こまつなはなぜ増えたのか

こまつなはなぜ増えたのか

— 21年で出荷量1.9倍 ― 栄養と手軽さ、周年栽培が追い風

野菜全体の出荷量がゆるやかに減るなか、こまつなは伸び続けている数少ない葉物のひとつだ。出荷量は2002年から2023年で約1.9倍(+89%)。同じ葉物で用途の近いほうれんそうが2割以上減ったのとは対照的だ。なぜこまつなは増えたのか。栄養と手軽さ、耐暑性品種による周年栽培、そして産地と作付面積の拡大という4つの追い風を、農林水産省「野菜生産出荷統計」などのデータから読み解く。

ミノリス編集部

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データ編集部

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読了 約8分

出典:農林水産省「野菜生産出荷統計」/ 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」 データ取得:2026-06-18
この記事の結論(コピペ用1行)

こまつなの出荷量は2002→2023年で約1.9倍(+89%)。背景は、ほうれん草よりカルシウムが多くアクが少なく下茹で不要という「栄養×手軽さ」、耐暑性品種の普及による周年栽培、都市近郊の安定供給、そして作付面積の拡大(+94%)。

キー数値

出荷量(2023年) 10.9万t 2002年比 +89%(約1.9倍)
作付面積 +94% 伸びの主因(反収は横ばい)
カルシウム ほうれん草の約3.5倍 170mg vs 49mg(100gあたり)
主産地 茨城 23.6% 都市近郊・周年型(令和5年)

Key Findings

  • 出荷量は21年で約1.9倍。2002年5.8万t → 2023年10.9万t(+89%)。野菜のなかで数少ない成長品目。
  • 同じ葉物でも明暗。用途の近いほうれんそうは同期間で ▲29%。両者の差は縮まった。
  • 栄養と手軽さ。こまつなはカルシウムがほうれん草の約3.5倍(170mg vs 49mg)、鉄も多い。しかもアク(シュウ酸)が少なく下茹で不要。
  • 周年栽培で安定供給。耐暑性を高めた品種の普及で夏も含めた周年生産が可能に。茨城・埼玉・福岡・東京など都市近郊が主産地。
  • 伸びの主因は作付面積の拡大。面積+94%に対し反収は横ばい。技術革新ではなく産地・作り手が増えて量を作った。

1. こまつなは21年で約1.9倍に

まず出荷量から。こまつなの出荷量は 2002年の5.8万tから2023年は10.9万tへ、21年で 約1.9倍(+89%)に伸びた。野菜全体の出荷量がゆるやかに減るなかで、これは数少ない「右肩上がりの品目」だ。

なお、こまつなは2002年から品目別に単独で集計されるようになった(それ以前は他品目に内包)。そのため比較は2002年以降で見ている。

こまつなの出荷量の推移(2002〜2023年)。21年で約1.9倍(+89%)。
図1 こまつなの出荷量の推移(2002〜2023年)。21年で約1.9倍(+89%)。

出典:農林水産省 野菜生産出荷統計 長期累年
農林水産省 野菜生産出荷統計

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2. 同じ葉物でも、こまつなとほうれんそうで動きが分かれた

こまつなの伸びは、似た使い方をされる ほうれんそうと並べると、より鮮明になる。同じ21年で、こまつなは+89%、ほうれんそうは▲29%。出荷量はほうれんそうのほうがまだ多いが、その差は 2002年の約4倍から2023年には約1.6倍まで縮まった

どちらも「おひたし・炒め物・汁物」に使える緑の葉物だ。同じ用途のなかで、こまつなが選ばれる場面が増えてきた、という構図が見える。

こまつなとほうれんそうの出荷量推移(2002〜2023年)。差が縮まった。
図2 こまつなとほうれんそうの出荷量推移(2002〜2023年)。差が縮まった。

出典:農林水産省 野菜生産出荷統計 長期累年
農林水産省 野菜生産出荷統計

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3. なぜ増えたか① ― 栄養と手軽さ

こまつなが選ばれる理由のひとつが、栄養と調理のしやすさだ。文部科学省の食品成分表で比べると、こまつなは カルシウムがほうれん草の約3.5倍(170mg vs 49mg、100gあたり)。鉄も多い(2.8mg vs 2.0mg)。

そして見逃せないのが アク(シュウ酸)の少なさだ。ほうれん草はアク抜きの下茹でが必要だが、こまつなは 下茹で不要でそのまま炒め物やスムージーに使える。「健康にいい × 手間がかからない」という、いまの食卓のニーズに噛み合った。

こまつなとほうれんそうの栄養比較(100gあたり・生)。ほうれんそうを100とした指数。どちらも栄養豊富な葉物。
図3 こまつなとほうれんそうの栄養比較(100gあたり・生)。ほうれんそうを100とした指数。どちらも栄養豊富な葉物。

出典:文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)
文部科学省 食品成分データベース

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4. なぜ増えたか② ― 周年栽培と、産地・面積の拡大

需要に応えられたのは、「いつでも安定して供給できる」体制があったからだ。こまつなは生育が早く(タネまきから30〜40日ほど)、主産地は茨城(23.6%)・埼玉・福岡・東京など大消費地に近い都市近郊。旬は冬だが、周年で出荷量が大きく崩れない。量販店・業務用・カット野菜が扱いやすい品目だ。

この周年栽培を技術面で支えたのが 品種改良だ。近年は 耐暑性や抽苔(とう立ち)耐性を高めたF1品種(丸葉型や耐暑性中生のタイプなど)が各種苗会社から出ており、夏を含めた計画的な周年生産がしやすくなった。「いつでも安定供給」の土台には、こうした品種の進化がある。

そして出荷量の伸びを量的に作ったのは、作付面積の拡大だ。図4のとおり、面積は2002→2023年で +94%(約1.9倍)に対し、反収(単位面積あたりの収量)は ほぼ横ばい。つまり1株あたりがたくさん採れるようになったのではなく、作る産地・作り手が増えたことが伸びを支えた。これはブロッコリーやミニトマトと同じ「面積拡大型」の構造だ。

こまつなの作付面積と反収の推移(2002〜2023年)。面積は約1.9倍、反収は横ばい。
図4 こまつなの作付面積と反収の推移(2002〜2023年)。面積は約1.9倍、反収は横ばい。

出典:農林水産省 野菜生産出荷統計 長期累年
農林水産省 野菜生産出荷統計

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補足: 品種に関する記述は各種苗会社の品種情報にもとづく(こまつなの品種登録件数そのものの公的統計は本記事では扱っていない)。栄養値はどちらも豊富で、品目の優劣をつける趣旨ではない。

5. 生産者にとっての意味

こまつなの伸びは、「需要が伸びている品目を、安定供給できる体制で押さえた」成功例だ。生育が早く回転がよく、都市近郊で周年生産でき、量販店・業務用の「いつでも欲しい」に応えられる。需要が縮む品目を量で守るより、伸びる品目に体制ごと寄せていく ― その典型といえる。

一方で、面積拡大型の成長は 価格競争に陥りやすい側面もある。回転の速さを生かした計画出荷、機械化・省力化によるコスト低減、産地ブランド化など、「量を増やす」次の一手が、これからの差になる。何が・なぜ伸びているかをデータで捉えることが、その出発点になる。

全データを表示(こまつなの年次データ・栄養比較)

表1. こまつなの年次データ(全国)

作付面積 (ha) 出荷量 (t) 反収 (kg/10a)
2002 3,830 57,700 1,765
2003 3,870 57,000 1,731
2004 5,510 71,200 1,572
2005 5,590 72,300 1,572
2006 5,650 74,800 1,607
2007 5,730 77,500 1,618
2008 5,840 79,600 1,627
2009 5,930 82,600 1,649
2010 6,090 84,700 1,627
2011 6,180 87,700 1,655
2012 6,390 86,300 1,573
2013 6,450 91,100 1,631
2014 6,800 98,200 1,665
2015 6,860 100,200 1,682
2016 6,890 99,100 1,649
2017 7,010 99,200 1,599
2018 7,250 102,500 1,594
2019 7,300 102,100 1,574
2020 7,550 109,400 1,615
2021 7,420 106,900 1,608
2022 7,390 107,900 1,625
2023 7,440 108,900 1,625

表2. こまつな・ほうれんそうの栄養比較(100gあたり・生)

成分 こまつな ほうれんそう
カルシウム 170mg 49mg
2.8mg 2.0mg
β-カロテン 3,100μg 4,200μg
アク(シュウ酸) 少ない(下茹で不要) 多い(アク抜き必要)

※こまつなは2002年から品目別に単独集計(それ以前は他品目に内包)。栄養値は文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」より。どちらも栄養豊富な葉物で、優劣をつける趣旨ではありません。

6. 出典・データ・引用について

引用テンプレート(コピーしてご利用ください)

短文用
出典:農林水産省 野菜生産出荷統計 / 文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)
※ミノリス調べ(https://minorisu.com/p/crop-004-komatsuna-growth)
記事内引用用
こまつなの出荷量は2002→2023年で約1.9倍(+89%)。同じ葉物のほうれんそうが▲29%と対照的。こまつなはカルシウムがほうれん草の約3.5倍でアクが少なく下茹で不要。耐暑性品種による周年栽培と、作付面積の拡大(+94%)が伸びを支えた(農林水産省「野菜生産出荷統計」ほか)。詳細はミノリスのまとめページを参照。
https://minorisu.com/p/crop-004-komatsuna-growth
グラフ画像引用用(クレジット表記)
グラフ出典:ミノリス「こまつなはなぜ増えたのか」(https://minorisu.com/p/crop-004-komatsuna-growth)
原典:農林水産省 野菜生産出荷統計 / 文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)

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データ・ライセンス

本記事の原データは農林水産省「野菜生産出荷統計」および文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」に基づく。各省ウェブサイトの利用規約に従い、出典を明記すれば利用できる。

本記事のグラフ・解説テキストは CC BY 4.0 でライセンスされており、出典(ミノリス + 上記原典URL)を明記すれば商用利用を含め自由に引用・転載できる。

データ取得日:2026年6月18日 / 最終更新:2026年6月 / 次回更新予定:2027年(農林水産省の年次更新に合わせる)