根こぶ病耐性チンゲンサイの品種一覧

タグ名: 根こぶ病耐性チンゲンサイ

病害耐性 • 6品種で使用中

根こぶ病耐性について

根こぶ病耐性チンゲンサイ

根こぶ病とは

根こぶ病は、原生生物 Plasmodiophora brassicae によって引き起こされるアブラナ科作物の重要土壌病害です。チンゲンサイを含むアブラナ科の葉菜類全般が感染対象であり、感染すると根に大小のこぶ(腫瘤)が形成されます。こぶが発達すると根の水分・養分吸収機能が著しく低下し、地上部では葉のしおれ、黄変、生育不良といった症状が現れます。重症の場合は株全体が枯死に至ることもあり、収穫がほぼ不可能になるケースもあります。

根こぶ病菌は酸性土壌(pH6.0以下)で活動が活発になり、土壌水分の多い環境で遊走子が盛んに活動するため、排水不良の圃場では被害が拡大しやすい傾向があります。発病適温は20〜25℃前後とされており、チンゲンサイの主要な栽培時期である春〜秋の気温帯と重なることが、この病害の厄介な点です。

まず押さえておきたいのが、根こぶ病菌の休眠胞子は土壌中で10年以上生存するとされている点です。一度汚染された圃場では、短期間の輪作や土壌消毒だけでは菌密度を十分に下げることが難しく、長期にわたって被害が継続するリスクがあります。チンゲンサイは周年栽培で連作されるケースが多いため、根こぶ病の被害を受けやすい品目の一つです。

根こぶ病耐性の仕組み

チンゲンサイにおける根こぶ病耐性は、植物が持つ耐病性遺伝子によって制御されています。耐性品種は根こぶ病菌の感染に対して抵抗性を示し、こぶの形成を抑制または軽減することで、正常な根の機能を維持します。種苗メーカーのカタログでは「根こぶ病耐病性」「CR」「根こぶ病に強い」などの表記で耐性の有無が示されています。

根こぶ病菌にはレース(病原型)が存在し、日本国内でも複数のレースが確認されています。品種の耐性がどのレースに対応しているかは品種ごとに異なるため、ある品種が特定のレースに対しては高い耐性を示しても、別のレースが優勢な圃場では十分な効果を発揮しない場合があります。

意外と知られていないのですが、耐性品種であっても土壌中の菌密度がきわめて高い条件下では発病することがあります。耐性とは「発病しない」ことを保証するものではなく、「発病しにくい」特性を意味します。耐性品種の導入と同時に、土壌環境の改善を並行して進めることが、安定した防除効果を得るための基本的な考え方です。

また、長期にわたって同一の耐性品種を連作した場合、耐性を打破する新たなレースが選抜・増殖するリスクも指摘されています。異なる耐病性遺伝子を持つ品種をローテーションで使い分ける「品種ローテーション」の考え方は、チンゲンサイにおいても有効とされています。

歴史と豆知識

根こぶ病は世界各地のアブラナ科作物栽培地域で古くから知られた病害であり、ヨーロッパでは中世から記録が残されています。日本では明治期に発生が報告され、以降ハクサイやキャベツを中心に甚大な被害をもたらしてきました。

チンゲンサイの根こぶ病耐性品種の開発は、ハクサイやキャベツに比べるとやや遅れて進められてきました。これは、チンゲンサイがもともと日本市場で本格的に普及し始めたのが1970年代以降と比較的新しく、育種プログラムの蓄積がハクサイやキャベツほど豊富でなかったことが背景にあります。しかし、近年はチンゲンサイの栽培面積の拡大と連作障害の深刻化に伴い、各種苗メーカーが根こぶ病耐性を備えたチンゲンサイ品種の育種に注力するようになっています。

これ、実はチンゲンサイ栽培でかなり重要なポイントです。チンゲンサイは栽培期間が短く(播種から収穫まで40〜60日程度)、同一圃場で年に何作も連作されることが一般的です。この連作体系が根こぶ病菌の蓄積を助長しやすく、一度発生するとその後の栽培に長期的な影響を及ぼします。耐性品種の登場は、連作を前提としたチンゲンサイ栽培体系において非常に大きな意義を持っています。

なお、根こぶ病菌は種子伝染ではなく、もっぱら土壌伝染で広がります。汚染土壌が付着した農機具やセルトレイ、長靴などを介して病原菌が健全圃場に持ち込まれるケースも少なくないため、機材や育苗資材の衛生管理も予防上の重要なポイントです。

根こぶ病耐性の限界と注意点

根こぶ病耐性品種を導入しても、それだけで完全に根こぶ病を防除できるわけではありません。いくつかの注意すべき点があります。

レースの多様性への対応が重要です。栽培地域に存在する根こぶ病菌のレースが、導入品種の耐性遺伝子に対応していない場合、期待した防除効果が得られないことがあります。圃場の病歴や地域の発生情報を踏まえた品種選定が必要です。

土壌環境の改善なしには十分な効果を得にくいという点も見落とせません。酸性で排水不良の土壌条件が続いていると、耐性品種であっても発病リスクが高まります。土壌pH矯正と排水改善は、耐性品種の効果を最大化するための必須条件といえます。

耐性品種の連作による耐性崩壊のリスクにも注意が必要です。チンゲンサイのように年間多作で回転が早い品目では、同一品種の連続使用が短期間で積み重なりやすく、レース変異を促す可能性があります。可能であれば、異なる耐病性遺伝子を持つ品種を交互に使う工夫が望ましいとされています。

さらに、根こぶ病耐性を持つ品種は、品種によっては耐暑性や他の病害への耐性が限定的な場合があります。耐病性だけでなく、草姿、生育速度、食味、外観などの総合的な特性を確認したうえで品種を選定することが重要です。

防除のポイント

根こぶ病の防除は、耐性品種の利用を軸としつつ、土壌管理・耕種的防除・化学的防除を組み合わせた総合的なアプローチが効果的です。

土壌pH矯正は最も基本的な対策の一つです。根こぶ病菌は酸性条件で活動が活発になるため、石灰資材(苦土石灰、消石灰、炭酸カルシウムなど)を施用して土壌pHを7.0〜7.2程度に矯正することで、発病を抑制する効果が期待できます。ただし、石灰の過剰施用は微量要素欠乏の原因になるため、土壌診断に基づいた適量の施用が重要です。

排水管理の改善も有効な対策です。根こぶ病菌の遊走子は土壌水分中を移動して根に到達するため、圃場の排水性を高めることで感染リスクを低減できます。高畝栽培や暗渠排水の整備が具体的な手段として挙げられます。

輪作はアブラナ科以外の作物(イネ科、マメ科、ユリ科など)と組み合わせることで、土壌中の菌密度を低下させる効果が見込めます。ただし、チンゲンサイの連作体系では輪作の導入が難しい場合もあり、施設栽培では圃場のローテーションが制約されるケースも少なくありません。その場合は、土壌消毒との併用が現実的な選択肢となります。

化学的防除としては、フルスルファミド剤などの土壌処理剤が利用されています。定植前の施用が基本であり、発病後の治療効果は期待できません。

ここからが実際の栽培で差がつくところです。チンゲンサイのような短期間作物では、次作までの間隔が短いため、前作での発病状況を次作の防除計画に素早く反映させることが重要です。発病が確認された圃場では、次作で耐性品種への切り替えと土壌pH矯正を同時に実施するなど、迅速な対応が被害拡大の防止につながります。

※農薬の使用にあたっては、必ず最新の農薬登録情報を確認し、ラベルの記載内容に従ってください。

品種選びのコツ

根こぶ病耐性チンゲンサイの品種選びでは、以下のポイントを確認することが重要です。

  • 耐性のレベル: 同じ「根こぶ病耐性」と表記されていても、品種によって耐性の程度は異なる。種苗メーカーの試験データや地域の試験場での比較結果を参考にする
  • 対応レース: 品種がどのレースに耐性を持つかを確認する。栽培地域で優勢なレースの情報がわかれば、対応品種の選定に役立つ
  • 栽培適期との適合: 根こぶ病耐性品種が自分の作型(春まき、秋まき、周年栽培)に適合するかを確認する。耐暑性や晩抽性など、他の栽培特性も合わせてチェックする
  • 草姿と外観: 根こぶ病耐性を持つことに加えて、葉色・葉柄の太さ・草丈などの外観が市場の求める品質基準に合致するかを確認する
  • 食味: チンゲンサイは炒め物やスープ、煮物など幅広い調理法で使われるため、葉柄のシャキシャキ感や葉身の柔らかさなど、食味面の特性も品種選びの重要な要素となる

産地によって事情が異なるので一概には言えませんが、根こぶ病常発圃場では耐性品種の導入が生産安定の基盤になります。一方で、発生歴のない圃場では、無理に耐性品種を選ぶよりも、食味や草姿に優れた品種を選定し、土壌管理による予防に注力する方が合理的な場合もあります。

まとめ

根こぶ病は、チンゲンサイを含むアブラナ科作物にとって厄介な土壌病害であり、休眠胞子の長期残存性と連作体系への影響が大きな課題です。耐性品種の導入は有効な防除手段の一つですが、レースの多様性や土壌環境条件によって効果が変動する可能性があるため、品種の耐病性だけに頼らない総合的な防除体系の構築が重要です。

品種選びにあたっては、耐性のレベルと対応レースに加え、栽培適期への適合性・草姿・食味を総合的に検討することがポイントです。土壌pH管理、排水改善、輪作(可能な範囲で)、適期の薬剤防除を組み合わせることで、安定したチンゲンサイ生産につなげることができます。

タグ情報

基本情報

タグ名
根こぶ病耐性チンゲンサイ
種別
病害耐性

使用状況

関連品種数
6品種
関連作物数
1作物
関連メーカー数
4社

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統計情報

6
関連品種数
1
関連作物数
4
関連メーカー数
0
関連農業資材数

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種別 病害耐性