データで見る日本の農地のいま
— 耕地面積・荒廃農地・都道府県差をデータで読む
「耕作放棄地が増えている」とよく言われる。では実際に、日本の農地はいまどうなっているのか。農林水産省のデータを見ると、耕地面積は半世紀でピークの約3割が縮小し、いま荒廃農地は25.7万ha。その6割は森林化などで農地に戻すのが難しい状態にある。どの程度の農地が使われなくなり、それが地域でどう違うのか。耕地面積・荒廃農地の内訳・都道府県別の格差から、日本の農地のいまを読み解く。
ミノリス編集部
データ編集部
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日本の耕地面積は1961年の608.6万haから2025年は423.9万haへ約3割減。荒廃農地は25.7万ha(6割が再生困難)で、荒廃農地率は長崎24.2%など中山間県で2割超、北海道0.1%の平地県とは大きな差がある。
キー数値
| 耕地面積(2025年) | 423.9万ha | ピーク(1961年)比 ▲約3割 |
| 荒廃農地(2024年度) | 25.7万ha | うち再生困難 62% |
| 新規発生 | 2.4万ha/年 | 再生利用の約2.8倍 |
| 荒廃農地率 最大 | 長崎 24.2% | 全国平均 5.6% |
| 荒廃農地率 最小 | 北海道 0.1% | 平地・水田地帯 |
Key Findings
- 耕地は半世紀で約3割減。1961年608.6万ha→2025年423.9万ha。一方、放棄は長期で増加(耕作放棄地1990年21.7万ha→2015年42.3万ha)も、現在の客観指標「荒廃農地」は近年25〜28万haで横ばい。
- 荒廃農地は25.7万ha、6割が再生困難。再生利用が可能なのは38%(9.8万ha)で、残り62%は森林化等で復元が難しい。
- 荒れるスピードに解消が追いつかない。年間の新規発生2.4万haに対し、再生利用は0.8万ha(発生は再生の約2.8倍)。
- 荒廃農地率は都道府県で大きく違う。長崎24.2%・愛媛23.9%など中山間の県は2割超、北海道0.1%・秋田0.3%など平地・水田地帯は1%未満。
- 主因は高齢化・労働力不足と地形。所有者側は「高齢化・病気」、土地側は「山あいなど条件が悪い」が多く、中山間では鳥獣被害も重なる。
1. 農地は減り、使われない農地は増えた
まず全体像から。日本の耕地面積は、1961年(昭和36年)の608.6万haをピークに、2025年には 423.9万haまで縮小した。半世紀あまりで 約185万ha、ピークのおよそ3割が失われた計算になる。減少はピーク以降ほぼ一貫して続き、1966年に600万ha、1996年に500万haを相次いで下回った(図1上)。
減るのと裏表で増えてきたのが、使われなくなった農地だ。農家の自己申告にもとづく 耕作放棄地は、1990年の21.7万haから2015年には 42.3万haへと、25年で約2倍に増えた(図1下のオレンジ)。
ただし、これで「いまも増え続けて42万ha」と読むのは早い。耕作放棄地の調査は2015年で終了し、現在の公式指標は市町村が現地で測る 荒廃農地に切り替わった。その荒廃農地は 2019年の28.4万haから2024年は25.7万haへと、近年はほぼ横ばい(むしろ微減)で推移している(図1下のグレー)。長い目で見れば放棄は大きく増えた。一方で、客観的に測る現在の水準は25〜28万ha台で落ち着いている——これが現実だ。
出典:農林水産省 耕地及び作付面積統計 / 農林業センサス / 荒廃農地調査
農林水産省 荒廃農地の現状と対策
2. 荒廃農地25.7万ha ― 6割は「再生が難しい」
減った農地の一部は、宅地などに転用された。一方で、使われなくなって 荒れたまま残っている農地=荒廃農地も積み上がっている。2024年度(令和7年3月末)時点で、その面積は 25.7万ha。これは現在の耕地面積(423.9万ha)の およそ6%にあたる。
重要なのはその中身だ。荒廃農地のうち、再生して再び耕作できる見込みがあるのは38%(9.8万ha)にとどまる。残りの 62%(15.9万ha)は、すでに森林のようになっているなど、農地に戻すのが困難とされる。一度荒れた農地を取り戻すのは簡単ではない。
しかも、荒れるスピードに解消が追いついていない。図2の下段のとおり、年間で新たに2.4万haが発生するのに対し、再生利用されるのは0.8万ha。発生が再生の約2.8倍のペースで進んでいる。
出典:農林水産省 荒廃農地の発生・解消状況に関する調査(令和6年度)
農林水産省 荒廃農地の現状と対策
3. どこで荒れているか ― 都道府県でこれだけ違う
荒廃農地は全国に均等にあるわけではない。図3は、各都道府県の耕地に対して荒廃農地がどれだけの割合かを示した 「荒廃農地率」のランキングだ。全国平均は5.6%。これに対し、長崎(24.2%)・愛媛(23.9%)・山梨(21.9%)・香川(21.9%)といった 中山間地域の多い県では2割を超える。およそ「農地の5枚に1枚が荒れている」水準だ。
対照的に、北海道(0.1%)・秋田(0.3%)・富山(0.6%)など、広く平らな水田・畑作地帯では1%未満。同じ日本でも、農地が荒れるかどうかは「平地か中山間か」という地形に強く左右されている。
出典:農林水産省 令和6年度の荒廃農地面積 / 令和5年耕地面積統計
農林水産省 荒廃農地の現状と対策
4. 面積で見ると、顔ぶれが変わる
同じ荒廃農地でも、「率」ではなく「面積(絶対量)」で見ると上位の顔ぶれが変わる(図4)。長崎・愛媛・長野・福島・千葉・茨城・熊本などが並ぶ。長野・熊本のように 中山間地域が広い大きな県に加え、千葉・茨城のように都市に近く、宅地転用待ちなどで放棄が進む県も入ってくる。
つまり荒廃農地には、大きく 「中山間で条件が悪く耕作をやめる」タイプと、「都市近郊で宅地などへの転換を待つあいだに荒れる」タイプの2つの顔がある。率のランキング(図3)と面積のランキング(図4)を見比べると、その違いが浮かび上がる。
出典:農林水産省 令和6年度の荒廃農地面積について
農林水産省 荒廃農地の現状と対策
5. なぜ農地は荒れるのか
市町村への調査(令和3年)によると、荒廃農地が生まれる理由は 所有者側と 土地側の両面にある。所有者側で最も多いのは 「高齢化・病気」、次いで 「労働力不足」。土地側では 「山あいや谷地田など自然条件が悪い」が多く、とくに中山間地域で高い。さらに中山間では 「鳥獣被害」も荒廃を後押しする。
これは前回までの記事ともつながる。担い手の高齢化が進み、条件の悪い農地から順に耕作が難しくなる——再生利用が可能な荒廃農地の 56%が中山間地域に集中しているのは、その帰結だ。そして市町村の 約7割が「荒廃農地は5年後さらに増える」と見ている。
農地は、食料供給だけでなく、水源かん養や景観・防災といった多面的な機能も担う。荒廃農地の解消・発生防止には、担い手への農地集積、放牧やそば・景観作物などによる粗放的な利用、鳥獣対策など、地域の条件に応じた組み合わせが必要になる。「どこが、なぜ荒れているか」をデータで把握することが、対策の出発点になる。
全データを表示(都道府県別 荒廃農地面積・荒廃農地率 47都道府県)
都道府県別 荒廃農地面積・荒廃農地率(令和6年度)
| 都道府県 | 荒廃農地 (ha) | 荒廃農地率 |
|---|---|---|
| 北海道 | 1,034 | 0.1% |
| 青森 | 4,163 | 2.7% |
| 岩手 | 3,108 | 2.1% |
| 宮城 | 4,821 | 3.7% |
| 秋田 | 441 | 0.3% |
| 山形 | 1,916 | 1.7% |
| 福島 | 12,720 | 8.6% |
| 茨城 | 11,634 | 6.8% |
| 栃木 | 1,986 | 1.6% |
| 群馬 | 9,079 | 12.5% |
| 埼玉 | 4,024 | 5.2% |
| 千葉 | 11,908 | 9.0% |
| 東京 | 2,914 | 32.0% |
| 神奈川 | 1,798 | 9.2% |
| 新潟 | 2,377 | 1.4% |
| 富山 | 364 | 0.6% |
| 石川 | 7,158 | 15.1% |
| 福井 | 678 | 1.7% |
| 山梨 | 6,488 | 21.9% |
| 長野 | 13,234 | 11.3% |
| 岐阜 | 1,958 | 3.5% |
| 静岡 | 7,306 | 11.0% |
| 愛知 | 4,853 | 6.3% |
| 三重 | 5,631 | 9.1% |
| 滋賀 | 1,985 | 3.8% |
| 京都 | 608 | 2.0% |
| 大阪 | 355 | 2.9% |
| 兵庫 | 1,697 | 2.3% |
| 奈良 | 1,463 | 7.1% |
| 和歌山 | 3,334 | 9.7% |
| 鳥取 | 3,480 | 9.5% |
| 島根 | 7,015 | 16.4% |
| 岡山 | 11,424 | 15.6% |
| 広島 | 7,047 | 12.2% |
| 山口 | 8,235 | 16.0% |
| 徳島 | 3,257 | 10.6% |
| 香川 | 7,983 | 21.9% |
| 愛媛 | 13,905 | 23.9% |
| 高知 | 2,041 | 7.4% |
| 福岡 | 4,292 | 5.2% |
| 佐賀 | 8,210 | 14.1% |
| 長崎 | 14,439 | 24.2% |
| 熊本 | 11,526 | 10.0% |
| 大分 | 4,994 | 8.5% |
| 宮崎 | 3,091 | 4.6% |
| 鹿児島 | 11,116 | 9.1% |
| 沖縄 | 3,579 | 9.0% |
| 全国 | 256,667 | 5.6% |
※荒廃農地面積は令和7年3月31日現在(令和6年度調査)。荒廃農地率=荒廃農地 ÷(令和5年耕地面積+荒廃農地)×100。オレンジは全国平均(5.6%)以上。東京(32.0%)は都市縁辺の転用待ち放棄が中心で、中山間型の荒廃とは性質が異なる。
6. 出典・データ・引用について
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出典:農林水産省「荒廃農地の現状と対策」「令和6年度の荒廃農地面積について」 ※ミノリス調べ(https://minorisu.com/p/farmland-001-abandoned-farmland)
日本の耕地面積は1961年の608.6万haから2025年の423.9万haへ約3割減少。荒廃農地は25.7万haで、うち6割は再生利用が困難。荒廃農地率は長崎24.2%・愛媛23.9%など中山間県で2割を超える一方、北海道0.1%・秋田0.3%と平地県では1%未満(農林水産省「荒廃農地の現状と対策」等)。詳細はミノリスのまとめページを参照。 https://minorisu.com/p/farmland-001-abandoned-farmland
グラフ出典:ミノリス「データで見る日本の農地のいま」(https://minorisu.com/p/farmland-001-abandoned-farmland) 原典:農林水産省 荒廃農地の現状と対策 https://www.maff.go.jp/j/nousin/tikei/houkiti/index.html
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データ・ライセンス
本記事の原データは農林水産省「荒廃農地の現状と対策・荒廃農地面積」および「耕地及び作付面積統計」に基づく。同省ウェブサイトの利用規約は公共データ利用規約(PDL 1.0)に準拠し、出典を明記すれば改変・再配布が可能。
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データ取得日:2026年6月15日 / 最終更新:2026年6月 / 次回更新予定:次年度の荒廃農地面積公表時(毎年12月頃)