採りっきり栽培向きアスパラガスとは?短期栽培の仕組みと品種選び
タグ名: 採りっきり栽培向きアスパラガス
栽培環境・条件 • 8品種で使用中
採りっきり栽培向きについて
採りっきり栽培とは
採りっきり栽培とは、アスパラガスを1〜2年の短期間で集中的に収穫し、その後株を更新する(植え替える)新しい栽培方法です。従来のアスパラガス栽培では、定植後2〜3年の株養成期間を経て本格収穫に入り、その後10年以上にわたって同じ株から収穫を続けるのが一般的でした。採りっきり栽培はこの常識を覆し、短サイクルでの栽培と収穫を行う手法です。
「採りっきり」の名前のとおり、萌芽した若茎をすべて収穫し、立茎(親茎を残して株を養成する工程)を行わないのが基本的な考え方です。従来栽培では収穫期間中に一定の茎を残して立茎し、光合成によって翌年以降の株のエネルギーを蓄えますが、採りっきり栽培ではこの立茎工程を省略します。
この栽培法は、明治大学の研究グループを中心に2010年代に提唱・実証され、その後各地の農業試験場や産地で試験・導入が進んでいます。従来のアスパラガス栽培の課題であった「収穫までの待ち時間の長さ」と「長期栽培に伴う病害蓄積」への解決策として注目されています。
採りっきり栽培のメリット
採りっきり栽培の最大の魅力は、定植から収穫までの期間を大幅に短縮できることです。従来栽培では定植後2〜3年は収穫できませんが、採りっきり栽培では定植翌年(早ければ定植年の秋)から収穫を開始できる体系もあります。新規参入者やアスパラガスを新たに導入する経営体にとって、投資回収が早い点は大きなメリットです。
まず押さえておきたいのが、立茎管理が不要になるという省力化効果です。従来のアスパラガス栽培では、立茎後の親茎の管理(病害虫防除・倒伏防止のネット張り・枯れ茎の撤去)が大きな労力を占めます。採りっきり栽培ではこの工程が丸ごとなくなるため、管理作業が大幅に簡素化されます。
土壌病害のリスク軽減も重要なメリットです。アスパラガスの長期栽培では、茎枯病やフザリウム属菌による株枯れ症状が収量低下の主因となりますが、採りっきり栽培では1〜2年で株を更新するため、病原菌の蓄積が進む前に栽培を終了できます。
経営の柔軟性という観点では、他品目との輪作体系に組み込みやすいこともメリットです。従来は10年以上同じ圃場を専有するアスパラガスは、輪作に組み込みにくい作物でしたが、採りっきり栽培では短期間で圃場を回転させられるため、水稲や他の畑作物との組み合わせが可能になります。
採りっきり栽培に向く品種の特徴
採りっきり栽培に適した品種には、いくつかの共通する特性があります。
最も重要なのは、定植後の初期生育が旺盛で、短期間で根株を充実させる能力です。採りっきり栽培では株養成期間を短縮するため、定植1年目に根株を十分に発達させ、2年目に集中的に収穫する体系が基本です。初期の根株形成力が弱い品種は、この体系に適しません。
萌芽力が強い品種も重要です。採りっきり栽培では立茎せずにすべての若茎を収穫するため、萌芽本数が多い品種のほうが収量を確保しやすくなります。ウインデルやギガデルなど、萌芽力の強い品種が採りっきり栽培向きとして評価されています。
ここからが実際の栽培で差がつくところです。採りっきり栽培向き品種の中にも、太茎タイプと多茎タイプがあります。太茎タイプは1本あたりの単価が高くなりますが本数は少なめ、多茎タイプは本数が多いですがやや細茎になる傾向があります。販売先の要望(市場出荷なら太茎重視、直売所なら本数・総重量重視)に合わせて品種を選ぶことが大切です。
紫アスパラガスの品種でも採りっきり栽培に対応できるものがあります。満味紫やRG紫色舞ファースト、RG紫色舞ルーチェなどは、紫色の付加価値と採りっきり栽培の省力性を組み合わせた経営モデルが可能です。
栽培のポイント
採りっきり栽培の栽培管理は、従来栽培とは異なるアプローチが必要です。
苗の準備が最初のポイントです。採りっきり栽培では、大苗(ポット育苗で十分に根株を発達させた苗)を使用することが成功の鍵です。セルトレイの小苗から始めると初期生育が遅れ、採りっきり栽培のメリットが薄れます。128穴セルトレイよりも大きいポット(9cm以上)で十分に育苗した大苗の使用が推奨されています。
定植は、深植えにならないよう注意します。覆土は5cm程度を目安とし、植え付け後に十分な灌水を行って活着を促します。栽植密度は、従来栽培よりもやや密植にする事例が多く、畝間1.2〜1.5m、株間30〜40cm程度が一つの目安です。
定植1年目は株の充実に専念し、原則として収穫しません(大苗を使い、秋に少量収穫する体系もある)。この年の管理が翌年の収量を左右するため、施肥と灌水を適切に行い、根株の充実を図ります。
2年目は、萌芽開始から全量を収穫します。従来栽培のように立茎のための茎を残す必要がないため、出てきた若茎をすべて収穫し続けます。収穫の打ち切りは、茎が極端に細くなった時点が目安です。
収穫終了後は、株を抜き取り圃場を更地に戻します。残渣の除去と土壌消毒を行い、次作に備えます。輪作体系に組み込む場合は、後作との間隔を考慮した計画が必要です。
品種選びのコツ
採りっきり栽培向きアスパラガス品種を選ぶ際には、以下の観点が重要です。
- 初期根株形成力: 定植1年目に根株を十分に発達させる能力が必須。種苗メーカーの採りっきり栽培での試験データがあれば確認する
- 萌芽力: 萌芽本数の多さが収量に直結する。立茎しない分、萌芽のスタミナが重要
- 茎の太さとそろい: 太茎でそろいが良い品種は上物率が高い。ヨクデルやギガデルは太茎品種として知られる
- 耐病性: 短期栽培とはいえ、茎枯病への耐性は栽培の安定性に影響する
- 苗の入手性: 採りっきり栽培は大苗の使用が前提。品種によっては大苗の流通量が限られる場合がある
意外と知られていないのですが、採りっきり栽培は必ずしも1年で終わりにする必要はありません。株の状態が良ければ2年間収穫を続ける体系もあり、品種の持久力によって栽培年数を調整する柔軟な運用が可能です。クリスマス特急や太宝早生のように早生性を併せ持つ品種は、採りっきり栽培で早い時期から収穫を開始し、収益性を高める戦略が取れます。
市場動向とこれから
採りっきり栽培は、アスパラガス栽培の新しい選択肢として国内で注目を集めています。各地の農業試験場での試験結果が蓄積されており、実際に産地レベルで導入を始めた地域も出てきています。
特に注目されているのが、新規就農者や転作農家によるアスパラガスへの参入障壁の低下です。従来栽培では定植から3年間は無収入期間となるため、資金面のハードルが高い品目でしたが、採りっきり栽培では投資回収までの期間が短縮されるため、参入しやすくなっています。
産地によって事情が異なるので一概には言えませんが、水稲からの転作品目として採りっきりアスパラガスを導入する事例も出始めています。水稲との輪作で連作障害を回避しつつ、アスパラガスの高収益性を取り込む経営モデルです。
今後の課題としては、採りっきり栽培に特化した品種の開発がさらに進むことが期待されています。現時点では従来品種の中から採りっきり栽培に適したものを選んでいる状況ですが、今後は採りっきり栽培専用品種の育成も進む可能性があります。また、苗のコストが栽培サイクルごとに発生するため、苗の低コスト生産技術の確立も重要な課題です。
まとめ
採りっきり栽培向きアスパラガスは、1〜2年の短期サイクルで栽培・収穫する新しい栽培体系に適した品種群です。立茎管理の省略による省力化、土壌病害リスクの軽減、投資回収期間の短縮が主なメリットであり、新規参入者や輪作体系への組み込みに適しています。品種選びでは、初期根株形成力・萌芽力・茎の太さとそろいを重視し、販売先と経営計画に合った品種を選定することが重要です。採りっきり栽培はまだ発展途上の技術であり、各地の試験データや先進事例を参考にしながら、自分の経営に合った導入方法を検討することが大切です。
タグ情報
基本情報
- タグ名
- 採りっきり栽培向きアスパラガス
- 種別
- 栽培環境・条件
使用状況
- 関連品種数
- 8品種
- 関連作物数
- 1作物
- 関連メーカー数
- 1社
関連品種(8品種)
アスパラガス (8品種)
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