CMV耐性ズッキーニ品種の選び方|キュウリモザイクウイルス対策と品種一覧
タグ名: CMV耐性ズッキーニ
病害耐性 • 4品種で使用中
CMV耐性について
キュウリモザイクウイルス(CMV)とは
キュウリモザイクウイルス(Cucumber mosaic virus、略号: CMV)は、ククモウイルス属に分類される植物ウイルスで、ウリ科をはじめナス科・アブラナ科・マメ科など、極めて広範な植物種に感染する世界的に重要なウイルスです。名称は最初にキュウリから分離されたことに由来しますが、実際には1,200種以上の植物に感染するとされ、植物ウイルスの中で最も宿主範囲が広いウイルスの一つです。
CMVに感染したズッキーニでは、葉にモザイク症状(黄緑色と緑色のまだら模様)が現れ、葉の縮れや変形が生じます。果実にもモザイク斑や変形が見られ、商品価値が大きく低下します。感染が早い段階で起こると、草勢が著しく衰え、収穫量の大幅な減少につながることがあります。
CMVの伝染経路はアブラムシ(モモアカアブラムシ、ワタアブラムシ等)による非永続的伝搬です。この伝搬様式はZYMVやWMVと共通しており、アブラムシが短時間の吸汁でウイルスを伝搬するため、殺虫剤によるウイルス伝搬の完全な防止は困難です。
まず押さえておきたいのが、CMVはウリ科以外の多種多様な植物にも感染するため、圃場周辺のあらゆる植物がウイルスの感染源になり得るという点です。ZYMVやWMVと比べて感染源の特定と排除が難しく、防除体制の構築にはより広い視野が求められます。
CMV耐病性の区分
ズッキーニにおけるCMV耐病性は、品種カタログで「CMV耐病性」「CMVに強い」などの表記で示されます。ただし、CMV耐病性を持つズッキーニ品種は、ZYMVやWMV耐病性品種と比較すると選択肢がまだ限られているのが現状です。
CMVには多数の系統(ストレイン)が存在し、大きくサブグループI とサブグループIIに分けられています。これらのサブグループ間では生物学的性状が異なり、品種の耐病性の有効性にも差が出る可能性があります。国内では複数の系統が分布しているため、特定の系統に対する耐性が他の系統にも同様に有効とは限りません。
品種選びで見落としがちなのが、CMVの耐病性は「完全免疫」ではないという点です。耐病性品種であっても、高い接種圧の条件下やストレスを受けた栽培環境では発病する場合があります。耐病性品種の利用は防除の一要素であり、他の対策と組み合わせてこそ効果を発揮します。
歴史と豆知識
CMVは1916年にキュウリのモザイク病として初めて報告され、植物ウイルス研究の歴史の中で最も早くから研究されてきたウイルスの一つです。100年以上の研究の蓄積があり、その生態や遺伝子構造は詳細に解明されています。
日本国内ではCMVは古くから知られており、トマト・ピーマン・レタス・ホウレンソウなど多くの作物で被害が報告されてきました。ズッキーニにおけるCMV被害が注目されるようになったのは、ズッキーニの栽培面積が拡大した2000年代以降です。
意外と知られていないのですが、CMVにはサテライトRNAと呼ばれる付随的なRNA分子が存在する場合があり、このサテライトRNAの有無によって症状の重篤度が変わることがあります。サテライトRNAを伴う系統では、壊疽症状(組織の枯死)が発生することがあり、通常のモザイク症状とは異なる被害パターンを示すことがあります。
CMV耐病性品種の育成は、ZYMVやWMVと比べて難易度が高いとされています。CMVの宿主範囲の広さと系統の多様性が育種上の課題であり、現在もCMV耐病性の強化に向けた研究開発が各種苗メーカーで続けられています。
CMV耐病性の限界と注意点
CMV耐病性品種を利用する際には、以下の限界を理解しておくことが大切です。
CMVの系統の多様性は、耐病性の有効性に影響を与えるリスク要因です。現在の耐病性品種が対応している系統以外の系統が圃場で流行した場合、耐病性の効果が十分に発揮されない可能性があります。
宿主範囲の広さは、感染源のコントロールを困難にする要因です。圃場周辺の雑草、花卉類、他の作物など、あらゆる植物がCMVの感染源になり得るため、ウイルスの侵入を完全に防ぐことは現実的に難しいです。耐病性品種の導入と併せて、アブラムシの飛来抑制策を徹底することが重要です。
他のウイルスとの複合感染にも注意が必要です。CMVとZYMV、WMVが同時に感染した場合、それぞれのウイルスの単独感染よりも重い症状が出ることがあります。複数のウイルスへの耐性を兼ね備えた品種選びが、総合的なリスク低減につながります。
防除のポイント
CMVの防除は、耐病性品種の利用を軸に、アブラムシの飛来抑制と感染源の除去を組み合わせた対策が基本です。
物理的防除として、シルバーマルチによるアブラムシ飛来抑制は、CMV対策においてもZYMVやWMVと同様に有効です。栽培初期の感染リスクが最も高いため、定植時からのマルチ設置が推奨されます。
耕種的防除としては、圃場周辺の雑草管理が特に重要です。CMVは宿主範囲が極めて広いため、圃場周辺に生育する雑草がウイルスの保毒植物として機能するリスクが、ZYMVやWMVよりも高くなります。定期的な除草とともに、圃場の周囲に緩衝帯を設ける工夫も効果的です。
ここからが実際の栽培で差がつくところです。CMVの防除においては、近隣圃場で栽培されている作物にも目を配ることが大切です。CMVはウリ科以外の作物(トマト、ピーマン、レタス等)にも感染するため、これらの作物が罹病している場合、アブラムシを介してズッキーニにウイルスが持ち込まれる可能性があります。圃場間のウイルスの移動を意識した作付け計画が、長期的な防除効果を高めます。
罹病株の早期発見と除去は基本中の基本です。モザイク症状が確認された株は速やかに抜き取り、圃場外で処分します。作業に使用するハサミや手袋を介した汁液伝染のリスクもあるため、罹病株に触れた後は器具の消毒を行うことが望ましいです。
※農薬の使用にあたっては、必ず最新の農薬登録情報を確認し、ラベルの記載内容に従ってください。
現場の声
CMV耐病性を持つズッキーニ品種は選択肢がまだ限られているものの、CMVの被害を経験した産地では導入への関心が高まっています。
栽培現場では、CMV単独の被害よりも、ZYMVやWMVとの複合感染による被害が問題になるケースが多く報告されています。複合感染を経験した生産者からは、「できるだけ多くのウイルスに耐性を持つ品種を選びたい」という声が聞かれます。
産地によって事情が異なるので一概には言えませんが、CMVの発生が頻繁な地域では、品種の耐病性に加えてシルバーマルチの全面採用や防虫ネットの活用など、物理的防除を強化する取り組みが進んでいます。圃場周辺に多様な作物や雑草が存在する環境では、CMVの感染源の特定が難しいため、防除のハードルが高いと感じている生産者も少なくありません。
ズッキーニの品種選びにおいては、ZYMV・WMV耐病性を最優先で確認し、さらにCMV耐病性が加わった品種があれば選択するという段階的な判断をしている生産者が多い傾向です。
まとめ
CMVはアブラムシが媒介するウイルス病で、1,200種以上の植物に感染する極めて宿主範囲の広いウイルスです。ズッキーニにおいてもモザイク症状や果実の変形を引き起こし、収量・品質に被害をもたらします。
CMV耐病性を持つズッキーニ品種の選択肢は、ZYMVやWMVと比べるとまだ限られていますが、「ランボー」「スプリント」「KZパワー」など対応品種が存在します。品種選びにあたっては、CMV耐病性に加えてZYMV・WMVへの耐性も併せて確認し、複数のウイルスに対応できる品種を選ぶことが実用的です。圃場周辺の雑草管理やシルバーマルチの活用など、アブラムシの飛来抑制策を組み合わせた総合防除が安定栽培の鍵です。
タグ情報
基本情報
- タグ名
- CMV耐性ズッキーニ
- 種別
- 病害耐性
使用状況
- 関連品種数
- 4品種
- 関連作物数
- 1作物
- 関連メーカー数
- 4社
関連品種(4品種)
ズッキーニ (4品種)
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