しみ腐病耐性ニンジンの品種一覧
タグ名: しみ腐病耐性ニンジン
病害耐性 • 9品種で使用中
しみ腐病耐性について
しみ腐病耐性ニンジン
しみ腐病とは
しみ腐病は、糸状菌(Pythium 属菌)によって引き起こされるニンジンの重要病害です。Pythium属菌は卵菌類に分類され、一般的なカビとは分類学上異なりますが、防除の考え方はカビ病に準じた対策が基本となります。
主な症状としては、根部の表面に水浸状のくぼんだ病斑が現れ、進行すると内部に向かって褐変・軟化が広がります。病斑部分はやや陥没し、表面がしみのように見えることが病名の由来です。地上部には目立った症状が出にくいため、収穫時に初めて被害に気づくケースが少なくありません。
感染が進行した場合、根部の商品価値は著しく低下します。特に青果用ニンジンでは外観品質が出荷の可否を左右するため、わずかな病斑であっても規格外となることがあります。加工用であっても、軟化が進んだ部分は除去が必要となり、歩留まりの低下につながります。
しみ腐病は高温多湿の条件で発生しやすく、特に夏まき秋冬どり作型で被害が目立つ傾向があります。排水不良の圃場や、連作を続けている圃場では発生リスクが高まります。梅雨明け後の高温期に播種する作型では、土壌水分と地温の管理が重要なポイントになります。
しみ腐病耐性の区分
ニンジンにおけるしみ腐病耐性は、品種によって程度が異なります。種苗メーカーの品種カタログでは、「しみ腐病に強い」「しみ腐病耐病性」などの表記で耐性の有無が示されていますが、トマトのTYLCV耐病性のようにHR(高度耐病性)・IR(中程度耐病性)の国際基準で明確に区分されているケースは多くありません。
品種選びで見落としがちなのが、この耐病性表記の幅です。「しみ腐病に強い」と記載されていても、その強さの程度は品種ごとに異なり、圃場条件や気象条件によって効果に差が出ることがあります。一部の品種では圃場試験に基づいた耐病性評価データが公開されていますが、すべてのメーカーが統一基準で評価しているわけではないのが現状です。
Pythium属菌には複数の種が存在し、ニンジンのしみ腐病を引き起こす菌種も単一ではありません。耐病性品種が対象としている菌種と、実際に圃場で問題になっている菌種が一致しているかどうかを確認することが重要です。産地によって優勢な菌種が異なる可能性があるため、地域の病害発生情報を参考にすることが精度の高い品種選びにつながります。
意外と知られていないのですが、しみ腐病菌は土壌中に遊走子という運動性を持つ胞子を放出し、土壌水分を介して移動・感染します。このため、圃場内でも排水の悪い場所に集中的に発生するパターンが見られます。耐病性の評価は圃場全体の平均的な発病程度で行われることが多いため、排水条件の偏りが大きい圃場では、品種の耐病性だけでは対処しきれないケースがあります。
歴史と豆知識
ニンジンのしみ腐病は、国内のニンジン産地で古くから発生が報告されている病害です。特に、温暖な気候の西日本の産地や、夏場に高温多湿となる関東以西の平坦地では、経済的な被害が大きい病害として認識されてきました。
日本におけるニンジン育種では、従来は根色(カロテン含量)、根形の揃い、抽苔の遅さ(晩抽性)が主要な選抜基準でした。しみ腐病耐性が品種改良の重要な目標として位置づけられるようになったのは、連作の増加や気候変動による高温多湿化が進んだ比較的近年のことです。
近年の品種開発では、しみ腐病耐性と外観品質・食味を両立した品種が複数登場しています。かつては「耐病性品種は根形や食味が劣る」という印象を持つ生産者もいましたが、育種技術の進歩により、耐病性と商品性を高い水準で兼ね備えた品種が増えてきています。
豆知識として、しみ腐病菌の仲間であるPythium属菌は、ニンジン以外にもダイコンやゴボウなど多くの根菜類に病害を引き起こすことが知られています。このため、根菜類同士の連作はしみ腐病のリスクを高める要因の一つです。また、Pythium属菌の卵胞子は土壌中で長期間生存する能力を持っており、一度発生した圃場では翌年以降もリスクが持続します。
しみ腐病耐性の限界と注意点
しみ腐病耐性品種を導入しても、それだけで完全にしみ腐病を防げるわけではありません。以下の点に注意が必要です。
土壌中の菌密度が高い条件下では、耐病性品種であっても発病することがあります。特に連作を続けている圃場では、年々土壌中のPythium属菌が蓄積されるため、耐病性品種の効果が十分に発揮されないケースが報告されています。
ここからが実際の栽培で差がつくところです。しみ腐病は土壌水分との関連が非常に強い病害であり、排水不良の圃場では耐病性品種を導入しても被害が軽減されにくい傾向があります。品種の耐病性は、適切な排水管理があってこそ効果を発揮するという点を押さえておくことが重要です。
高温条件もリスク要因の一つです。地温が高い時期(特に30度以上が続く期間)はPythium属菌の活動が活発になり、耐病性品種であっても発病リスクが上昇します。夏まき作型では、播種時期の微調整によって高温ピークを避ける工夫が求められます。
また、しみ腐病耐性品種に過度に依存すると、他の土壌病害(黒葉枯病、根腐病など)への注意が薄れがちです。圃場全体の病害管理を総合的に見直す視点が欠かせません。
防除のポイント
しみ腐病の防除は、耐病性品種の利用を軸に、耕種的防除・化学的防除を組み合わせて行います。
耕種的防除として最も基本的なのは排水対策です。しみ腐病菌は水を介して感染するため、圃場の排水性を高めることが発病リスクの低減に直結します。暗渠排水の整備、明渠の設置、高畝栽培の採用が有効な手段です。特に粘土質の土壌では、排水性の改善が病害対策の第一歩となります。
輪作も重要な防除手段です。ニンジンの連作を避け、イネ科作物やマメ科作物と3〜4年以上の間隔でローテーションを組むことで、土壌中のPythium属菌密度を低下させることが期待できます。ただし、ダイコンやゴボウなど同じ根菜類との輪作は、共通の病原菌を持つため効果が限定的です。
土壌の物理性改善も見逃せないポイントです。堆肥の施用や深耕による土壌の団粒構造の改善は、排水性と通気性を高め、Pythium属菌が好む過湿条件を緩和します。
化学的防除については、ニンジンに登録のある土壌消毒剤や殺菌剤を適期に使用することが効果的です。播種前の土壌消毒は特に連作圃場で効果が期待できます。生育期の薬剤散布は予防的な使用が基本であり、発病後の治療効果は限定的です。
※農薬の使用にあたっては、必ず最新の農薬登録情報を確認し、ラベルの記載内容に従ってください。
現場の声
ニンジン産地では、しみ腐病対策に関してさまざまな実践事例が蓄積されています。
夏まき秋冬どり作型でしみ腐病の被害が常態化していた産地では、耐病性品種への切り替えと排水改善工事を併せて実施したところ、被害率が大幅に低下したという報告があります。品種の耐病性と圃場環境の改善が相乗効果を発揮した好例です。
連作圃場でしみ腐病が多発していたケースでは、輪作体系を見直し、水稲との2〜3年ローテーションに切り替えたことで発生が顕著に減ったという事例も報告されています。水稲の湛水期間がPythium属菌の生存に不利に働いたと考えられています。
産地によって事情が異なるので一概には言えませんが、耐病性品種の導入は「それだけで解決する万能策」ではなく、排水改善や輪作と組み合わせてこそ効果が最大化されるというのが、多くの産地で共有されている認識です。栽培現場では、耐病性品種の導入をきっかけに、圃場の排水条件を見直した結果、しみ腐病以外の土壌病害も減少したという副次的な効果を報告する生産者もいます。
まとめ
しみ腐病は、高温多湿条件で発生するニンジンの重要な土壌病害であり、収穫物の商品価値を著しく低下させます。耐病性品種の導入は有効な対策の一つですが、耐病性の程度は品種によって異なり、土壌条件や気象条件によって効果が変動する可能性があります。
品種選びにあたっては、しみ腐病耐性の表記を確認するとともに、圃場の排水条件や連作の有無も含めた総合的な判断が重要です。排水対策、輪作、土壌改善を組み合わせた総合的な防除体系を構築することで、しみ腐病の被害を軽減し、安定したニンジン生産につなげることができます。
タグ情報
基本情報
- タグ名
- しみ腐病耐性ニンジン
- 種別
- 病害耐性
使用状況
- 関連品種数
- 9品種
- 関連作物数
- 1作物
- 関連メーカー数
- 4社
関連品種(9品種)
ニンジン (9品種)
カトリーヌ
ヴィルモランみかど株式会社
在圃性に優れた夏まき専用種 ■特徴 耐病性 IR : 黒葉枯病, しみ腐病 特性-1 適作型:秋どり・冬どり 早晩性:中...
クリスティーヌ
ヴィルモランみかど株式会社
揃い性抜群、総太り型で高収量、黒葉枯病に強い ■特徴 耐病性 IR : 黒葉枯病, しみ腐病 特性-1 適作型:春どり・...
おいしい人参
丸種株式会社
煮て柔らかく、生で甘い。味が自慢の美味しいニンジン! 煮物からサラダまで和・洋を問わず幅広い料理に使え る美味しい五寸人...
べにゆたか
渡辺農事株式会社
低温肥大性高く、良く揃う晩抽早生品種 ■特性 ・根長16~18cm。低温肥大性、揃い性に優れ、尻詰りが良い晩抽早生品種。...
エルザ
ヴィルモランみかど株式会社
は種後110~120日で収穫できる初夏・夏まき専用中生種 ■特徴 耐病性 IR : 黒葉枯病, しみ腐病 ■品種の特性...
ベーターリッチ
株式会社サカタのタネ
サラダに、ジュースに、煮物においしいニンジン ■特性 晩抽性で耐暑性、耐寒性、低温肥大性および低温着色性に優れ、周年栽培...
ベーター536
株式会社サカタのタネ
夏まきで幅広く使える中早生ニンジン ■特性 根長約18cm、根径約5cm、形状はやや肩張りし尻詰まりがよいです。 播種後...
ローラ
ヴィルモランみかど株式会社
色づきがよく、晩抽性を備えた多収性品種 ■特徴 耐病性 IR : 黒葉枯病, しみ腐病 特性-1 適作型:春どり・秋どり...
紅映二号(こうえい)
丸種株式会社
早太りで秀品率が高く、収量性抜群!色・形・肉質の良い美味しいニンジン 夏~冬~春まきと播種期の幅が広い黒田系の総太り型五...