白さび病耐性チンゲンサイの品種一覧
タグ名: 白さび病耐性チンゲンサイ
病害耐性 • 7品種で使用中
白さび病耐性について
白さび病耐性チンゲンサイ
白さび病とは
白さび病は、卵菌類の一種である Albugo candida によって引き起こされるアブラナ科作物の病害です。糸状菌(カビ)とは分類学上異なるグループに属しますが、菌糸を形成して植物体内に侵入・増殖するという点では類似した生態を持っています。チンゲンサイを含むアブラナ科の葉菜類は本病の重要な宿主作物です。
主な症状は、葉の裏面に形成される白色〜乳白色の隆起した胞子堆(ほうしたい)です。はじめは小さな点状ですが、病勢が進むと直径数ミリ〜1センチ程度の白い膨らみが葉裏に多数散在するようになります。葉の表面には、胞子堆に対応する部分に淡い黄緑色の退色斑が現れることが多いです。重症化すると葉全体が黄変し、商品価値が著しく低下します。
まず押さえておきたいのが、白さび病は冷涼で多湿な環境条件で発生しやすいという点です。発病適温は10〜20℃前後とされており、秋から春にかけての栽培で発生リスクが高まります。特に、朝夕の気温低下に伴う結露や降雨後の多湿条件が感染を助長するため、秋冬どりや春どりのチンゲンサイ栽培では注意が必要です。
白さび病菌はアブラナ科の雑草(ナズナ、タネツケバナなど)にも寄生するため、圃場周辺の雑草が感染源となるケースもあります。胞子は風や雨滴によって飛散し、葉の気孔から侵入して感染が成立します。
白さび病耐性の仕組み
チンゲンサイにおける白さび病耐性は、品種が持つ遺伝的な抵抗性によって、病原菌の侵入や増殖を抑制する仕組みです。耐性品種では、白さび病菌が感染を試みても胞子堆の形成が抑えられるか、形成されても規模が小さく留まるため、商品性への影響が軽減されます。
種苗メーカーのカタログでは「白さび病耐病性」「白さび病に強い」などの表記で耐性の有無が示されています。ただし、耐性の程度は品種によって差があり、「完全に発病しない」品種は稀です。多くの耐性品種は「発病しにくい」「発病しても軽微に留まる」という特性を持つものとして理解するのが適切です。
意外と知られていないのですが、白さび病菌にもレース(病原型)の分化が存在する可能性が指摘されています。宿主植物の種類によって病原性が異なることが報告されており、チンゲンサイに対する病原性とハクサイやカブに対する病原性が完全に同一ではないとする研究もあります。耐性品種の選定にあたっては、チンゲンサイでの実績が確認されている品種を選ぶことが重要です。
耐性品種であっても、発病を助長する環境条件(低温多湿の継続、過密植による通気性の悪化、窒素過多による軟弱生育など)が重なれば発病リスクは上昇します。品種の耐性に過度に依存するのではなく、栽培管理との組み合わせで防除効果を高めるアプローチが推奨されています。
歴史と豆知識
白さび病は世界各地のアブラナ科作物で発生が報告されている古くから知られた病害です。日本においても、ダイコン、カブ、コマツナ、ハクサイなどのアブラナ科野菜で発生が確認されており、チンゲンサイ栽培の普及に伴い、チンゲンサイでの被害報告も増加してきました。
チンゲンサイは中国原産の野菜で、日本には1970年代に導入され、その後急速に消費が拡大しました。栽培面積の拡大と連作の進行に伴い、根こぶ病や白さび病などの土壌・空気伝染性病害の問題が顕在化するようになりました。白さび病耐性品種の育種は、こうした産地からの強い要望を背景に進められてきました。
これ、実はチンゲンサイ栽培でかなり重要なポイントです。白さび病は見た目の症状が非常に目立つ病害であり、葉裏の白い膨らみは消費者に対するマイナスイメージが大きいです。青果として店頭に並んだ際、わずかな発病痕でも商品としてはじかれる場合があります。そのため、白さび病対策は品質管理と直結する問題であり、耐性品種の導入は商品価値の維持という面で大きな意義を持っています。
なお、白さび病は食品衛生上の有害性はなく、発病した部分を除去すれば食用には問題ないとされています。しかし、外観品質が重視される青果流通においては、わずかな発病も出荷基準に抵触することが多く、生産者にとっては収量低下以上に歩留まりの悪化が経営に響くことがあります。
白さび病耐性の限界と注意点
白さび病耐性品種を導入する際には、いくつかの限界と注意点を理解しておく必要があります。
環境条件による発病リスクの変動があります。冷涼多湿の条件が長期間続くと、耐性品種であっても発病する可能性は否定できません。特に、ハウス栽培で換気が不十分な場合や、露地栽培で秋雨が続く時期には注意が必要です。
栽培管理の影響も無視できません。窒素過多による軟弱徒長は白さび病の発生を助長します。耐性品種であっても、過剰施肥や過密植によって株の抵抗力が低下していると、耐性の効果が十分に発揮されないことがあります。適正な施肥管理と栽植密度の確保が、品種の耐性を活かすための前提条件です。
白さび病耐性と他の重要な特性(耐暑性、晩抽性、根こぶ病耐性など)を高いレベルで兼ね備えた品種は限られる場合があります。複数の病害が発生するリスクのある圃場では、どの病害への耐性を優先するかを判断する必要があることもあります。
また、圃場周辺のアブラナ科雑草が感染源となるため、耐性品種を栽培していても、周辺環境からの感染圧が高い場合は発病を完全には防げないことがあります。圃場周辺の除草管理も防除対策の一環として位置づけることが大切です。
防除のポイント
白さび病の防除は、耐性品種の利用を中心に、環境管理と化学的防除を組み合わせて行います。
通気性の確保は白さび病防除の基本です。株間を適切に取り、葉の重なりによる多湿環境を軽減することで、胞子の発芽・侵入条件を悪化させることができます。ハウス栽培では、換気を十分に行い、ハウス内の湿度を低下させることが効果的です。特に早朝の結露を減らすために、日の出前からの換気が推奨される場合があります。
排水管理も重要です。圃場の排水性を高めることで、土壌表面の過湿を防ぎ、胞子の飛散・感染リスクを低減できます。高畝栽培は排水改善と通気性向上の両面で有効な手段です。
施肥管理では、窒素の過剰施用を避け、カリウムやカルシウムの適正な補給を行うことで、株の抵抗力を維持する効果が期待できます。軟弱徒長を避け、締まった草姿を維持することが耐病性を引き出すポイントです。
圃場衛生として、収穫後の残渣は速やかにすき込むか圃場外に持ち出し、感染源の残存を最小限に抑えます。アブラナ科の雑草除去も有効な予防策です。
化学的防除としては、予防散布が基本です。発病後の治療効果は限定的なため、発病が予測される時期(秋〜春の冷涼多湿期)に入る前から予防的に薬剤を散布します。
ここからが実際の栽培で差がつくところです。チンゲンサイは栽培期間が短いため、薬剤散布の回数が限られます。その分、耐性品種の導入による基礎的な防除効果が重要になります。耐性品種と予防散布の組み合わせにより、限られた散布回数でも効率的な防除体系を構築できます。
※農薬の使用にあたっては、必ず最新の農薬登録情報を確認し、ラベルの記載内容に従ってください。
品種選びのコツ
白さび病耐性チンゲンサイの品種選びでは、以下の観点を確認することが重要です。
- 耐性の程度: 同じ「白さび病耐性」でも品種間で差がある。種苗メーカーの試験データや産地での実績を参考にする
- 栽培適期との適合: 白さび病は冷涼期に発生しやすいため、秋冬どり・春どりの作型で特に耐性品種の意義が大きい。自分の栽培時期に適合する品種を選ぶ
- 複合耐性: 根こぶ病など他の重要病害への耐性を併せ持つ品種であれば、病害リスクの総合的な軽減が期待できる
- 草姿と外観品質: 葉色の濃さ・葉柄の幅と厚み・株のまとまりなど、市場が求める外観基準に適合するかを確認する
- 在圃性: 収穫適期の幅が広い品種は、出荷調整の柔軟性が高まる
産地によって事情が異なるので一概には言えませんが、白さび病の発生歴がある圃場や、冷涼多湿な気候の地域では、耐性品種の導入を積極的に検討する価値があります。一方で、温暖乾燥な気候の夏期栽培では白さび病のリスク自体が低いため、耐暑性や晩抽性を優先した品種選びが合理的な場合もあります。
まとめ
白さび病は、冷涼多湿な環境で発生しやすいアブラナ科の病害であり、チンゲンサイの葉裏に白い胞子堆を形成して外観品質を著しく低下させます。耐性品種の導入は有効な防除手段ですが、環境条件や栽培管理によって耐性の効果は変動するため、通気性の確保・適正施肥・排水管理と組み合わせた総合的な防除体系の構築が重要です。
品種選びにあたっては、白さび病耐性のレベルに加え、栽培適期への適合性・複合耐性・外観品質を総合的に判断することがポイントです。チンゲンサイは栽培期間が短く薬剤散布の回数が限られるため、品種の耐病性を防除体系の基盤に据えることが、効率的かつ安定した生産につながります。
タグ情報
基本情報
- タグ名
- 白さび病耐性チンゲンサイ
- 種別
- 病害耐性
使用状況
- 関連品種数
- 7品種
- 関連作物数
- 1作物
- 関連メーカー数
- 4社
関連品種(7品種)
チンゲンサイ (7品種)
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