データで見る日本の農地のいま

データで見る日本の農地のいま

— 耕地面積・荒廃農地・都道府県差をデータで読む

「耕作放棄地が増えている」とよく言われる。では実際に、日本の農地はいまどうなっているのか。農林水産省のデータを見ると、耕地面積は半世紀でピークの約3割が縮小し、いま荒廃農地は25.7万ha。その6割は森林化などで農地に戻すのが難しい状態にある。どの程度の農地が使われなくなり、それが地域でどう違うのか。耕地面積・荒廃農地の内訳・都道府県別の格差から、日本の農地のいまを読み解く。

ミノリス編集部

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データ編集部

公開

読了 約9分

出典:農林水産省「荒廃農地の現状と対策」「令和6年度の荒廃農地面積について」「耕地及び作付面積統計」 データ取得:2026-06-15
この記事の結論(コピペ用1行)

日本の耕地面積は1961年の608.6万haから2025年は423.9万haへ約3割減。荒廃農地は25.7万ha(6割が再生困難)で、荒廃農地率は長崎24.2%など中山間県で2割超、北海道0.1%の平地県とは大きな差がある。

キー数値

耕地面積(2025年) 423.9万ha ピーク(1961年)比 ▲約3割
荒廃農地(2024年度) 25.7万ha うち再生困難 62%
新規発生 2.4万ha/年 再生利用の約2.8倍
荒廃農地率 最大 長崎 24.2% 全国平均 5.6%
荒廃農地率 最小 北海道 0.1% 平地・水田地帯

Key Findings

  • 耕地は半世紀で約3割減。1961年608.6万ha→2025年423.9万ha。一方、放棄は長期で増加(耕作放棄地1990年21.7万ha→2015年42.3万ha)も、現在の客観指標「荒廃農地」は近年25〜28万haで横ばい。
  • 荒廃農地は25.7万ha、6割が再生困難。再生利用が可能なのは38%(9.8万ha)で、残り62%は森林化等で復元が難しい。
  • 荒れるスピードに解消が追いつかない。年間の新規発生2.4万haに対し、再生利用は0.8万ha(発生は再生の約2.8倍)。
  • 荒廃農地率は都道府県で大きく違う。長崎24.2%・愛媛23.9%など中山間の県は2割超、北海道0.1%・秋田0.3%など平地・水田地帯は1%未満。
  • 主因は高齢化・労働力不足と地形。所有者側は「高齢化・病気」、土地側は「山あいなど条件が悪い」が多く、中山間では鳥獣被害も重なる。

1. 農地は減り、使われない農地は増えた

まず全体像から。日本の耕地面積は、1961年(昭和36年)の608.6万haをピークに、2025年には 423.9万haまで縮小した。半世紀あまりで 約185万ha、ピークのおよそ3割が失われた計算になる。減少はピーク以降ほぼ一貫して続き、1966年に600万ha、1996年に500万haを相次いで下回った(図1上)。

減るのと裏表で増えてきたのが、使われなくなった農地だ。農家の自己申告にもとづく 耕作放棄地は、1990年の21.7万haから2015年には 42.3万haへと、25年で約2倍に増えた(図1下のオレンジ)。

ただし、これで「いまも増え続けて42万ha」と読むのは早い。耕作放棄地の調査は2015年で終了し、現在の公式指標は市町村が現地で測る 荒廃農地に切り替わった。その荒廃農地は 2019年の28.4万haから2024年は25.7万haへと、近年はほぼ横ばい(むしろ微減)で推移している(図1下のグレー)。長い目で見れば放棄は大きく増えた。一方で、客観的に測る現在の水準は25〜28万ha台で落ち着いている——これが現実だ。

(上)耕地面積の推移。1961年608.6万ha→2025年423.9万ha。(下)使われない農地の2つの指標。オレンジ=耕作放棄地(自己申告・1990〜2015年)、グレー=荒廃農地(現地調査・2019〜2024年)。測り方が違う別調査のため線はつないでいない。
図1 (上)耕地面積の推移。1961年608.6万ha→2025年423.9万ha。(下)使われない農地の2つの指標。オレンジ=耕作放棄地(自己申告・1990〜2015年)、グレー=荒廃農地(現地調査・2019〜2024年)。測り方が違う別調査のため線はつないでいない。

出典:農林水産省 耕地及び作付面積統計 / 農林業センサス / 荒廃農地調査
農林水産省 荒廃農地の現状と対策

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用語の整理: 「使われない農地」を表す言葉は3つある。耕作放棄地=農家の自己申告(センサス。2015年で終了)。荒廃農地=市町村による現地調査(客観・毎年。現在25.7万ha)。遊休農地=農地法にもとづくもので、再生利用が可能な荒廃農地とほぼ同じ。本記事の図1下は両者を並べて推移を示し(測り方が違うため線はつなげない)、次章以降は最新の荒廃農地(25.7万ha)を使う。

2. 荒廃農地25.7万ha ― 6割は「再生が難しい」

減った農地の一部は、宅地などに転用された。一方で、使われなくなって 荒れたまま残っている農地=荒廃農地も積み上がっている。2024年度(令和7年3月末)時点で、その面積は 25.7万ha。これは現在の耕地面積(423.9万ha)の およそ6%にあたる。

重要なのはその中身だ。荒廃農地のうち、再生して再び耕作できる見込みがあるのは38%(9.8万ha)にとどまる。残りの 62%(15.9万ha)は、すでに森林のようになっているなど、農地に戻すのが困難とされる。一度荒れた農地を取り戻すのは簡単ではない。

しかも、荒れるスピードに解消が追いついていない。図2の下段のとおり、年間で新たに2.4万haが発生するのに対し、再生利用されるのは0.8万ha。発生が再生の約2.8倍のペースで進んでいる。

荒廃農地25.7万haの構成(再生利用が可能38% / 困難62%)と、年間の発生・再生フロー。
図2 荒廃農地25.7万haの構成(再生利用が可能38% / 困難62%)と、年間の発生・再生フロー。

出典:農林水産省 荒廃農地の発生・解消状況に関する調査(令和6年度)
農林水産省 荒廃農地の現状と対策

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3. どこで荒れているか ― 都道府県でこれだけ違う

荒廃農地は全国に均等にあるわけではない。図3は、各都道府県の耕地に対して荒廃農地がどれだけの割合かを示した 「荒廃農地率」のランキングだ。全国平均は5.6%。これに対し、長崎(24.2%)・愛媛(23.9%)・山梨(21.9%)・香川(21.9%)といった 中山間地域の多い県では2割を超える。およそ「農地の5枚に1枚が荒れている」水準だ。

対照的に、北海道(0.1%)・秋田(0.3%)・富山(0.6%)など、広く平らな水田・畑作地帯では1%未満。同じ日本でも、農地が荒れるかどうかは「平地か中山間か」という地形に強く左右されている。

都道府県別の荒廃農地率(高い順10県・低い順3県)。点線は全国平均5.6%。東京(32.0%)は都市縁辺の放棄が中心のため除外。
図3 都道府県別の荒廃農地率(高い順10県・低い順3県)。点線は全国平均5.6%。東京(32.0%)は都市縁辺の放棄が中心のため除外。

出典:農林水産省 令和6年度の荒廃農地面積 / 令和5年耕地面積統計
農林水産省 荒廃農地の現状と対策

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読み方のポイント: 「率」は中山間の小さな県で高く出やすい。下の全データ表で 自分の県の荒廃農地率を確認できる。全国平均(5.6%)を超える県はオレンジで示した。

4. 面積で見ると、顔ぶれが変わる

同じ荒廃農地でも、「率」ではなく「面積(絶対量)」で見ると上位の顔ぶれが変わる(図4)。長崎・愛媛・長野・福島・千葉・茨城・熊本などが並ぶ。長野・熊本のように 中山間地域が広い大きな県に加え、千葉・茨城のように都市に近く、宅地転用待ちなどで放棄が進む県も入ってくる。

つまり荒廃農地には、大きく 「中山間で条件が悪く耕作をやめる」タイプと、「都市近郊で宅地などへの転換を待つあいだに荒れる」タイプの2つの顔がある。率のランキング(図3)と面積のランキング(図4)を見比べると、その違いが浮かび上がる。

都道府県別の荒廃農地面積 TOP12。色は中山間が多い県・都市近郊型・混在の区分。
図4 都道府県別の荒廃農地面積 TOP12。色は中山間が多い県・都市近郊型・混在の区分。

出典:農林水産省 令和6年度の荒廃農地面積について
農林水産省 荒廃農地の現状と対策

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5. なぜ農地は荒れるのか

市町村への調査(令和3年)によると、荒廃農地が生まれる理由は 所有者側土地側の両面にある。所有者側で最も多いのは 「高齢化・病気」、次いで 「労働力不足」。土地側では 「山あいや谷地田など自然条件が悪い」が多く、とくに中山間地域で高い。さらに中山間では 「鳥獣被害」も荒廃を後押しする。

これは前回までの記事ともつながる。担い手の高齢化が進み、条件の悪い農地から順に耕作が難しくなる——再生利用が可能な荒廃農地の 56%が中山間地域に集中しているのは、その帰結だ。そして市町村の 約7割が「荒廃農地は5年後さらに増える」と見ている。

農地は、食料供給だけでなく、水源かん養や景観・防災といった多面的な機能も担う。荒廃農地の解消・発生防止には、担い手への農地集積、放牧やそば・景観作物などによる粗放的な利用、鳥獣対策など、地域の条件に応じた組み合わせが必要になる。「どこが、なぜ荒れているか」をデータで把握することが、対策の出発点になる。

全データを表示(都道府県別 荒廃農地面積・荒廃農地率 47都道府県)

都道府県別 荒廃農地面積・荒廃農地率(令和6年度)

都道府県 荒廃農地 (ha) 荒廃農地率
北海道 1,034 0.1%
青森 4,163 2.7%
岩手 3,108 2.1%
宮城 4,821 3.7%
秋田 441 0.3%
山形 1,916 1.7%
福島 12,720 8.6%
茨城 11,634 6.8%
栃木 1,986 1.6%
群馬 9,079 12.5%
埼玉 4,024 5.2%
千葉 11,908 9.0%
東京 2,914 32.0%
神奈川 1,798 9.2%
新潟 2,377 1.4%
富山 364 0.6%
石川 7,158 15.1%
福井 678 1.7%
山梨 6,488 21.9%
長野 13,234 11.3%
岐阜 1,958 3.5%
静岡 7,306 11.0%
愛知 4,853 6.3%
三重 5,631 9.1%
滋賀 1,985 3.8%
京都 608 2.0%
大阪 355 2.9%
兵庫 1,697 2.3%
奈良 1,463 7.1%
和歌山 3,334 9.7%
鳥取 3,480 9.5%
島根 7,015 16.4%
岡山 11,424 15.6%
広島 7,047 12.2%
山口 8,235 16.0%
徳島 3,257 10.6%
香川 7,983 21.9%
愛媛 13,905 23.9%
高知 2,041 7.4%
福岡 4,292 5.2%
佐賀 8,210 14.1%
長崎 14,439 24.2%
熊本 11,526 10.0%
大分 4,994 8.5%
宮崎 3,091 4.6%
鹿児島 11,116 9.1%
沖縄 3,579 9.0%
全国 256,667 5.6%

※荒廃農地面積は令和7年3月31日現在(令和6年度調査)。荒廃農地率=荒廃農地 ÷(令和5年耕地面積+荒廃農地)×100。オレンジは全国平均(5.6%)以上。東京(32.0%)は都市縁辺の転用待ち放棄が中心で、中山間型の荒廃とは性質が異なる。

6. 出典・データ・引用について

引用テンプレート(コピーしてご利用ください)

短文用
出典:農林水産省「荒廃農地の現状と対策」「令和6年度の荒廃農地面積について」
※ミノリス調べ(https://minorisu.com/p/farmland-001-abandoned-farmland)
記事内引用用
日本の耕地面積は1961年の608.6万haから2025年の423.9万haへ約3割減少。荒廃農地は25.7万haで、うち6割は再生利用が困難。荒廃農地率は長崎24.2%・愛媛23.9%など中山間県で2割を超える一方、北海道0.1%・秋田0.3%と平地県では1%未満(農林水産省「荒廃農地の現状と対策」等)。詳細はミノリスのまとめページを参照。
https://minorisu.com/p/farmland-001-abandoned-farmland
グラフ画像引用用(クレジット表記)
グラフ出典:ミノリス「データで見る日本の農地のいま」(https://minorisu.com/p/farmland-001-abandoned-farmland)
原典:農林水産省 荒廃農地の現状と対策 https://www.maff.go.jp/j/nousin/tikei/houkiti/index.html

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本記事の原データは農林水産省「荒廃農地の現状と対策・荒廃農地面積」および「耕地及び作付面積統計」に基づく。同省ウェブサイトの利用規約は公共データ利用規約(PDL 1.0)に準拠し、出典を明記すれば改変・再配布が可能。

本記事のグラフ・解説テキストは CC BY 4.0 でライセンスされており、出典(ミノリス + 上記原典URL)を明記すれば商用利用を含め自由に引用・転載できる。

データ取得日:2026年6月15日 / 最終更新:2026年6月 / 次回更新予定:次年度の荒廃農地面積公表時(毎年12月頃)