施設園芸は「減って、大きくなる」

施設園芸は「減って、大きくなる」

— 面積は縮小、でも大規模ハウスだけは増えている

「耕作放棄地が増える」「農家が減る」——農業の縮小はよく語られる。施設園芸(ハウス・温室)も、面積・担い手ともに長期的に減ってきた。だが規模別に分けてみると、そう単純ではない。小〜中規模の施設がすべて減るなかで、1ha以上の大規模施設だけは増えている。背景には、経営費の約3割を占める光熱動力費と近年の燃料高騰、そして環境制御など施設の高度化がある。数を減らしながら大きく・濃くなっていく施設園芸のいまを、農林水産省のデータから読み解く。

ミノリス編集部

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データ編集部

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読了 約9分

出典:農林水産省「施設園芸をめぐる情勢(令和8年5月)」(園芸用施設の設置等の状況 / 農林業センサス) データ取得:2026-07-03
この記事の結論(コピペ用1行)

施設園芸は面積・担い手ともに減少(面積は2010→2025年で▲26%、農家は188→128千経営体)。だが規模別では1ha以上の大規模施設だけが増加(+33%)。経営費の約3割を光熱動力費が占める施設は燃料高騰の淘汰圧が強く、大規模化と高度化が進む二極化が起きている。

キー数値

施設面積(2025年) 30,409ha 2010年比 ▲26%
1ha以上の施設面積 +33% 唯一増えた規模帯
施設農家数 188→128千 経営体(2010→2025)
光熱動力費の割合 経営費の約3割 露地は約1%
複合環境制御装置 温室の3.6% 高度化はこれから

Key Findings

  • 施設面積は減り続けている。農林業センサスで2010年41,312ha→2025年30,409ha(▲26%)。別統計でも1999年の53,516haをピークに2024年37,278haへ。
  • 担い手も減少。施設農家は188→128千経営体(2010→2025)。1戸当たり面積は約20aで横ばいで、規模拡大ではなく戸数減が面積減の主因。
  • だが1ha以上の大規模施設だけは増加。5,915→7,896ha(+33%)。小〜中規模がすべて減るなか唯一伸び、面積が大規模層に集約している。
  • 背景に資材・燃料高騰。施設は経営費の約3割が光熱動力費(露地は約1%)。A重油は2020年5月66.8円/L→2026年3月91.7円/L(+37%)と高止まり。
  • 高度化はこれから。環境制御装置を備えた温室は複合環境制御3.6%・養液栽培4.2%とまだ少数。加温は43.3%、完全人工光型植物工場は21ha。

1. 施設面積も、担い手も減っている

まず全体像から。施設園芸の面積は長期的に縮小してきた。農林業センサスでみると、施設設置面積は 2010年の41,312haから2025年は30,409haへ、15年で▲26%。別の統計(園芸用施設の設置等の状況)でも、設置実面積は 1999年(平成11年)の53,516haをピークに、2024年は37,278haまで減っている。

担い手の減少も著しい。施設園芸を営む農家は 2010年の18.8万経営体から2025年は12.8万経営体へ。しかも1戸当たりの施設面積は 約20aでほぼ変わっていない。つまり、1戸が規模を広げたのではなく、施設をやめる農家が増えたことが面積減の主因だ。

施設設置面積の推移(農林業センサス)。2010→2025年で▲26%。担い手も188→128千経営体へ。
図1 施設設置面積の推移(農林業センサス)。2010→2025年で▲26%。担い手も188→128千経営体へ。

出典:農林水産省 施設園芸をめぐる情勢(令和8年5月)/ 農林業センサス
農林水産省 施設園芸をめぐる情勢

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2. でも「大規模施設だけ」は増えている

ところが、規模別に分けると意外な姿が見えてくる。図2は規模帯ごとの施設面積を2010年と2025年で比べたものだ。10a未満から50a〜1haまで、小〜中規模はすべて減少している(▲27〜▲40%)。ところが 1ha以上だけは5,915ha→7,896haへ+33%と、唯一増えている。

全体は縮んでいるのに、大規模施設だけが伸びる——面積が大規模層に集約する「二極化」が進んでいる。少ない担い手で量を確保するために、規模の大きい経営に施設が集まってきている、という構図だ。

規模別の施設面積(2010→2025年)。小〜中規模はすべて減少、1ha以上のみ+33%と増加。
図2 規模別の施設面積(2010→2025年)。小〜中規模はすべて減少、1ha以上のみ+33%と増加。

出典:農林水産省 施設園芸をめぐる情勢(令和8年5月)/ 農林業センサス
農林水産省 施設園芸をめぐる情勢

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3. なぜ小さな施設が減るのか ― 燃料コストの重さ

なぜ小〜中規模の施設が減るのか。大きな要因のひとつが コスト構造だ。施設園芸はハウスを暖める燃料を大量に使うため、経営費に占める光熱動力費の割合が高い。図3のとおり、施設温州ミカンで36%、施設ピーマン・施設ばらで28%——経営費の約3割が光熱動力費だ。露地ピーマンの約1%とは桁が違う。

そこに近年の燃料高騰が重なった。施設園芸で使う A重油の価格は、2020年5月の66.8円/Lから2026年3月には91.7円/Lへ(+37%)。ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の影響もあり、高い水準で推移している。以前の資材コストの記事でも、燃料は2020年比+30%で高止まりしていた。

コスト高を販売価格に十分に転嫁できなければ、規模の小さい経営ほど続けるのが難しくなる。燃料高は、小規模施設の撤退を後押しする圧力として働いている。

農業経営費に占める動力光熱費の割合。施設作は約3割、露地は約1%。燃油(A重油)価格も高止まり。
図3 農業経営費に占める動力光熱費の割合。施設作は約3割、露地は約1%。燃油(A重油)価格も高止まり。

出典:農林水産省 施設園芸をめぐる情勢(令和8年5月)/ 農業物価統計調査
農林水産省 施設園芸をめぐる情勢

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4. 残って伸びる施設は「大きく・濃く」なる

残って伸びているのは、規模が大きく生産性の高い施設だ。ただし「高度化」の中身は、まだ全体の一部にとどまる。図4は温室(37,278ha)のうち、各装置を備えた面積の割合だ。加温設備は43.3%と普及しているが、複合的な環境制御装置を備えた温室は3.6%、養液栽培施設は4.2%にすぎない。太陽光を使わない 完全人工光型の植物工場に至っては、全国で21ha(推計)だ。

つまり、環境をきめ細かく制御する高度な施設は これから広がる段階にある。国も「次世代施設園芸拠点」として、①高度な環境制御による生産性向上、②地域エネルギー活用による化石燃料依存からの脱却、③大規模化と集積によるコスト低減を進めている。大規模化と高度化は、燃料高という逆風のなかで進む「守りと攻め」の両輪だ。

温室(37,278ha)に占める高度化装置の割合(2024年)。加温43.3%、複合環境制御3.6%、養液栽培4.2%。
図4 温室(37,278ha)に占める高度化装置の割合(2024年)。加温43.3%、複合環境制御3.6%、養液栽培4.2%。

出典:農林水産省 施設園芸をめぐる情勢(令和8年5月)/ 園芸用施設の設置等の状況(令和6年)
農林水産省 施設園芸をめぐる情勢

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5. 生産者にとっての意味

この20年が示すのは、施設園芸が 「数を減らしながら、大きく・濃くなっていく」方向にあることだ。面積も担い手も減るが、残る施設は大規模化し、環境制御など生産性を高める投資が進む。

燃料高が続くほど、①規模を生かした省エネ・環境制御への投資、②燃料に依存しない熱源(地域エネルギー・ヒートポンプ等)の活用、③販売価格への転嫁や契約取引が、経営を分ける。一方で、小規模でも周年・高付加価値の品目で生き残る道もある。二極化は「大きくなければ生き残れない」という単純な話ではない。

まず、自分の施設のコスト構造(とくに燃料費の比率)をデータで把握することが、次の投資判断の出発点になる。何にいくらかかっているかが見えて初めて、規模を追うのか、高付加価値を追うのかを選べる。

全データを表示(規模別の施設面積・温室の高度化装置)

表1. 規模別の施設設置面積の推移(ha・農林業センサス)

規模 2010年 2015年 2020年 2025年
10a未満 2,249 2,207 1,763 1,632
10〜30a 11,977 9,754 8,123 7,554
30〜50a 10,692 8,564 7,110 6,375
50a〜1ha 10,479 8,743 7,904 6,952
1ha以上 5,915 5,917 7,896 7,896
合計 41,312 35,185 32,796 30,409

表2. 温室の高度化装置の設置状況(2024年・温室37,278ha中)

装置・区分 面積(ha) 温室全体に占める割合
加温設備 16,162 43.3%
炭酸ガス発生装置 2,379 6.4%
養液栽培施設 1,557 4.2%
複合環境制御装置 1,397 3.6%
完全人工光型植物工場 21

※規模別面積は農林業センサス(2010・2015年は販売農家数ベース、一部組替集計)。温室の高度化は「園芸用施設の設置等の状況(令和6年)」。植物工場21haは「植物工場全国実態調査・優良事例調査(R8.3)」推計値。別統計の設置状況調査では施設設置実面積は1999年の53,516haをピークに2024年37,278haへ減少。

6. 出典・データ・引用について

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短文用
出典:農林水産省「施設園芸をめぐる情勢(令和8年5月)」(園芸用施設の設置等の状況 / 農林業センサス)
※ミノリス調べ(https://minorisu.com/p/facility-001-greenhouse-consolidation)
記事内引用用
施設園芸の面積は2010→2025年で▲26%、農家は188→128千経営体へ減少。だが規模別では1ha以上の大規模施設だけが+33%と増加した。施設は経営費の約3割を光熱動力費が占め、A重油は2020年比で大きく上昇。大規模化と高度化が進む二極化が起きている(農林水産省「施設園芸をめぐる情勢」令和8年5月)。詳細はミノリスのまとめページを参照。
https://minorisu.com/p/facility-001-greenhouse-consolidation
グラフ画像引用用(クレジット表記)
グラフ出典:ミノリス「施設園芸は『減って、大きくなる』」(https://minorisu.com/p/facility-001-greenhouse-consolidation)
原典:農林水産省 施設園芸をめぐる情勢(令和8年5月) https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/

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本記事の原データは農林水産省「施設園芸をめぐる情勢(令和8年5月)」(園芸用施設の設置等の状況・農林業センサス・農業物価統計調査)に基づく。同省ウェブサイトの利用規約に従い、出典を明記すれば利用できる。

本記事のグラフ・解説テキストは CC BY 4.0 でライセンスされており、出典(ミノリス + 上記原典URL)を明記すれば商用利用を含め自由に引用・転載できる。

データ取得日:2026年7月3日 / 最終更新:2026年7月 / 次回更新予定:農林水産省の資料更新に合わせる