病害耐性

軟腐病耐性のネギ品種一覧 全5種類

軟腐病耐性ネギ 軟腐病とは 軟腐病は、細菌(Pectobacterium carotovorum subsp. carotovorum、旧名 Erwinia carotovora)によって引き起こされるネギの重要病害です。糸状菌(カビ)では

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軟腐病耐性について

軟腐病耐性ネギ

軟腐病とは

軟腐病は、細菌(Pectobacterium carotovorum subsp. carotovorum、旧名 Erwinia carotovora)によって引き起こされるネギの重要病害です。糸状菌(カビ)ではなく細菌が病原体であるため、発病のメカニズムや防除のアプローチが他の病害とは大きく異なります。

主な症状としては、葉鞘の基部(株元付近)が水浸状に変色し、やがて組織が軟化・崩壊して悪臭を放つのが特徴的です。軟腐病菌はペクチン分解酵素を分泌し、植物の細胞壁を構成するペクチンを溶かすことで組織を崩壊させます。この腐敗の速さが軟腐病の怖さであり、発症からわずか数日で株全体が腐り果てることがあります。

感染経路としては、主に傷口からの侵入です。土寄せ作業時の機械的な傷、害虫による食害痕、風雨による擦り傷などが侵入口となります。特に根深ネギでは、土寄せの際に葉鞘に傷がつきやすく、その傷口から軟腐病菌が侵入するケースが多く報告されています。

軟腐病は高温多湿条件で発生しやすく、気温25〜35℃、土壌が過湿な状態が続くと急激に増加します。梅雨の後半から盛夏にかけてが発生のピークであり、特に土寄せ直後の高温多湿期は最もリスクが高い時期です。

軟腐病耐性の区分

ネギにおける軟腐病耐性は、品種によって程度が異なります。しかし、軟腐病耐性の評価は他の病害と比較しても難しい分野です。これは、軟腐病の発生が気象条件・土壌条件・栽培管理に大きく左右されるため、品種の耐性を安定的に評価しにくいことが一因です。

品種選びで見落としがちなのが、軟腐病耐性は「かからない」のではなく「かかりにくい」レベルの差であるという点です。種苗メーカーのカタログでは「軟腐病に比較的強い」「軟腐病の発生が少ない」といった表現が使われることが多く、完全な耐病性を保証するものではありません。

軟腐病菌は土壌中に広く常在する細菌であり、ネギだけでなくハクサイ・ダイコン・ニンジン・レタスなど多くの野菜に感染します。このため、ネギ以外の作物との連作でも菌密度が維持される可能性があり、輪作だけでは菌密度を十分に下げられない場合もあります。

耐性のメカニズムとしては、葉鞘の組織構造の違い(硬さ・緻密さ)や、傷の治癒速度の差が品種間の耐性差に関わっているとされています。組織が硬く緻密な品種は、軟腐病菌の侵入や拡散が抑制される傾向があります。

歴史と豆知識

軟腐病は世界各地の野菜生産で問題となっている普遍的な細菌病です。ネギにおける軟腐病の被害は、日本では根深ネギの栽培が盛んな関東地方を中心に、古くから知られてきました。

特に、夏秋期に土寄せを行う秋冬どり根深ネギの栽培体系では、高温期の土寄せ作業と軟腐病の発生リスクが重なるため、産地にとって最大の課題の一つとされてきました。千葉県や埼玉県の主要ネギ産地では、軟腐病による出荷量の減少が経営に直結する問題として、対策技術の開発が精力的に進められてきた経緯があります。

耐病性品種の育成は、化学的防除だけでは対応しきれない軟腐病の特性を踏まえた取り組みとして注目されてきました。軟腐病菌は細菌であるため、一般的な殺菌剤(糸状菌用)では効果が限定的であり、銅剤や抗生物質系の薬剤に頼らざるを得ない面があります。

意外と知られていないのですが、軟腐病菌は嫌気的な条件(酸素が少ない状態)で活動が活発になります。土寄せによって株元が埋まり、通気性が悪くなった状態は、まさに軟腐病菌にとって好条件です。このことからも、排水管理と通気性の確保がいかに重要かがわかります。

軟腐病耐性の限界と注意点

軟腐病耐性品種を導入しても、それだけで完全に軟腐病を防げるわけではありません。以下の点に注意が必要です。

環境条件への依存度の大きさが最も重要な注意点です。軟腐病の発生は気象条件(高温多湿)と土壌条件(排水不良・過湿)に強く支配されるため、耐病性品種であっても極端な悪条件下では発病することがあります。梅雨明けの集中豪雨後や、台風の通過後など、圃場が一時的に冠水するような状況では特にリスクが高まります。

傷口管理の重要性も見逃せません。軟腐病菌は傷口から侵入するため、土寄せ作業時に株を傷つけないよう丁寧な作業を心がけることが基本です。耐病性品種であっても、傷口が多ければ感染リスクは上昇します。

他の病害虫との複合被害にも注意が必要です。ネギアザミウマやネギハモグリバエによる食害痕は軟腐病菌の侵入口になります。害虫防除を徹底することが、間接的な軟腐病対策にもなります。

連作による菌密度の上昇も考慮すべきポイントです。軟腐病菌は土壌中に広く常在しますが、連作することで菌密度が高まり、発病リスクが増加する場合があります。

防除のポイント

軟腐病の防除は、耐病性品種の利用を基盤としつつ、耕種的防除を重点的に行うことが効果的です。

排水管理は軟腐病防除の最も重要な柱です。圃場の排水性を高め、土壌が過湿にならないようにすることが発病抑制の基本です。暗渠排水の整備、明渠の設置、高畝栽培の採用が有効とされています。特に梅雨期から盛夏にかけての排水管理は徹底して行う必要があります。

土寄せの方法と時期の工夫も重要です。高温期の土寄せは軟腐病の発生リスクを高めるため、可能であれば気温が下がる時期にずらすことが望ましいです。やむを得ず高温期に土寄せを行う場合は、株を傷つけないよう作業の精度を高め、土寄せ後の灌水は控えめにすることが効果的です。

ここからが実際の栽培で差がつくところです。土寄せの際は、乾いた土を使うことがポイントです。湿った土を株元に寄せると、菌の活動が活発になり発病リスクが高まります。また、一度に大量の土を寄せるのではなく、少量ずつ数回に分けて行うことで、株元の通気性を維持しやすくなります。

化学的防除としては、銅剤や抗生物質系の殺菌剤をネギへの登録を確認の上で使用します。予防的な散布が基本であり、土寄せ直前や直後のタイミングでの散布が効果的とされています。

※農薬の使用にあたっては、必ず最新の農薬登録情報を確認し、ラベルの記載内容に従ってください。

現場の声

ネギ産地では、軟腐病対策に関して試行錯誤を重ねた実践知が蓄積されています。

関東の根深ネギ産地では、軟腐病耐性品種への切り替えと圃場の排水改善を同時に実施したところ、軟腐病による廃棄率が大幅に低下したという報告があります。品種の耐病性と圃場環境の改善が相乗効果を発揮した好例です。

夏場の土寄せ作業を見直し、土寄せのタイミングを早朝の涼しい時間帯にずらしたことで、軟腐病の発生が減少した産地もあります。高温時の作業は株へのストレスが大きく、傷口の治癒も遅れるため、作業時間帯の工夫は現実的な対策の一つです。

栽培現場では、「軟腐病が出たらもう手遅れ」と言われることがあります。発病後の治療は極めて難しく、予防に重点を置いた管理体系が基本です。耐病性品種の導入は、この予防体系の重要な柱として位置づけられています。

産地によって事情が異なるので一概には言えませんが、軟腐病対策は品種・排水・土寄せ管理の3つを柱とする総合的なアプローチが最も効果的とされています。

まとめ

軟腐病は、細菌によって引き起こされるネギの重要病害であり、高温多湿条件で傷口から感染して組織を急速に腐敗させます。発病後の治療が極めて困難なため、予防を重視した管理体系が基本となります。

耐病性品種の導入は有効な対策の一つですが、品種だけで防げるものではなく、排水管理・土寄せ方法の工夫・害虫防除との組み合わせが不可欠です。品種選びにあたっては、軟腐病耐性の情報に加えて、自地域の気象条件や圃場の排水性を総合的に考慮し、栽培体系全体として軟腐病リスクを低減する設計を行うことが安定生産の鍵となります。

5品種 掲載中
夏場所

夏場所

カネコ種苗株式会社

夏秋どり用F₁品種、秀品率、作業性アップ! 特性 ●8~11月どりに適する“極黒柄”の夏秋どり用一本ネギで、太りが良く、さらにそろい、上物率が高い品種です。 ●襟のしまりが良く、短葉、立性なので、倒伏や葉折れが少ない品種です。 ●L率が高く、調整が楽なので、作業性に優れます。 ●白根は光沢のある透き通った白さなので、葉色とのコントラストに優れ、荷姿がきれいです。 ●さび病や軟腐病に比較的強い品種です。 ●最も適する作型は、1月下旬~2月上旬まきの夏秋どりです。 栽培要点 ●施肥量は、今までの一般的な品種より、多めに施肥します。 ●定植本数は、メートルあたり35~40本が最適ですが、さらに早く太らせるには30~35本程度とします。 ●堆肥や緑肥作物を投入し、土作りを励行してください。

天の剣

天の剣

トキタ種苗株式会社

【販売終了】剣シリーズの中生タイプ 在圃性、秀品率重視の方にお勧め。作柄は常に安定。 ■特性 首の纏まりが早く、耐暑、耐寒性に優れる。 肥大性(特に高温期)に優れるため、秋播き夏穫り、春播き秋穫りで収量が上がる早出し可能な早太りタイプである。 首部は丸く肥大し、扁平になることが無いため秀品率抜群である。 純黒柄系の品種なので、病気に強く、葉質がしっかりしており、耐倒伏性がある。 ■栽培上の注意 軟腐病に強い。 空梅雨、酷暑、巨大台風、集中豪雨等、天候不順が非常に目立ちます。このような条件下でも、畑に長く置ける生理的に強健で在圃性に優れるネギです。 ■播き時期 一般地11~3月、暖地3~5月 ■播種方法 ●畑の一部に育苗床を作る場合 堆肥、肥料、石灰などを適宜混和し、細かく土を砕き、畝幅15cm程度の育苗床を作ります。種の間隔は、10mm位の1条すじまきにし、5mmくらい覆土し、鍬などで表面を軽く押さえて土と種をなじませます。その上に細かく砕いた堆肥やもみ殻燻炭を薄く覆い、乾きすぎや雨あたりを防ぐようにします。 草丈6,7cmの頃1.5cm間隔、10cmのころ3cm間隔くらいまで間引き、草丈15cm程度から定植可能です。発芽初期の生育がゆっくりなので特に雑草に負けないようこまめに除草などの管理をします。 ●セルトレイやペーパーポット、育苗箱などに播種する場合 トレイなどの場合は、土を詰め、くぼみをつけて播き穴とし、1穴に3粒程度まきます。篩などでまんべんなく覆土したら水をたっぷり与え、発芽まで新聞紙などで覆っておきます。適宜間引きをし2本立てにします。草丈15cm程度まで育てたます。培土は、「ガッチリくんネギ用」など専用培土が育苗期間を通じて肥料を供給しがっちりした苗に育てることができ、管理が容易です。 ■植え付け 育苗床やセルトレイの場合は、植え付け1,2時間前にたっぷり水を与え苗を抜き取りやすくしておくとよいでしょう。 ■土壌条件 軟白部をより長く育てるには、通気性、水はけ、保水性がよく、土寄せしたときに土崩れしにくい土壌であることが望まれます。土壌酸度pH5.7~7.4が適正範囲。連作障害は出にくいとされていますが、できれば1~2年、あけた方が生育がよいようです。 植え付けの準備:畑の東西に幅10~15cm程度、深さ30cm程度の溝を掘り、溝の底に完熟堆肥5リットルと元肥の化成肥料量を混和した後、間土を10cm程度盛り、20cm程度の深さにの植え溝とします。溝の北側の壁に5cmほど間隔をあけて苗をまっすぐ立て掛け、根の部分に土を3~4cmの厚さに土をかけて倒れないようにします。 藁や刈り草を根元に厚く敷き、根が乾燥するのを防ぎます。生育に合わせて、植え溝に1~2回に分けて土を戻し平らにしたら、土を株元に盛っていく土寄せを3~4回行います。土寄せは葉の分かれている部分よりやや下のあたりまでが目安で、生育が遅滞する真夏には無理に行わないようにします。土寄せと同時に追肥を行い、化成肥料の場合は、茎に直接触れないようにします。最後の土寄せ(止め土)は分かれ目よりやや上まで盛り上げて、首元を締めるようにします。 ■肥料 苦土石灰は、1平方メートルあたり150g位を全層混合。生育途中の肥切れや逆に過剰になっても、生育を妨げ、病害発生の助長、青果品質の低下につながるので、最終的な本圃のチッソ成分は平方メートルあたり、20~25g程度が目標。元肥に全チッソ量の1/3~1/2、残りを土寄せに合わせ数回に分けて追肥します。 ■収穫 最後の土寄せから夏どりで20~30日、秋どり30~40日、冬どり40日以上経過したら畝の両側を削って軟白部を傷つけないように根元まで掘り起こして収穫します。 ■料理 一本葱の用途ならば何にでも好適。

源翠

源翠

カネコ種苗株式会社

収量性、秀品率に優れ、秋冬どりに最適なF₁品種 特性 ●冷涼地9~11月収穫、中間地・暖地10~2月収穫に適する合黒系F₁品種です。 ●葉は鮮やかな濃緑色で、軟白部とのコントラストが映えます。 ●草勢が強く、軟白部の肥大性に優れ、秀品率が高いです。また、葉鞘部の充実が良いので一本重があり、収量性に優れます。 ●襟部は特に良くしまり、多肥栽培しても、襟の割れやぼけが少ないです。 ●軟腐病等の土壌病害や湿害に強く、栽培しやすい品種です。 栽培要点 ●耐病性の強い品種ですが、病害発生回避のため、高温期は多肥条件にならないように注意します。秋にかけて、気温が下がってきた頃から追肥で生育を促すようにします。

群翠

群翠

カネコ種苗株式会社

耐病性に優れ、幅広い作型に適応する黒柄系F₁ネギ 特性 ●8~11月収穫に適した黒柄系F₁ネギです。比較的低温伸長性にも優れているので、広範囲の作型に適応します。 ●やや長葉になりますが草姿は立性で作業性が良く、葉折れや倒伏も少ない品種です。 ●夏期の生育が早く、葉鞘部の伸びも良いので、軟白部分が作りやすいです。 ●多肥や連作で発生が多くなる軟腐病、白絹病に強く、また葉枯れ病等の茎葉病害にも強い品種です。 ●肥大性と伸長性に優れますが、襟しまりが良いので在圃性が高い品種です。 ●葉色は濃く、軟白部の白さが際立ち、荷姿も良い品種です。 ●一般的な黒柄品種より抽苔が遅く、また耐暑性があり、高温期でも襟部の崩れが遅いので、8月に収穫する夏ネギとして最適です。 栽培要点 ●比較的多肥を好む品種で、生育も早いので、葉鞘部の伸長・肥大に応じて計画的に追肥、土寄せ等の管理を行います。 ●黒柄系品種であるため、発芽には一般的な合黒系品種より温度を要求する性質があります。厳寒期の12~2月播種の場合、保温資材の除去を他品種より2~3日程遅らせて、発芽をそろえます。

輝光(てるひかり)

輝光(てるひかり)

渡辺農事株式会社

■特性 ・耐暑性、耐寒性に優れ、早太りの黒柄系一本太葱。 ・止め土後の伸び上りが遅く、高温時でも首割れしにくく、エリの中に土が入り込むことが少ない。 ・草姿は立性、葉長は中位、葉はしなやかなので、葉折れが少ない。 ・早太り品種としては、軟腐病に強いほうである。 ・関東平坦地の夏秋どりや秋冬どり、冷涼地の夏秋どりに適する。 ■栽培のポイント ・晩抽性品種ではないので、秋に無理に早蒔きする事は避ける。 ・比較的軟腐病に強い品種であるが、過剰な土寄せは白絹病を誘発させるので、加減する。

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