果実・収量特性

香りの良いイチゴのイチゴ品種一覧 全7種類

香りの良いイチゴ 香りとは——イチゴの風味を構成する成分 イチゴの香りは、数百種類もの揮発性香気成分が組み合わさって形成されます。代表的な成分として、フラノン類(甘い果実香)、エステル類(フルーティーな香り)、アルコール類などがあり、品種に

香りの良いイチゴについて

香りの良いイチゴ

香りとは——イチゴの風味を構成する成分

イチゴの香りは、数百種類もの揮発性香気成分が組み合わさって形成されます。代表的な成分として、フラノン類(甘い果実香)、エステル類(フルーティーな香り)、アルコール類などがあり、品種によってこれらの成分の組成と量が異なります。このため、「甘い香り」「フルーティーな香り」「爽やかな香り」など、品種ごとに香りの方向性が異なります。

農研機構育成の「桃薫」は、「モモに似た芳醇な香りが特徴的で、今までのイチゴとは違った風味が楽しめます」と記載されており、「フルーティーなモモやココナッツに似た香り、甘いカラメルのような特徴的な香りの成分が多く含まれる」とされています。これは、野生種であるFragaria nilgerrensisの血を引く品種ならではの特性です。

一方、かおり野は「爽やかで品のある香りがあり、酸味の少ない優しい甘さが特徴」とされており、品種名にも「かおり」が含まれるほど香りが特性の中心に置かれています。東京おひさまベリーは「果肉が赤く、香り高いので、ジャムなどの加工に向いています」と記載されており、加工時にも香りが活かせる品種として紹介されています。

香りの良いイチゴの魅力

香りはイチゴの食味評価において糖度・酸度と並んで重要な要素です。視覚(色・形)と合わせて、香りは消費者が手に取る前から商品の印象を形成します。店頭に並んだイチゴの前を通ったときに漂う甘い香りは、購買行動を直接促す効果があるとされています。

生産者にとっては、香りの強さがブランド化の切り口になります。「香りが良い」という特性は、糖度の高さと同様に、産地ブランドの個性として訴求できます。観光農園でのイチゴ狩りでは、ハウス内に漂う香りが体験価値を高め、リピーター獲得につながることがあります。

製菓・スイーツ業界では、ケーキ・ジャム・ジュースなどの加工品においてイチゴの香りは重要な品質要素です。加工時に香りが失われにくい品種は、製品の付加価値を高める素材として評価されます。東京おひさまベリーが「加工に向いています」と紹介されているのも、こうした観点からです。

消費者・市場ニーズ

意外と知られていないのですが、消費者がイチゴを購入する際の決め手として「香り」を挙げる割合は、見た目・大きさに次ぐ重要な要素の一つとされています。特に、贈答用・ギフト用途では、包みを開けたときに広がる香りが「特別感」を演出する重要な要素です。

農研機構育成の「桃薫」はモモやカラメルに似た独特の香りを持ち、「今までのイチゴとは違った風味」として新市場の開拓を狙った品種です。こうした個性的な香りの品種は、一般的なイチゴとの差別化が明確であるため、直売・通販・観光農園など生産者が直接消費者に訴求するチャネルで特に適性が高いとされています。

一方、量販店の青果売場では、香りよりも日持ち性・見た目の美しさが優先される傾向があります。香りの強い品種は完熟に近い状態でないと香りが発現しにくく、完熟での収穫は日持ちを犠牲にすることも多いため、青果出荷では香りとの兼ね合いが課題になります。産地によって事情が異なるので一概には言えませんが、販売チャネルの特性を踏まえて香りを品種選びの基準にするかどうかを判断することが重要です。

栽培のポイント

香りの良いイチゴを生産するためには、品種特性を活かした栽培管理が重要です。

香気成分の生成には、果実の熟度が大きく関係します。多くの品種で、完熟に近い状態で香りが最も強くなります。香りを最大限に引き出すためには、適切な熟度で収穫することが前提条件です。しかし完熟収穫は日持ち性を低下させるため、出荷先や流通時間に合わせた収穫適期の判断が求められます。

温度管理も香りに影響します。高温条件では一部の香気成分が揮発しやすくなります。収穫後の果実を高温にさらすと香りが飛んでしまうことがあるため、収穫後の迅速な予冷と冷蔵管理が香りの保持に重要です。

農研機構育成の「桃薫」は「果実が軟らかいため、輸送には注意が必要ですが、貯蔵しても果皮色の変化が少ないので日持ち性はあります」と記載されています。香りが強い品種の中には果実が軟らかいものもあり、収穫・調製・輸送の各段階での丁寧な取り扱いが必要です。

かおり野については「炭疽病に抵抗性があり、早期に収穫が可能」と記載されており、「育苗後半の窒素切れで芽なし株が発生しやすいため、窒素切れには注意が必要」という栽培上の留意点も示されています。品種ごとの栽培管理の注意点をカタログで確認したうえで栽培計画を立てることが大切です。

ここからが実際の栽培で差がつくところです。香りの品種特性は、日照・温度・水分管理によって発現の程度が変わることがあります。十分な光合成によって糖分が蓄積された果実は、香気成分の前駆体となる有機酸や糖の量が増え、結果として香りが豊かになる傾向があります。日照管理や被覆資材の透明度維持が、香り高い果実づくりにも貢献します。

品種選びのコツ

香りの良いイチゴの品種を選ぶ際には、以下の点を確認することが有益です。

  • 香りの方向性:「爽やかな香り」「甘い芳醇な香り」「モモに似た独特な香り」など、香りのタイプは品種によって大きく異なる。自分の販売先や消費者の好みに合った方向性を選ぶ
  • 香りと硬度のバランス:香りの強い品種は軟らかい傾向があるものもある。桃薫のように「果実が軟らかいため輸送に注意が必要」という記述がある品種は、販売先の流通条件を考慮する
  • 加工適性の有無:香り高い品種の中にはジャム・ジュースなどの加工に向いているものがある。加工用途での活用を想定するなら、加工時の香りの維持性も確認する
  • 食味全体の評価:香りは食味の一部。糖度・酸味とのバランスも合わせて確認し、総合的な食味の良さが販売先のニーズに合うかどうかを判断する
  • 一般的なイチゴとの差別化の程度:桃薫のような「今までにない香り」を持つ品種は差別化性が高い一方、消費者によって好みが分かれる。試食・試食販売による市場反応の確認が導入前の重要なステップ

市場動向とこれから

香りを特性として前面に打ち出したイチゴ品種への関心は、消費者の食の多様化・こだわり志向の高まりとともに増しています。「甘い」「大粒」に続く第三の訴求軸として「香りが良い」という特性が注目されつつあります。

農研機構育成の「久留米IH1号」は野生種由来の特性として「果実の香りは極多」と評価されており、香りを育種素材として活用した品種開発も進んでいます。また「桃薫」のように、従来のイチゴとは全く異なる方向性の香り品種が登場し、「白いちご」に続く個性的なニッチ市場を形成しつつあります。

直売・インターネット通販・観光農園などのチャネルでは、「この品種でなければ得られない体験」の提供が顧客獲得の鍵になっています。香りの良い品種は、こうした体験型・個性重視の販売戦略との相性が良く、産地の差別化手段として位置づける産地も増えています。

まとめ

香りの良いイチゴは、独自の香気成分によって通常品との差別化が図れる品種群です。かおり野のような「爽やかで品のある香り」の品種から、桃薫のような「モモに似た芳醇な香り」を持つ個性的な品種まで、香りのタイプはさまざまです。

完熟収穫による香りの発現と日持ち性のバランス、輸送・保管での香りの保持が栽培・出荷の課題になります。直売・観光農園・通販など、香りを消費者に直接伝えられるチャネルとの相性が高く、産地の個性づくりに活用できる品種特性です。香りの良いイチゴの品種一覧は、タグページからご確認いただけます。

7品種 表示中
桃薫

桃薫

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構

「桃薫」の果実は、モモに似た芳醇な香りが特徴的で、今までのイチゴとは違った風味が楽しめます。果実には艶があり外観が優れ、色が淡いことから、見た目も普通のイチゴと違います。また、果形が揃い、収量性にも優れていますので、新しい用途の開発と需要の広がりが期待されます。 ■主要特性 1. 「桃薫」は促成栽培に適します。「桃薫」は生育が旺盛で、数多くの花が咲き、厳冬期でもあまり株が小さくなりません。果実は淡黄橙色で艶があり、種の落ち込みが少なく外観が優れます。 2. 「桃薫」は収穫開始時期が遅いため、クリスマスシーズンにたくさん採ることは困難ですが、春までの全期間の収量は多くなります。収穫前期の果実は大きいのですが、花数が多いので、収穫後期の果実は小さくなります。 3. 甘みや酸味は「とよのか」に近く、食味は良好です。また、果実が軟らかいため、輸送には注意が必要ですが、貯蔵しても果皮色の変化が少ないので日持ち性はあります。 4. 「桃薫」にはフルーティーなモモやココナッツに似た香り、甘いカラメルのような特徴的な香りの成分が多く含まれ、今までのイチゴとは違った風味を楽しめます。

ペチカほのか

ペチカほのか

株式会社ホーブ

登録番号 第26016号 タイプ:四季成性品種 商標名:夏瑞/なつみずき 食味:甘みと香りが強く、みずみずしい 外観:きれいな円錐形、光沢が強い 特性:大果で収量性や秀品率が高い 用途:生食用、業務用

かおり野

かおり野

三好アグリテック株式会社

その名の通り爽やかで品のある香りがあり、酸味の少ない優しい甘さが特徴です。 人気の品種で、大果で適度な酸味、糖度があります。 甘さ 4.0 酸味 1.0 硬さ 3.0 炭疽病に抵抗性があり、早期に収穫が可能です。 育苗後半の窒素切れで芽なし株が発生しやすい為、 窒素切れには注意が必要です。

東京おひさまベリー

東京おひさまベリー

三好アグリテック株式会社

露地栽培用に開発された、大果で硬く棚持ちの良いイチゴの品種です。 糖度は、宝交早生と同程度で酸度がやや高いので甘みと酸味のバランスが良く、美味しい品種です。果肉が赤く、香り高いので、ジャムなどの加工に向いています。 甘さ 3.0 酸味 2.0 硬さ 2.0 露地栽培でも果実の軟化や灰色カビ病が少ないです。宝交早生よりも大きく、硬く輸送に強い品種です。 草勢が強く、窒素の肥効が強いと過繁茂や先青果が発生するため、土壌環境によっては窒素施用量を減らす必要があります。宝交早生と比べ果柄が長い為対策を行ってください

MA16-18-06

MA16-18-06

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構

株式会社ミヨシとの共同育成による促成栽培向け品種です。草勢の強い多収品種で、外観や食味に優れた大玉な果実です。三好アグリテック株式会社から「ほしうらら」と言う名前(商標)で苗が販売されています。 ■主要特性 ・三好アグリテック株式会社育成の種子親に農研機構育成の花粉親AN02(促成栽培用13品種を元集団とする循環選抜第3次改良集団の自殖第1世代である強草勢・大果系統)を交雑した実生集団から選抜した促成栽培向き品種です。 ・冬期の草勢維持が容易で収穫期間内のランナー発生や展開葉数が少ない省力的品種です。 ・果形はやや短い円錐形、果皮色は鮮やかな赤で光沢があり外観が優れ、果肉の色は淡赤色で内部まで着色します。 ・香りはやや強く、特有のコクがあり食味は優れます。

恋みのり

恋みのり

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構

イチゴ「恋みのり」は促成栽培に適し、連続出蕾性に優れた多収品種である。冬期の草勢が強く草勢維持が容易で、大果で秀品率が高く、収穫・調製作業の省力化が可能である。果実硬度が高く、貯蔵に伴う黒ずみ果の発生が少なく、日持ち性に優れる。 イチゴ「恋みのり」は、イチゴ久留米48号、「さつまおとめ」、「さがほのか」の多元交配から得た03042-08に、「熊研い548」を交雑した実生集団から選抜した一季成り性品種で、促成栽培に適しています。 草姿は立性で、冬期の草勢はかなり強く、果房伸長性に優れています。頂果房花数は「さがほのか」と同程度で摘花作業が軽減できる品種です。 育成地の調査では、 1. 花芽分化期は、ポット育苗では9月中旬で、促成栽培での開花始期は「さがほのか」よりも7日程度遅い品種です。収穫開始期は「さがほのか」よりも11日程度遅い品種ですが、果房間葉数が少ないため連続出蕾性に優れ、収穫ピークの平準化が可能で2月末までの早期収量が多く、4月末までの全期収量も「さがほのか」よりもやや多収です。 2. 果実は約18gと大果で、短円錐~円錐形、果皮色は淡赤~赤色で光沢があります。糖度、酸度ともに「さがほのか」よりもやや高く、香りが強く、食味は良好です。硬度は「さがほのか」よりも高く、貯蔵に伴う黒ずみ果の発生が少なく日持ち性に優れています。また、果実の揃いに優れ秀品率が高いことから、収穫・調製作業の大幅な省力化が可能です。 ■利用上の留意点 1. 促成栽培用品種として利用できます。大果で秀品率が高く、収穫・調製作業の省力化が可能であることから、大規模施設生産に適しています。 2. うどんこ病に対しては中程度の抵抗性を有しますが、萎黄病および炭疽病に対しては罹病性ですので、健全な親株から増殖を行うとともに、育苗期を含め予防的な防除に努めてください。 3. 過度の窒素飢餓状態により芽なし株が発生しやすいので、育苗から本圃定植後の栽培期間を含め、十分な草勢の確保ならびに肥効の維持に留意してください。 4. 草勢が強く連続出蕾性が強いため、果房を畝の中心部に配置する「内なり栽培」では畝幅が狭いと果房が重なり、収穫時の作業性が悪化しやすい品種です。また、過繁茂により果実の着色不良を招きやすいため、十分な畝幅を確保してください。

夢つづき

夢つづき

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構

■夢つづき (イチゴ) 「夢つづき」は、アヲハタ(株)と共同開発したジャム等への加工適性が高い露地栽培向け品種です。果実は好適品種「千代田」より大きく、赤色で、ジャムに加工した際の色調が明るく、加工適性に優れます。無加温雨よけ栽培、露地栽培地域に適し、「千代田」並の商品果収量が期待できます。さらに、炭疽病に抵抗性を有し、栽培が容易で、果房伸長性が優れ、果実が硬く収穫調製作業が省力化できます。 ■主要特性 1. アヲハタ(株)と共同開発したジャム等への加工適性が高い露地栽培向けの品種です。露地栽培での総収量は「千代田」よりもやや少ないですが、商品果率が高く、商品果収量は同等です。 2. 果実は円錐~楔型で、露地栽培での平均果重は12.5gと「千代田」よりもやや大きく、果皮色は赤色、果肉色は淡赤色です。果実硬度は「千代田」よりも硬く、糖度は「千代田」と同等であり、酸度はやや低く、独特の甘い香りを有します。ジャムに加工した際の色調が明るく、高い加工適性を示します。 3. 立性で、果房が長く、果実が硬く収穫調製作業が省力化できます。 4. 炭疽病に抵抗性を有し、傷み果の発生が少なく、栽培が容易です。 5. 加工用イチゴを栽培する無加温雨よけ栽培、露地栽培地域に適します。

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