ゼロから農業を始める人は、何を・どう・なぜ作るのか

ゼロから農業を始める人は、何を・どう・なぜ作るのか

— 統計が映す新規就農の実像 ― 作目・所得・栽培方法・動機の4軸

「新規就農」と聞いて、田んぼで米をつくる姿を思い浮かべる人は多い。だが実際のデータはそのイメージと異なる。親元以外でゼロから就農した「新規参入者」を全国規模で追った調査を見ると、選ばれている作目は野菜が中心で、米は1割に満たない。さらに、稼ぎ・栽培方法・始めた動機まで含めて整理すると、いまの新規就農者の輪郭がはっきり浮かび上がる。全国農業会議所・全国新規就農相談センター「新規就農者の就農実態に関する調査結果」から、何を・どう・なぜ作るのかを4つの軸で読み解く。

ミノリス編集部

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データ編集部

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読了 約9分

出典:全国農業会議所・全国新規就農相談センター「新規就農者の就農実態に関する調査結果」(令和3・6年度) データ取得:2026-06-15
この記事の結論(コピペ用1行)

ゼロから就農した新規参入者の62%が野菜(施設32.0%・露地30.3%)を選び、米は6.3%。施設野菜は平均農業所得285万円で耕種作目の最上位、有機実践率は26.4%で親元就農者の約2倍。

キー数値

野菜を選ぶ割合 62.3% 施設32.0%+露地30.3%
水稲・麦など 6.3% 「新規就農=米」は過去
施設野菜の平均所得 285万円 耕種作目で最高
露地野菜の平均所得 164万円 最多人数だが最低水準
有機実践率 26.4% 親元就農者の約2倍

Key Findings

  • 新規参入者の約2/3が野菜農家。施設野菜32.0%+露地野菜30.3%で62.3%。水稲・麦などはわずか6.3%にとどまる。
  • 施設野菜が露地野菜を逆転して首位に。露地野菜は2016年37.1%→2024年30.3%へ低下、施設野菜は28.8%→32.0%へ上昇した。
  • 施設野菜は所得でも最上位。平均農業所得は施設野菜285万円に対し、最も人数の多い露地野菜は164万円と最低水準。
  • 有機を選ぶのは新規参入者ほど多い。有機実践率26.4%は親元就農者(13.6%)の約2倍で、全国平均(耕地の1%未満)を大きく上回る。
  • 動機は「自分で采配」「もうかるから」が上位。一方「会社勤めに向いていなかった」も16.6%→25.8%へ増え、キャリアチェンジ就農が広がっている。

1. 何を作っているか — 野菜が6割、米は1割未満

まず「販売金額が第1位の経営作目」、つまり 主力にしている作物 で新規参入者を分類したのが図1だ。最も多いのは 施設野菜(32.0%)、次いで 露地野菜(30.3%)。この2つを合わせると 野菜だけで62.3%、新規参入者のおよそ3人に2人が野菜農家ということになる。

対して 水稲・麦などは6.3%。「農業=米づくり」というイメージとは裏腹に、ゼロから始める人が主力に米を選ぶケースは少ない。果樹(20.1%)は野菜に次ぐが、これは樹を植えてから収穫まで年数がかかる作目で、近年やや存在感を増している。

新規参入者の販売金額第1位の経営作目(2024年)。野菜(施設+露地)を緑、水稲・麦などをオレンジで表示。
図1 新規参入者の販売金額第1位の経営作目(2024年)。野菜(施設+露地)を緑、水稲・麦などをオレンジで表示。

出典:全国農業会議所・全国新規就農相談センター 新規就農者の就農実態に関する調査(令和6年度)
全国新規就農相談センター 調査・統計

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補足: 同じ調査で、親元(家業)を継いだ「親元就農者」を見ると順位は逆で、果樹26.6%・水稲18.1%と伝統的な作目が上位に並ぶ。ゼロから始める人ほど、野菜・施設野菜に振り切る傾向がはっきり出ている。

2. この8年でどう動いたか — 施設野菜が首位へ

この調査は数年おきに実施されている。2016年・2021年・2024年の3回分を並べると、作目の構成が緩やかに、しかし着実に動いていることが分かる(図2)。最も目立つのは 露地野菜と施設野菜の逆転だ。露地野菜は 37.1%→33.0%→30.3%と低下を続け、施設野菜は 28.8%→31.6%→32.0%と上昇。2024年についに施設野菜が首位に立った。

水稲・麦などは 9.0%→6.3%へと低下し、「米離れ」が継続している。果樹は2021年から2024年にかけて15.8%→20.1%へ伸びた。全体として、手間をかけて高い単価を狙う作目(施設野菜・果樹)へ重心が移っている構図が読み取れる。

新規参入者の主要作目の割合推移(2016 / 2021 / 2024)。2024年に施設野菜が露地野菜を上回った。
図2 新規参入者の主要作目の割合推移(2016 / 2021 / 2024)。2024年に施設野菜が露地野菜を上回った。

出典:全国農業会議所・全国新規就農相談センター 新規就農者の就農実態に関する調査(令和3・6年度)
全国新規就農相談センター 調査・統計

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3. なぜ施設野菜に集まるのか — 所得で見える理由

施設野菜への集中を説明する手がかりが「所得」だ。図3は主要な耕種作目について、新規参入者の 平均農業所得 を並べたもの。施設野菜は285万円で耕種作目のなかで最も高く、全体平均(209万円)も大きく上回る。

対照的なのが 露地野菜の164万円。新規参入者で最も人数が多い作目でありながら、所得は最も低い水準にある。「人数は露地野菜が最多、しかし稼げるのは施設野菜」——この差が、近年の施設野菜シフトを後押ししていると考えられる。施設野菜はハウス・養液設備などの初期投資が重い一方、面積あたりの収益性が高く、天候リスクも抑えられる。少ない面積で安定して稼ぎたい新規就農者の志向と噛み合っている。

新規参入者の作目別の平均農業所得(2024年)。括弧内は中央値。畜産・酪農は少数かつ規模が大きく異なるため耕種作目に絞って表示。
図3 新規参入者の作目別の平均農業所得(2024年)。括弧内は中央値。畜産・酪農は少数かつ規模が大きく異なるため耕種作目に絞って表示。

出典:全国農業会議所・全国新規就農相談センター 新規就農者の就農実態に関する調査(令和6年度)
全国新規就農相談センター 調査・統計

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読み方のポイント: 平均値と中央値の差が大きい作目ほど、経営者ごとの ばらつき(成功・苦戦の幅)が大きい。施設野菜は平均285万円に対し中央値150万円で、上振れする経営が平均を押し上げている。新規就農の所得は就農年数が長いほど高くなる傾向もある。

4. どう作るか — 新規参入者ほど有機を選ぶ

作る品目だけでなく「作り方」にも特徴がある。図4は栽培方法を、新規参入者と親元就農者で比べたものだ。新規参入者は 有機JAS認証4.3%+認証なしの有機22.1%=26.4%が有機農業に取り組んでいる。さらに15.6%が「今後取り組みたい」と答えており、慣行(取り組む予定なし)は58.0%にとどまる。

一方、親元就農者の有機実践率は13.6%。新規参入者はその約2倍が有機に取り組んでいることになる(同じ調査・同じ基準での比較)。参考までに、全国の有機農業の取組「面積」は耕地の1%未満にとどまる。基準が異なるため単純な比較はできないが、ゼロから農業を始める人のあいだで有機が広がっていることは確かだ。背景には、食の安全・環境への関心や、規模より付加価値で勝負する経営志向がある。

栽培方法の構成比(2024年)。新規参入者 vs 親元就農者。有機実践=有機JAS認証+認証なしの有機。
図4 栽培方法の構成比(2024年)。新規参入者 vs 親元就農者。有機実践=有機JAS認証+認証なしの有機。

出典:全国農業会議所・全国新規就農相談センター 新規就農者の就農実態に関する調査(令和6年度)
全国新規就農相談センター 調査・統計

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5. なぜ農業を始めたのか — 動機の3つの変化

最後に「就農した理由」を見る(複数回答)。一貫して最も多いのは 「自ら経営の采配を振れるから」(52.8%)で、自分で事業を動かしたいという起業家的な動機が新規参入者の中心にある。「農業はやり方次第でもうかるから」も35.7%と高く、所得志向(施設野菜シフト)と整合している

3波で比べると、伸びている動機が3つある。「時間が自由だから」(24.1%→36.5%)「自然や動物が好きだから」(18.8%→29.3%)、そして 「会社勤めに向いていなかったから」(16.6%→25.8%)。働き方やライフスタイルを理由に、会社員からの キャリアチェンジとして就農する人が増えていることがうかがえる。

就農した理由(複数回答) 2016 2021 2024
自ら経営の采配を振れるから 52.3 51.6 52.8
農業が好きだから 40.4 36.4 41.8
時間が自由だから 24.1 28.3 36.5
農業はやり方次第でもうかるから 38.2 35.2 35.7
自然や動物が好きだから 18.8 20.1 29.3
会社勤めに向いていなかったから 16.6 22.1 25.8
農村の生活が好きだから 16.2 15.7 21.5
食べ物の品質や安全性に興味があったから 20.0 17.0 20.0
有機農業をやりたかったから 11.9 10.8 14.2

※単位:%。2024年は複数選択、2016・2021年は3つまで選択のため単純比較には留意。

6. 新規就農を考える人・受け入れる地域への示唆

これから就農を考える人にとって、このデータは 「先輩たちの選択の地図」として読める。多くが選んでいるのは施設野菜・露地野菜で、稼ぎという面では施設野菜が一歩抜けている。ただし施設野菜は初期投資が重く、所得のばらつきも大きい。「人気だから」ではなく、自分の資金・労力・地域条件に合うかを、所得の中央値やばらつきまで含めて見極めることが現実的だ。

受け入れる地域・JA・自治体にとっては、新規参入者が 野菜・施設・有機に寄っているという事実が、支援設計のヒントになる。ハウス整備への補助、有機の販路づくり、施設園芸の技術研修——新規参入者の実際のニーズに沿った支援ほど、定着につながりやすい。米中心の従来型支援だけでは、いまの新規就農者の多数派とはずれてしまう可能性がある。

そして「自分で采配を振りたい」「会社勤めが合わなかった」という動機の広がりは、農業が キャリアの選択肢のひとつとして定着しつつあることを示している。何を・どう・なぜ作るのか——その輪郭を正しく捉えることが、就農者にとっても、それを支える側にとっても出発点になる。

全データを表示(作目別の割合・人数・販売額・所得、作目割合の推移)

表1. 新規参入者の作目別データ(2024年・販売金額第1位の作目)

作目 割合 人数 平均販売額 (万円) 平均農業所得 (万円)
施設野菜 32.0% 477 1,210 285.3
露地野菜 30.3% 452 733 163.9
果樹 20.1% 299 599 186.1
水稲・麦等 6.3% 94 990 186.8
花き・花木 3.4% 51 726 196.1
その他畜産 3.0% 44 849 70.7
酪農 1.7% 25 4,827 430.7
その他 1.7% 25 654 222.3
その他耕種作目 1.5% 23 2,844 130.0

表2. 主要作目の割合推移(新規参入者・%)

作目 2016年度 2021年度 2024年度
露地野菜 37.1 33.0 30.3
施設野菜 28.8 31.6 32.0
果樹 15.4 15.8 20.1
水稲・麦等 9.0 7.0 6.3
花き・花木 4.1 3.1 3.4

※「新規参入者」=相続・贈与等によらず自ら独立して就農した層。2024年の集計対象は1,513人(作目不明を除く有効回答1,490人)。販売額・所得は調査時点の経営実績の平均値。

7. 出典・データ・引用について

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短文用
出典:全国農業会議所・全国新規就農相談センター「新規就農者の就農実態に関する調査結果」(令和6年度)
※ミノリス調べ(https://minorisu.com/p/grower-001-new-entrant-reality)
記事内引用用
ゼロから就農した新規参入者の主力作目は、施設野菜32.0%・露地野菜30.3%で野菜が6割超を占め、水稲・麦などは6.3%にとどまる。施設野菜は平均農業所得285万円と耕種作目で最も高く、有機実践率は26.4%(全国農業会議所・全国新規就農相談センター「新規就農者の就農実態に関する調査結果」令和6年度)。詳細はミノリスのまとめページを参照。
https://minorisu.com/p/grower-001-new-entrant-reality
グラフ画像引用用(クレジット表記)
グラフ出典:ミノリス「ゼロから農業を始める人は、何を・どう・なぜ作るのか」(https://minorisu.com/p/grower-001-new-entrant-reality)
原典:全国農業会議所・全国新規就農相談センター 新規就農者の就農実態に関する調査結果 https://www.be-farmer.jp/research/statistics/

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データ・ライセンス

本記事の原データは、一般社団法人全国農業会議所・全国新規就農相談センター「新規就農者の就農実態に関する調査結果」(令和3・6年度)に基づく。数値の著作権は同会議所に帰属し、引用にあたっては出典を明記している。

本記事のグラフ・解説テキストCC BY 4.0 でライセンスされており、出典(ミノリス + 上記原典)を明記すれば商用利用を含め自由に引用・転載できる。

データ取得日:2026年6月15日 / 最終更新:2026年6月 / 次回更新予定:次回調査公表時(同調査は数年おきに実施)