食卓の変化で出荷量が減った野菜TOP10

食卓の変化で出荷量が減った野菜TOP10 — だいこんも半減

— 1973〜2023年・ピーク比 ▲50%以上に減った品目たち

野菜46品目の長期累年データを見ると、半数以上がピーク(最盛期)を過ぎて出荷量を減らしている。とくに上位は ▲50%〜▲80% の大幅減で、和食材・伝統野菜が並ぶ。「日本の代表野菜」だいこんと、かぶもそろってピーク比で半減していた。ただしこれは品目や産地の問題というより、私たちの食卓・消費が変わってきた結果だ。何がどう変わったのかを、農林水産省「野菜生産出荷統計」長期累年データから読み解く。

ミノリス編集部

ミノリス編集部

データ編集部

公開

読了 約9分

出典:農林水産省 大臣官房統計部「野菜生産出荷統計」長期累年 データ取得:2026-06-15
この記事の結論(コピペ用1行)

野菜46品目を50年で見ると半数以上が出荷量を減らしている。減少率TOP10はピーク比▲50%超で、さやえんどう▲79.5%、だいこん・かぶも半減。背景は品目の問題ではなく、調理の時短化や食の洋風化といった食卓・消費の変化。

キー数値

減少率1位 さやえんどう ▲79.5% 1979年ピーク比
だいこん ▲50.5% 193万t→96万t
かぶ ▲50.4% だいこんとほぼ同率
TOP10すべて ▲50%超 ピーク比「半減以上」

Key Findings

  • 減少率TOP3は ▲68% 超。さやえんどう▲79.5%、加工用トマト▲69.3%、さやいんげん▲68.1%。
  • 「日本のシンボル野菜」だいこんが半減。1982年ピーク193万t → 2023年96万tで ▲50.5%。
  • かぶも半減(▲50.4%)。1987年ピーク16.6万t → 2023年8.2万t。だいこんとほぼ同じ減少率で、根菜の家庭消費が縮小している。
  • TOP10の多くが和食材・伝統野菜。さやえんどう・さやいんげん・そらまめ・さといも・ふき・ごぼう・しし唐 — 「家庭で剥く・煮る」手間のかかる野菜が並ぶ。
  • 変化はゆっくり進んだ。多くがピーク年から30〜40年かけて減ってきており、急落ではない。だから「気付かれにくい構造変化」になっている。

1. ピーク比で出荷量が減った野菜 TOP10

農林水産省「野菜生産出荷統計」長期累年(1973〜2023年・51年)から、主要野菜46品目について「過去最大の出荷量(ピーク値)と2023年の値を比較し、減少率を計算した。データ期間が20年以上ある品目に絞ったランキングが以下の通りだ。

ピーク比減少率 TOP10。▲70%以上はオレンジ、▲60%台は濃いオレンジで強調。
図1 ピーク比減少率 TOP10。▲70%以上はオレンジ、▲60%台は濃いオレンジで強調。

出典:農林水産省 野菜生産出荷統計 長期累年
e-Stat 長期累年

高解像度PNGをダウンロード
読み方のポイント: 半減ライン(▲50%)を超えると、その品目は 「最盛期の半分以下」 まで減ったことになる。TOP10すべてがこのラインを超えており、上位3品目は ▲69%超 — つまり「最盛期の3分の1以下」になった。

2. 上位5品目の長期推移

上位5品目(カリフラワー・さやえんどう・さといも・ごぼう・だいこん)の50年推移を、各品目の ピーク年を100 として正規化すると、共通した傾向が見える。5品目すべてが半減ラインを大きく下回っているのだ。

とくに カリフラワーは1988年から1989年にかけて急落している。これは後で見るが、ブロッコリーへの置き換わりが進んだ年だ。他の品目は急落ではなく緩やかな右肩下がりで、「気付かないうちに半分以下まで減っていた」というパターンが多い。

上位5品目の長期推移(ピーク年=100で正規化)。点線が半減ライン。
図2 上位5品目の長期推移(ピーク年=100で正規化)。点線が半減ライン。

出典:農林水産省 野菜生産出荷統計 長期累年
e-Stat 長期累年

高解像度PNGをダウンロード

3. だいこんが半減した50年 — 食卓の変化を映す品目

TOP10の中でも象徴的なのが だいこんの半減だ。1982年に 193万8千トンあった国内出荷量は、2023年には 95万9千トンと、ちょうど半分になっている。だいこんは日本の家庭・食卓を代表する野菜であり、「全国で1日1本」食べていた時代から、2日に1本、さらにそれ以下へと消費量が落ちてきた。

背景には複数の要因が重なる:①世帯人数の縮小(4人家族→単身世帯化)で1本まるごとの大根が買いにくくなった、②煮物の頻度の低下で「おでん・ふろふき・煮しめ」が食卓に並ぶ機会が減った、③漬物の家庭内製造の減少(たくあん・浅漬けは買うものに)、④外食・中食でだいこんが主役の料理が少ない(揚げ物・ハンバーガー・パスタの時代)。

だいこんは「指定野菜」14品目にも入っており、政策的にも生産安定が支援されてきた品目だ。それでも半減した事実は、日本人の食生活の構造変化の大きさを物語っている。

4. なぜ出荷量が減ったのか — 食卓を変えた5つの要因

4-1. 家庭調理の時間短縮志向

TOP10の多くは 「家庭で剥く・煮る・下処理が必要」 な野菜だ。さやえんどう・さやいんげん・そらまめは 「莢から取り出す」手間が、さといも・ごぼうは 皮むきが必要。共働き世帯増加・調理時間短縮ニーズの中で、これらの手間が消費頻度を押し下げた。

4-2. 食の洋風化・多国籍化

TOP10品目の多くは 「和食でよく使われる」野菜だ。ふき・しし唐・さやえんどう・ごぼう — 洋食・中華・エスニックでは使い道が限られる。食の洋風化・多国籍化が進むなか、和食中心の素材は需要が縮みやすい。

4-3. 季節感の薄れと通年消費品目への集中

さやえんどう・そらまめ・ふきは 明確な「春野菜」だ。スーパーで通年同じ品揃えが並ぶ現代では、季節限定の野菜が手に取られる頻度は下がる。一方、年中安定供給できるブロッコリー・キャベツ・たまねぎが「定番」のポジションを取った。

4-4. 輸入の増加

加工用トマト(▲69.3%)の大幅減は 原料調達の海外シフトを反映している。中国・米国・トルコからのペースト・ピューレ輸入が主流になり、国内契約栽培が縮んだ。ごぼうも一部が中国産輸入に置き換わり、国内出荷を押し下げている。

4-5. 業務用シフトとの相性

中食・外食市場は拡大している。しかし業務用は 「扱いやすさ・色味・歩留まり」が決定要素になるため、繊細な葉物(ふき・しゅんぎく・みつば)や下処理が必要な豆類は採用されにくい。業務用シフトの恩恵を受けたのはミニトマト・ブロッコリー・レタス・キャベツなどで、TOP10品目はその波に乗りにくかった。

5. 生産者・食文化への示唆

出荷量が減った品目のリストは、生産者にとっては 「経営判断の地図」として読める。自分の主力品目がTOP10に入っているなら、付加価値づくり(有機・地理的表示・契約栽培・ブランド化)に舵を切る選択が現実的になる。需要が縮む品目を量で勝負し続けるより、単価で成立する形を探る余地がある。

実際、伝統野菜・地方野菜はいま文化遺産としての価値が見直されている。京野菜・加賀野菜・なにわ野菜などの伝統野菜ブランドや、各地の特産品復興プロジェクトは、まさにこの変化への前向きな対応だ。「希少」「地域」「文化」を価値に転換できれば、量は出なくても単価で成立する経営モデルになりうる。

食文化の観点では、出荷量の減少は長い目で見れば 「日本の家庭料理のレパートリーが細る」ことにもつながりうる。ふきの煮物・さやえんどうの卵とじ・さといもの煮しめ — 和食の「副菜」として親しまれてきた料理が、食卓から少しずつ遠ざかっていくかもしれない。何をどう残していくかを、生産者・流通・消費者・行政が一緒に考える時期に来ている。

TOP10 全データを表示(ピーク年・ピーク値・2023年・減少率)
順位 品目 ピーク年 ピーク値 (t) 2023年 (t) 減少率
1 さやえんどう 1979 53,700 11,000 ▲79.5%
2 加工用トマト 1989 84,400 25,900 ▲69.3%
3 さやいんげん 1986 64,600 20,600 ▲68.1%
4 さといも 1980 270,500 86,300 ▲68.1%
5 ふき 2002 17,000 5,960 ▲64.9%
6 しし唐 1990 11,500 4,580 ▲60.2%
7 そらまめ 2004 16,700 7,970 ▲52.3%
8 ごぼう 1989 219,000 104,700 ▲52.2%
9 だいこん 1982 1,938,000 959,300 ▲50.5%
10 かぶ 1987 166,000 82,400 ▲50.4%

※ データ期間20年以上の品目に限定。統計細目の「その他さといも」(▲99.8%)と、1989年に統計分離が起こったカリフラワーは除外。

6. 出典・データ・引用について

引用テンプレート(コピーしてご利用ください)

短文用
出典:農林水産省 野菜生産出荷統計 長期累年(令和5年確報)
※ミノリス調べ(https://minorisu.com/p/crop-003-vanishing-vegetables)
記事内引用用
野菜46品目を1973〜2023年の50年で見ると、半数以上がピークを過ぎて出荷量を減らしている。減少率TOP10はピーク比 ▲50%〜▲79.5%で、さやえんどう・さといも・ごぼう・だいこんなど和食材・伝統野菜が並ぶ。背景は調理の時短化や食の洋風化など食卓・消費の変化(農林水産省「野菜生産出荷統計」長期累年)。詳細はミノリスのまとめページを参照。
https://minorisu.com/p/crop-003-vanishing-vegetables
グラフ画像引用用(クレジット表記)
グラフ出典:ミノリス「食卓の変化で出荷量が減った野菜TOP10」(https://minorisu.com/p/crop-003-vanishing-vegetables)
原典:農林水産省 野菜生産出荷統計 長期累年 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tclass=000001014186&cycle=0&layout=datalist

関連記事

作物・品種を比較・検索する

ミノリスは全国の種苗会社・公的機関の登録品種をデータベース化。作物・特性・耐病性で絞り込み検索が可能です。

登録品種を検索する

データ・ライセンス

本記事の原データは農林水産省「野菜生産出荷統計 長期累年」に基づく。同省ウェブサイトの利用規約は公共データ利用規約(PDL 1.0)に準拠し、出典を明記すれば改変・再配布が可能。

本記事のグラフ・解説テキストは CC BY 4.0 でライセンスされており、出典(ミノリス + 上記原典URL)を明記すれば商用利用を含め自由に引用・転載できる。

データ取得日:2026年6月15日 / 最終更新:2026年6月(予定) / 次回更新予定:2027年3月(農林水産省の年次更新タイミングに合わせる)