場外に持ち出して処分し、圃場への菌の再還元を防ぎます。
※農薬の使用にあたっては、必ず最新の農薬登録情報を確認し、ラベルの記載内容に従ってください。
現場の声
カブ産地では、根こぶ病の連作障害が問題化したことをきっかけにCR品種への移行が進んだ事例が多くあります。CR品種の導入により安定した収穫が実現できた一方で、「CR品種に切り替えたが数年後にまた発病した」という報告も産地から聞かれます。この多くはレース変化や土壌pH管理の甘さが背景にあるとされており、品種だけに依存せずに総合的な土壌管理の重要性が改めて認識されています。
まとめ
根こぶ病はPlasmodiophora brassicaeによる土壌伝染性の病害で、酸性土壌・連作条件下で深刻な被害をもたらします。CR品種の利用は有効な対策ですが、レース変化・高菌密度・土壌pH条件によって耐性が機能しないケースがあります。
CR品種の選択と合わせて、土壌pH管理・輪作・排水改善を組み合わせた総合的な防除体系を構築することが、安定したカブ生産への近道です。
ミノリスでは根こぶ病耐性タグが付いたカブ品種一覧から、各CR品種の特性・メーカー情報を確認できます。圃場の病害状況と照らし合わせながら、適切な品種選びの参考にしてください。