品種登録の出願件数は48年でどう変わったか

品種登録の出願件数は48年でどう変わったか

— 1978〜2025年、農水省データで読み解く育種主体の構造変化

改正種苗法(2022年4月施行)後、品種登録の出願件数は541件(2025年)まで落ち込み、ピーク年(2007年・1,533件)の約3分の1まで縮小した。農林水産省「出願・登録の動向」の48年分データから、誰が育種し、何が減ったのかを可視化する。

ミノリス編集部

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データ編集部

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出典:農林水産省 輸出・国際局 知的財産課「出願・登録の動向」 データ取得:2026-06-06
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品種登録の出願件数は2007年の1,533件をピークに2025年は541件へ ▲65%。最大の減少要因は個人育種家(1997年206件→2025年62件、▲70%)と草花類(▲78%)。海外勢のシェアは36%と底堅い。

キー数値

出願件数(2025年) 541件 ピーク(2007年)比 ▲65%
個人育種家 62件/年 1997年比 ▲70%
草花類 227件 2007年比 ▲78%
海外勢シェア 36% ほぼ横ばいで底堅い
改正種苗法 初年度 ▲35% 令和4年・前年比

Key Findings

  • 出願件数は2007年(1,533件)でピークを打ち、その後一貫して減少。2025年は541件で、ピーク比 ▲65%。
  • 改正種苗法(2022年4月施行)の影響が数値に直撃。施行年度の令和4年は前年比 ▲35%(848件 → 551件)と単年で大幅減。
  • 個人育種家の出願が最大の減少要因。1997年(206件/年)から2025年(62件/年)へ ▲70%。種苗会社(同期間 248 → 180、▲27%)よりはるかに大きい減少幅。
  • 草花類の急減が全体を押し下げている。2007年に1,035件あった草花類の出願は、2025年に227件(▲78%)。野菜・果樹は比較的横ばい。
  • 海外勢のシェアは底堅い。2025年の海外出願は195件で全体の36%。国内ピーク期(2007年の海外シェア 38%)とほぼ同水準を維持。

1. 全体トレンド:1978〜2025年の年次推移

農林水産省「出願・登録の動向」(令和8年3月31日現在)によると、品種登録の出願件数は1978年(昭和53年)の13件から始まり、2007年(平成19年)の1,533件でピークを打った後、減少局面が続いている。直近の2025年(令和7年)は541件で、48年間で7番目に少ない水準。

年度別 品種登録出願件数の推移(国内+海外)。改正種苗法施行年度(令和4年=2022年)を強調表示。
図1 年度別 品種登録出願件数の推移(国内+海外)。改正種苗法施行年度(令和4年=2022年)を強調表示。

出典:農林水産省「出願件数の推移(年度)」
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注目ポイント: 改正種苗法施行の令和4年(2022年)以降、出願件数は500件台で「定常化」している。減少が一過性ではなく、新しい水準として固まりつつあることが示唆される。

2. 業種別:誰が育種をしているか

出願者を9区分に分けると、48年間の累計38,501件のうち、最も多いのは海外育成者(海外計)の12,990件(34%)、次いで国内の種苗会社10,168件(26%)個人育種家8,404件(22%)と続く。公的機関(国・都道府県・大学)は合計4,894件で全体の13%。

主要4セグメントの年次推移。種苗会社・個人育種家・海外計・公的機関(国+都道府県+大学)。
図2 主要4セグメントの年次推移。種苗会社・個人育種家・海外計・公的機関(国+都道府県+大学)。

出典:農林水産省「業種別出願件数の推移」
doukou-20.pdf

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2-1. 個人育種家の急減

最も顕著なのが個人育種家の出願激減だ。1997年の206件をピークに、2025年は62件(▲70%)まで縮小。1990年代後半は個人育種家が全体の20%近くを占める時期もあったが、2025年は11%まで低下している。育種は長期間にわたる試験栽培と専門知識を要する作業で、改正種苗法による許諾コスト・自家増殖制限の管理負担増が、個人プレイヤーには重荷になっている可能性がある。

2-2. 海外勢の存在感は不変

海外からの出願は1980年代に急増し、1991年に248件で初めて200件台に到達。以降、2000年代には毎年300〜400件台で推移し、2007年に578件のピーク。直近は195件(2025年)と縮小傾向だが、シェアで見れば全体の36%と、ピーク期と変わらない比率を保っている。日本市場の品種登録は、最初から「国際的な舞台」だったとも言える。

3. 作物分野別:草花類の急減が全体を引っ張る

2025年の作物分野別出願件数を見ると、草花類が227件(42%)で依然として最大セグメントだが、ピーク期(2007年の1,035件)からは ▲78%。野菜(64件)、果樹(44件)、観賞樹(136件)は比較的横ばいで推移している。

主要作物分野の年次推移(2000〜2025年)。
図3 主要作物分野の年次推移(2000〜2025年)。

出典:農林水産省「出願件数の推移(年度)」
doukou-16.pdf

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解釈: 草花類は個人育種家の参入が活発な分野で、全体の出願件数推移と草花類の推移は連動性が高い。「個人育種家の減少 ≒ 草花類の減少」が日本の品種登録市場の構造を表す。

4. なぜ減ったのか:3つの仮説

農林水産省は減少の直接的理由を統計上の公式見解として示していないが、業界関係者の見方を総合すると次の3つが挙げられる。

  1. 改正種苗法の対応コスト:登録品種の海外持ち出し制限・自家増殖の許諾制度化により、育成者権者には申請後の権利管理コストが増加。個人や小規模事業者の出願インセンティブが低下した可能性。
  2. 育種人材の高齢化と新陳代謝の鈍化:個人育種家は1990年代に200件超の出願を出していた世代が中心。後継世代への移行が進んでいない。
  3. 市場成熟による「新品種ラッシュ」の終焉:草花類は1990年代後半〜2000年代に多品種展開ブームがあった。市場が成熟し、新品種投入の経済合理性が低下したとも考えられる。

5. 生産者・JAにとっての意味

出願件数の減少は、「これから新しく市場に出てくる登録品種の数」が減ることを意味する。とくに草花類の減少は、種苗会社・園芸店の新規アイテム展開に影響する可能性がある。一方、野菜・果樹は減少幅が限定的で、生産者の品種選択肢が大きく狭まる状況にはない。

ただし、登録品種の「ストック」自体は1978年からの累計31,623件が登録されており(うち存続中はその一部)、当面の品種選定で困ることはない。注視すべきは、10〜20年単位で見た新規品種供給の長期的な減速だ。

全データを表示(1978〜2025年・48年分の年次合計)
年度 国内計 海外計 合計
1978 12 1 13
1979 99 4 103
1980 163 5 168
1981 233 53 286
1982 227 28 255
1983 264 83 347
1984 288 66 354
1985 314 63 377
1986 306 82 388
1987 375 88 463
1988 441 145 586
1989 372 125 497
1990 453 170 623
1991 535 248 783
1992 573 207 780
1993 458 292 750
1994 698 285 983
1995 614 346 960
1996 701 326 1,027
1997 672 371 1,043
1998 567 311 878
1999 577 244 821
2000 626 316 942
2001 800 357 1,157
2002 637 365 1,002
2003 823 457 1,280
2004 869 468 1,337
2005 922 463 1,385
2006 816 474 1,290
2007 955 578 1,533
2008 783 463 1,246
2009 790 322 1,112
2010 640 373 1,013
2011 664 453 1,117
2012 689 473 1,162
2013 612 415 1,027
2014 572 407 979
2015 569 372 941
2016 632 356 988
2017 570 424 994
2018 562 279 841
2019 543 241 784
2020 442 298 740
2021 535 313 848
2022 377 174 551
2023 422 196 618
2024 373 215 588
2025 346 195 541
累計 25,511 12,990 38,501

6. 出典・データ・引用について

引用テンプレート(コピーしてご利用ください)

短文用
出典:農林水産省「出願・登録の動向」(令和8年3月31日現在)
※ミノリス調べ(https://minorisu.com/p/seedling-001-applications-trend)
記事内引用用
品種登録の出願件数は2007年の1,533件をピークに減少し、2025年は541件まで縮小した(農林水産省「出願・登録の動向」、令和8年3月31日現在)。詳細推移はミノリスのまとめページを参照。
https://minorisu.com/p/seedling-001-applications-trend
グラフ画像引用用(クレジット表記)
グラフ出典:ミノリス「品種登録の出願件数は48年でどう変わったか」(https://minorisu.com/p/seedling-001-applications-trend)
原典:農林水産省「出願件数の推移(年度)」 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/hinshu/doukou/etc/doukou-16.pdf

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本記事の原データは農林水産省「出願・登録の動向」に基づく。同省ウェブサイトの利用規約は公共データ利用規約(PDL 1.0)に準拠し、出典を明記すれば改変・再配布が可能。

本記事のグラフ・解説テキストは CC BY 4.0 でライセンスされており、出典(ミノリス + 上記原典URL)を明記すれば商用利用を含め自由に引用・転載できる。

データ取得日:2026年6月6日 / 最終更新:2026年6月(予定) / 次回更新予定:2027年5月(農林水産省の年次更新タイミングに合わせる)